今週の儲かる繁盛店の視点 第151話:「人を増やして人時生産性を上げるチェーンと下げるチェーンの違い」
4月も終わりGW真っ只中ですが、チェーン各店ではこの時期になると、売場のあちこちで、糊の効いた制服をまとった新入社員が一生懸命品出しやレジで頑張ってる姿を見受けます。
「先生、今年は、なんとか新入社員20数名採用しました。」と最近プロジェクトをキックオフしたばかりのチェーンの社長の一言です
—–がんばりましたね これからが正念場ですね
先日も、そのチェーンに立ち寄るとジュージューとおいしそうな音を出して焼肉の試食販売をやっていました。
慣れない手つき試食販売をやってる新入社員の男性
「いらっしゃいませ~ お味の紹介です」と頑張る彼のまわりに、すこし引き気味のお客様の姿が見えます。
次の瞬間「ガッシャーン!!」と大きな音とともにホットプレートが崩れ落ち、焼肉がセラミックタイルの上に散らばるアクシデント発生。
——だいじょうぶかい? と近寄って 声をかけると
「すみません、すみません」と、パニック状態の新人君。
すぐさま、厨房にいたパートナーさんが出てきて、散らばった焼肉を拾い集め、ダスターで油だらけの床を拭いていました。
小売業の登竜門として、このような試食販売は確かに大切なのかもしれません。私も入社当時は店舗配属されたときにやった経験があります。
よくよく思い起こせば、このチェーンはふだんは、自社社員による人付きの宣伝販売はほとんどやっていません。
つまり、新人用のメニューとして売場に慣れるためにやっていただけで、実売のためにやっていたわけではないのです。
断っておきますが、慣れるための作業が不要といっているわけではありません。
しかし、そもそも、通常作業としてやっていないことをOJTとして教えていくことに、無理があるのでこういったアクシデントがおこるといえます。
幸いにもけがや火傷はなかったのですが、仮に試食販売の時間が設定されていて、その運営方法が書かれたマニュアルがあれば、そのままできれば明日からでも即戦力になるわけです。
さらに、店の全部門の作業指示書があれば、ムダな作業を追加するようなことはぜず、本当に人手が不足している部門にいってもらい、その業務を早く覚えてもらうことが店にとっても、本人にとっても、重要であることは明白です。
その昔は、ある程度の売り上げがあって、店舗にも人が大勢いて、誰かしらが抜けた仕事をフォローしてやって回していましたが、これからは 売上が伸びない中で、大勢の人を抱えるわけにはいきません。
儲かるための店舗オペレーションの基本は、無駄のない作業指示書にもとづいた 作業をしてもらうことが前提となります。
新入社員が、旧態依然の口頭作業の指示に慣れてからでは手遅れで、慣れる前からムダの少ない作業指示書で動くことを体で憶えてもらうことが大事だからであります。
しかし、今の店長や部門のチーフは、大勢の人がいた時代に口頭指示で育てられた人ですので、作業指示書の作り方を知りません。
一方で、人時を使いこなし、作業指示書を作ることができる店長やチーフは、より少ない人時でどうやって利益を増やしていくかという動きが自然にできていきます。
6月が過ぎますと、新規採用の余波で徐々に人時が上がってきます。
これを放置すれば、人件費は高止まりし、取り組みされないチェーンと実行しているチェーンの格差は明確に現れます。
繰り返し申し上げますが、5月~6月はコストアップの時期です。人件費も新入社員を投入した分上昇しますので人時目標を設定し、ムダを無くし生まれたコストを価値あることに変換することが必要です。
この時期に経営がやるべきことは、1店舗あたりの人時売上を把握しそれを改善するための仕組みを予め用意しておき、実践していくことです。
時間とお金をかけて採用した新入社員を活かすのは経営の使命です。会社が一つの方向をむき、すべての店が作業指示書にもとづいて、一人ひとりの作業を尊重してはじめて、貴社で真剣に働いていこうと、新入社員に自覚してもらう大事な時期であるといえます。
さあ、貴社では 一人ひとりを尊重する 経営の判断ツールはもう備わっておられますでしょうか?
今日も最後までお読みいただきありがとうございました。