今週の儲かる繁盛店の視点 第166話:「自力で生産性を上げる企業とそうならない企業の違い」
「先生 店舗のムダ業務の洗いだしなのですが あまり見つけることができないのです 何かいい方法はありますか」 先日ご相談にお見えになった経営者の一言です。
―――どういうふうにやられましたか?
「アンケートです」
―――それは一番難しい方法を選んでしまいましたね。
アンケートでは、こちらの期待する答えを引きだすことはできません。
確かに、忙しい作業の合間に、短時間で書いて提出してもらえば集めやすい、というメリットはあっても、ありきたりで無難な回答しかでてきません。
ムダというよりもここで、不平、不満ばかり出されては枝葉末節です。ひとつひとつ実情を確認できるようにしていくためにも、直接ヒアリングする方法をおすすめしています。
そうは言っても、店舗の社員やパートナーさんにとってみれば、「こんなこと今さら言ったところで・・・」とか「そんなことを言って上司と、気まずくなって・・・」という気持ちが先行してしまうものです。
初期段階から、そういう抵抗をできるだけ少なくし、「これは決まりきっているから、変えられないもの」という先入観や思いこみは外して考えてみてください。
と丁寧に説明してすすめていくことで、意見は集まりやすくなっていきます。
例えば、「月間のお買い得が500アイテムあって、毎月1日の価格変更作業が大変」とか「お客様の多い時間帯での荷受け、品出しは変更できないのか?」とか「商品の送り込みの見直しはできないのか?」といった問題はどこの店でも抱えています。
こういった問題を店舗ごとに吸い上げて、一つ一つ解決していくことが、人時生産性を向上させることに結びついていきます。
「変えることが難しい問題を吸い上げても、人もいないのにどうやればいいのか?」という声がきこえてきそうですが、
かつて、進めさせていただいた企業では、運営部長と店長が、ムダ改善の洗い出しを何日もかけ、出てきた意見の数は1店舗でたった3項目しか出てこないケースがありました。
その後、ヒアリングだけのための会を改めて設定し、質問の仕方や取りまとめを一緒に進めることで、出てきたムダ業務数は98項目にもなりました。
それらを人時に置き換えると、店舗の年間人件費の5%に相当ことが、のちに明らかとなったのです。
それが、店長を発奮させ、本部の協力体制を促し社内を変えるきっかけとなっていったです。
ムダ探しは、他社や他店の事例を真似ても、原因が異なるため上手くいきません。
それは、何もない白い画用紙に、自ら筆をもって絵を描いていくことに似ています。
鉛筆で下書きを終えたら、パレットの上に必要な絵の具をチューブから絞り出し、筆に水の含ませ、薄い色から使い、背景からぬるようにして、徐々に濃い色を使い中心人物を描いていくようにします。
そういった必要最低限の基本というべきことは教えてくれますが、そこから先は各自の集中力や洞察力を 一本の筆に集中して描いていくこととなります。
一回や二回やったところで到底上手く描けるようにはなりません。
ムダ探しも同じで、何回も繰り返しやって、修正をしていくことで目指すべき姿を鮮明に描いていくこととなります。
最近では、「業務改革部」といった生産性を上げていく専門の部隊を社内に置く企業が増えてきました。
そこでもムダ探しは重要な位置づけであることには変わりありません。
まずはその手前として、業務改革をプロジェクトで、全体を俯瞰し、どこから手をつけていくのかを設定することからはじめてみてください。
今日も最後までお読みいただきありがとうございました。