今週の儲かる繁盛店の視点 第205話:「チェーン経営で「減らして」儲ける仕組みとは」
「先生 先月は販促強化で、売上昨比クリアました、これからは、人時生産性をあげていきます。
とあるチェーンの社長からの一言です。
―――販促強化で人時売上は いくら、上がったのでしょうか?
「えっと・・・・」
―――販促強化と人時売上は、まったく関係ありませんから。とキッパリ申し上げました。
販促強化 生鮮強化、価格強化・・・・・○○強化というのは、便利な言葉で、聞こえはいいのですが、一時的に不足部分を補うものです。ずっと強化すれば、常態化し強化ではなくなる。ということです。
当然ですが、この○○強化策は、繰り返せば、採算が合わなくなってきます。ところが、一度売上が上がると、脳がそれを憶えていて、その効果を期待し、何度も繰り返すようになっていきます。
たとえば、週末チラシ1本だけであったのが、月曜が追加され、最近は日曜も臨時チラシを出すことがあって、その他にも、朝市 夕方の市、タイムセールと、続々と強化策の回数が増えているのにお気づきでしょうか?
問題なのは、強化策で手を掛け、利益は増えるようになったのかどうか?ということです。
利益に結びつかない業務を増やせば、増やすほど、コストは増え、利益を生みだす時間がなくなるからです。
先のチラシ販促強化によって、増える業務は、POPの付け替え、エンドプロモーションの積み替え、商品補充、レジの人時が余計にかかってきます。
「では、どこから 手を付ければいいのでしょうか?」という声が聞こえてきそうですが、
かかった人時コストは、必ず出ていく経費です。それに見合った売上がとれているかどうかは、週間人時売上で 点検するしくみがあればそれは変えることが出来ます。
ポイントとなるのは、チラシもPOP演出もなにもない日「標準体で商売する日」の数値に着目することです。
週の中で最も、必要最低限の作業しかない日の人時売上を基準に、他の曜日の目標を決めていくという手法です。
実際にやってみるとわかるのですが、必要最低限の作業しかない日の方が、チラシ訴求日より、人時生産性が高かった。という意に反することが出てきます。
それを解決していく為には、現状の人時を把握し、この人員ならば一日何ケースまで売場に並べることができるだろうか?生鮮ならば何パック作って陳列することができるだろうかということを まず、設定していくことになります。
入荷数量を基準に作業設定し、そこに人時をつけていくことで、ムダな人時コストは、発生させない仕組みにしていくのです。
この一連の流れを 作業指示書として作ることで、業務量を減らすことが出来ます。事実そういった手法をとられる 企業は年々と増えてきています。
売上は予定通りにコントロールできませんが、店舗業務の人時は、こうして売場の作業量から設定が出来ます。
断って置きますが、チラシがダメと言っているわけではありません。
新商品や品揃えが変わる時は、それは大きく威力を発揮する時もあるからです。
大事なことは、チラシは諸刃の剣であり、一方では役立つが、他方では、多大に人時がかかり続けるものであり、大きな損失をもたらす危険をはらんでいるということです。
ここでも、注意すべき点があります。もし、「価格を強化するチラシ」を訴求していくのであれば、当然ですが、販売管理費が低く抑えられていることが前提となります。
経営の給与も含め、販管費の高い自社が、競合よりも価格の低い価格を望むのであれば、その前に、自社の店舗で販管費を下げる取り組みをすることが重要で、その手順を飛ばし価格強化チラシを連発すれば、営業利益が出なくなる危険性があるからです。
チェーン経営では、商品勘定と人件費を柱とした販管費は、それぞれ別設定ではありません。
人件費が上がっている中、低価格チラシを打ちたいのであれば、その前に自社店舗を低コストで運営させなくては、利益構造は変えられないわけで、その本質部分に踏み込み、利益をうまない○○強化をやめることから着手することが必要と言えます。
小売に携わった方ならだれでもあると思うのですが、売上だけを目標にすると、過去に売れた時の経験を基準に考え、商品発注量が増え、在庫を抱え、人時が増えていきます。
なんでもこのように「増やすこと」は手軽にできます。しかし、こうして増やし続けてきた業務を「減らすこと」には、しくみがなければ出来ません。
価格競争の名のもとチラシ価格訴求をやればやるほど、店舗作業人時は増え続け、人時売上を落としていくことになります。チラシ販促強化といった小競り合いから脱却し、人時売上を上げることに集中することで、気づけば利益の桁が変わっていた。というのはよくあることです。
さあ、貴社では、まだ人時売上を落とす 強化策つづけますか?それとも、儲かるための戦略設定をしますか?
今日も最後までお読みいただきありがとうございました。