今週の儲かる繁盛店の視点 第211話:「人時生産性を上げられる企業と、上がらない企業の違い」
「先生、お恥ずかしながら、こうして経営計画を今まで、期中で考える機会をもっていませんでした」
目下 人時生産性改善 更新中の経営者の一言です。
経営計画書は、毎年作ってきたものの、年に一度も見直されない。とのこと。
――――このようなフォームの経営計画書ならば、作らない方がましですね。とキッパリと申し上げました。
理由は簡単で、どこかの研修会で学んできた、経営計画書フォームに、自社の考えを書き出し、自らの成長に蓋をすることに、何の意味があるのか?と一人の経営者として疑問を呈するからです。
収益拡大のための、ネタ探しを、店舗現場や各部門に行って「何か改善してほしいことはあるか?」と聞いたり、同業者や仕入れ先に「何か良い案はないか?」と聞いて回るのは、経営者として愚なることと、常日頃申しあげています。
まずは、経営者自身が知恵を絞り考えだしたフォームで、これで進めていくという経営計画書を作ったうえで、「これでやっていこうと考えるがどう思う?」という質問をしなくては、現場や各部門からは真剣な答えが返ってこないからです。
経営として、「ニーズがありそうな話」「売れそうな話」を聞いて「どこでも使っている計画書フォーム」を真似すれば、すぐに他社にマネされ、多忙な薄利戦略を繰り返すこととなります。
それを回避し、同業他社から抜きんでるためには、経営が主体となり、独自にやるコトを決めておくことが前提となります。
そこでは、限られた運転資金を有効活用するために、効果ないものは、即座に捨てることを決定することが必須となります。
断っておきますが、決して、経営計画書を作るなと、言っているわけではありません。
経営計画書は、経営が主体となり、止めるべき「低収益業務」と、新たに取り組むべき「収益アップ業務」の2つがそこに明解に記載されているかどうかということです。
スポーツでもビジネスでも、なんでもそうですが、プロ野球では、得点力のない選手は、戦力外通告をうけ、得点力のある選手が登録されチームの勝率を上げていきます。
商品でいえば、不動向商品は売場の棚から下げ、新たに売れる商品を陳列することで、売上を上げます。
店舗運営も同じで、利益を生まない業務は取りやめ、利益を生む業務に取り組むことで、人時生産性を上げていくことになります。
特に、止めるべき「利益を生まない業務」は、経営が主体となり決定し、その運用資金を蓄えておくことが必要となります。
大事なことは、どの施策も、一年でその取り組み効果は消滅するということです。ですから、毎年こういった企画を見直しながら、計画をたてていくことになります。
一年は12カ月ですが、その目標を達成するには、半年以上前にさかのぼって、執行計画をたてていくことが必要となります。
言い換えますと、年度目標は、1.5年の時間をかけ達成させていくことになります。
そのためには、年度の期中に、翌年の執行計画立案が必須となり、それをこの先5年先の目標から逆算して、考えておくことが必要となります。
「一年先も 見えないのに5年先などどうやって計画すればいいのか」という声が聞こえてきそうですが
――――大事なことなので繰り返しますが、そこには、経営が主体となり「止める業務」が書かれていることです。
上がるコストに、伸びない売上、という中で、収益を伸ばすには、業務量を減らす戦略をつくることです。
そして目標値と、その取り組み施策が5年先まで書かれていることが、経営の戦略を推進させるカギとなるからです。
先のチェーンも、これまで、経営計画書に、「店舗数○○○店を目指す」とか「年商○○○億の売上を目指す」といった、戯言しか記載されておらず、5年間その目標値には、一歩も近ずいていませんでした。
これでは、多忙のまま、人時生産性は上がらず、社員給料が見送られつづけるのも、無理はないと言えます。
少子高齢化が進む中、毎年の売上向上や、新規出店はこれまで以上に、厳しくなります。つまり、売上や規模の拡大だけに依存した利益改善は、成功する確率の低いものとなっています。
今回のオフサイトミーティングで、中長期計画における、毎年の人時生産性目標が記されました。
そして、それを実現させるため、経営主体となって「止める業務」がむこう5年間分、設定され、それに向けての準備が開始されました。
それを執行し、人時売上の向上策を司る業務改革部門も新設しました。今後は、業務改革部門が四半期ごとに、その目標の進捗確認をしていくことになります。
毎年行っていく、オフサイトミーティングは、自社で設定した目標に対し、収益企画の進捗の確認と、新たな業務の改廃を組み入れる重要なものであるといえます。
さあ、貴社では、来年度の人時生産性目標値、決まりましたでしょうか?
今日も最後までお読みいただきありがとうございました。