今週の儲かる繁盛店の視点 第214話:「環境変化に対応し成果を創り出す」
「先生、 活動報告をまとめてみました」
プロジェクトをスタートされ、パイロット店舗で成果が出始めた、チェーン経営者の一言です。
伊藤曰く
――――これではダメです。キッパリと申し上げました。
というのは、プロジェクト店舗の人時生産性の改善度が、予想より低かったからです。
要因は、現場から上がってきた非効率業務の改善要望に対して、「あれは無理」「これは難しい」「これはちょっと」と言った調子で、主管部門からNOと突き返され、非効率業務の改善が、滞っているためです。
「どうも、主管部門を動かすのは、むずかしくて・・・・」の運営部長のひとことに
――――だから、ダメなのです。と伊藤はさらに詰め寄ります。
理由は簡単で、店舗運営本部が、主管部門を納得させるメリットをしっかりと伝えることができていから、ということです。
ここで大事なことは、「主管部門が一番求めていることは何か?」ということを理解されているか、どうかです。
「それが分かれば、苦労ないですよ」という声が聞こえてきそうですが、
主管部門が、毎年頭を悩ますことは、予算の使い方とその配分です。
社長からは、昨年との違いとか、収益を伸ばすために、新たな取り組みをしなさい、と言った課題が次々とだされます。
そうはいったものの、どうしても前年踏襲型になり、そこから脱却できない。ということに対する解決策です。
主管部門長の人事異動を3~4年で行う、大手企業であれば、新たな取り組み案も次つぎ出てくるかもしれません。
しかし、人材不足に悩む中堅チェーンにとっては、ここ5年、10年と、主管部門の責任者は現状維持、という厳しい現実があります。
顧客の声を聞き、社長の意向を実現させる、主管部門をバックアップすることをできるのが、店舗運営部となります。
ところが、そういった「改革を主体的に動かせる」立場にあって、そのメリットを伝えることが、最も不得意なのが、店舗運営部の特性といえます。
その背景の一つとして、その経歴を見ればわかります。店舗運営部長となる人材は、地区部長や店長経験が長く、とにもかくにも言うことを聞いてくれる人が、大勢いる部門の長としてやってきた経歴があります。
そういった中では、店舗マネジメントや店舗実務と言ったことは学べますが、BtoBというような交渉業務や、そういう準備に関わる経験が少ないということです。
店舗運営本部は、こういったことをしなくても主管部や、大勢いる部下たちが、お膳立てをしてくれるため、初対面の人に対して、理論的に説得できる技術をもった人材が育たないのです。
一方、主管部門はといいますと、担当者と言えどもその相手は、取引先の社長さんであったりするわけで、特に交渉には入念な準備をして面談をすることは、日々の通常業務といえます。
運営部長や地区部長が、苦労してまとめ上げた「非効率業務改善」を主管部に要請をしても、主管部門の担当者からすぐさまダメ出しをされ、すごすごと意気消沈して席に戻ってくる。ということは、よくあることなのです。
実は、そういったねじれ現象を変えていくのは、そんなに難しい事ではありません。
企業として店舗の人時生産性の指標があり、それが改善されれば、主管部門の取り組み成果が評価され、全社の営業成績に直結します。
つまり、人時生産性という切り口で、パイロット店舗の成果報告をすることで、店舗と主管部門の利害関係は一致することとなります。
例えば、少ない人員でレジを運営する、セルフレジの導入であったり、朝の品出しを間に合わせる、深夜の納品の物流変更であったり、品切れを減らす自動発注の導入などは、すべて人時生産性を上げていくことで、説明がつきます。
そういった中で、主管部門が、投資店舗の設定するときは、売上利益の高い店に、目を向ける傾向が強いので、店舗運営本部として、より成果の得られやすい第二第三の候補店を提案することができるようにしておくことが、主管部門と合意をとりやすくするための部門姿勢と言えます。
主管部門にしてみれば、成果のでる店舗で、投資回収ができるかどうかが、ポイントです。店舗運営本部は、投資計画によって、さらにどのくらい人時が下がるかを見込み、その下がった部分から、その投資資金を捻出すことを提案する役割があるのです。
そのため成果を確実に出す、パイロット店舗の設定は重要で、それが、全店展開していくための、最重要ポイントとなるからです。
ここには、主管部門が陥りやすい落とし穴があります。それは成果の出やすい店舗ほど、一見して、目立たない店舗が多く、主管部門の目に留まることがないということです。
そのため、どうしても、新店舗や旗艦店舗といった話題性のある店ばかりに投資が設定される傾向となります。
もちろん、新店、旗艦店の投資も重要です。しかしながら、こうした店に大金をつぎ込んでも、その目的が違うため、人時生産性が上がるとは限らないからです。
そういう意味では、話題性を優先させることより、むしろ、これまで見落とされてきた小型店のメンテナンス投資と組み合わせた、業務改革で、人時生産性を上げていける店舗を優先させることで、全社の利益は変わってくることになります。
断って於きますが、話題づくりはやらなくていいと、いっているわけではありません。が、現実問題として、話題と人気だけでは食べていくことはできないのです。
人時生産性で儲ける足場を固め、そのあとで、話題のエッセンスをちりばめるやりかたであっても、十分間に合うということです。
大事なことは、店舗運営本部に対して、そういった導線を指し示すことで、利益のぶれない体制を見据えておくということです。
社内外の環境の変化に対応した、準備力は自ずと、鍛えられ磨かれることになります。
ところで、あなたのチェーンでは、こうした成果を創り出す仕組み、備えておられますでしょうか?
今日も最後までお読みいただきありがとうございました。