商業界オンライン8月24日に 弊社代表伊藤の記事が掲載されました
なぜか、研修では「収益にまつわる話」をどこもやらない
店長が人時生産性を上げる仕組みありますか?
2018年8月24日
最近、特に多いのが人時生産性に関する店長研修のご相談です。各社からはコンプライアンス、人事評価制度、財務諸表、コミュニケーション、カイゼン、マーケディング……、こういったテーマで研修ができないでしょうかという話をいただくのですが、「効果のない研修はやめた方がいいですよ」とハッキリ申し上げています。
店長としての実務教育といったことなのかもしれませんが、それを活用し、今後どうやって人時生産性を上げて、利益を増やしていくのかという「収益にまつわる話」は、不思議なことにどこもやらないのが実情です。
個人に依存したやり方では利益は上がらない
新人店長研修を受け、後は現場で時間をかけ、各自のやり方でやるというのが大半です。市場環境が大きく変化しているこの時期、チェーン企業でありながら、旧態依然とした個人に依存したやり方を続け、それで利益が上がる方が不思議といえます。
かつて、企業も社会も拡大していくことが前提のとき、時間をかけて社員を育てる、年功序列は力を発揮し続けました。若いときは低い賃金で我慢してもらい、年を重ねるごとに、高めていくということが理にかなっていました。企業は「時間」という自然増に効果をもたらす要素を使うことで、投資効果を手に入れてきたわけです。
人口減で、これまでの前提条件が崩れ去った
しかし、これから人口は毎年0.4%、50万人ずつ縮小することから、この前提条件が崩れ去っています。
人と数と売上げには、密接な関係があることは、経営者でなくとも分かります。何もしなければ売上げは、自動的に減少基調が続き、そして販売管理面では働き手が不足し、単価は上昇します。これまでのように若年層やパートタイマーを安い賃金で長時間使い続ける運営はできないということです。
今後、売上げは減り、コストが上昇する中で、利益を上げていくことが求められるわけですが、これを相変わらず、「チラシ強化で客数アップする」とか、「いい売場を作れば利益は後からついてくる」とか、「目立つ演出をすれば売れる」といったことを妄信した店舗運営を続けても、減収減益は回避できません
本部でできるコストカット額はわずか
だからといって、人件費を下げるために、本部目線でむやみにコストカットをしても本部でできるコストカット額はわずかです。コストの大半を抱える店舗での無駄を洗い出し、利益を確保する思考法を店長指導者に教育しなければ、時間の経過とともに、ますます目標からはかけ離れるばかりです。
人口が増えていたときは日替わりや価格強化の販促をかけることで、それなりに商品が売れましたが、今はこうした販促では動きがよくなく、それらの陳列場所を移動したり、値下げに手間がかかったりと、コストアップ要因になっています。
店舗で手間をかけ、チラシ準備やPOP、飾り付けをしても、商品が売れ残るため、その値下げ作業にさらに時間をかける。これではいくらやっても負のスパイラルから抜け出せません。そればかりか、効果の上がらない作業を繰り返すことに疑問を感じ、店長や副店長クラスが辞めることがあとを絶たないという事態を招いてしまいます。
こうした作業を店舗で繰り返している限り、生産性は下がる一方ですし、それに将来性を見いだすことができず、見切りをつけるのは、当然のことといえるでしょう。
販促寄りの研修やればやるほど士気も下がる
売場の演出、モチベーションアップ、接客、マーケティングといった販促寄りの研修をやればやるほど、人時生産性と士気が下がるのは、火を見るより明らかです。
今、店長に指導すべきことは、「売上げが減少する中で少ない人時で利益が上がることに集中できる仕組み」であることは言うまでもありません。
当然ですが、こうしたことは、その前に経営がこういう仕組みを作った上で、店長指導者である運営部長や地区部長への教育を行う機能が必要となります。
異業種の教育プログラムは使っては駄目
ところが、こうした業務改革のような研修をやるとなると、大抵、人事部がメーカーや製造業、航空会社出身の講師を呼んで研修をやったりするのですが、これまた全く効果がないのです。
理由は単純で、業種や専門分野が異なる畑違いの改善は、単なる「表面的なもの」しか分からないため、現場では全く使うことができないからです。
ですから、どんな理由があったとしても、製造業、自動車産業、メーカーといった異業種の教育プログラムは使ってはいけないのです。「本物のチェーンストア改革にのっとって教育を進めていく」という大原則を守らなくては、その研修費用を垂れ流しているのと同じことになります。
研修は自社の業務改革を題材にする
本物とは「自社の業務改革の題材で進める」ということです。業務改革のプロジェクトを進めていくと、必ずといっていいほど、幹部の参加メンバーの目の輝きが変わってきます。これはどこかで聞いた話だとか、机上論などが一切なく、全て実践そのものの話であり、これほど面白いことはないからです。
私は前職時代、今も成長し続けるグローバルチェーンの改革メンバーとともに昼夜議論し、実践してきたチェーン改革の思考方法やノウハウは、これまで他では聞くことのできない内容であっただけに、それは興奮したものです。
本物の研修で培われたことが原動力に
外部でマーケティングや販促手法、カイゼン手法を学ぶことを否定はしませんが、実践が伴わなければ、所詮「聞いた話」にすぎないということで、実行されることはありません。
「百の聞いた話より一つの実践」を運営部長が指導できれば、稼ぐ店長を育成できる最強の教育体制になるわけです。
例えば、「チラシの本数削減」や「棚卸回数削減」や「割引作業時間の削減」といったことを研修材料として、どう解決していくのか?
店舗の業務改革を通じ、本部と店舗の葛藤を解決し、サプライヤーや顧客の利益も考えた上で、こうしたことは初めて解決が可能となっていくのです。
そこで培われた思考力やプロセスが驚異的な実績を生み出す原動力となることは、指導を進める上で、この目で何百回も見てきました。
こうしたことが、実務に裏付けされた視点で、店舗と本部の間で活発に意見交換行われるようになると、社内の取り組み意識は大きく変わっていくことになります。
業務改革はどこから取り掛かるかが重要
業務改革とは経営戦略です。それはどこから取り掛かるかを決めること。つまり、自社の業務改革に合致した店長教育を行わなければ、実践と乖離していくわけです。ですから、もし昨年と同じ店長教育が自社で実施されているとしたら、それは本当に危ない兆候ということになります。
経営陣が描ける「作業指示書」と「業務改善」はある?
自社にとってのあるべき「作業指示書」や「業務改善」はどこから手をつけていくのか? その戦略を明確にしているチェーンでは、数千万、数億、数十億円といった利益の回復を次々と成し遂げています。
経営陣が描ける「作業指示書」や「業務改善」であれば、現場の再現性は上がり、全社の人時生産性向上に大きく力を発揮することになるからです。
さあ、貴社では売上げ・客数減、高コスト化の中で、人時生産性を上げる店長教育に着手していますでしょうか?
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