今週の儲かる繁盛店の視点 第251話:「新規取り組みで成功するチェーンと失敗するチェーンの違い」
「ポイントカードとEDLP(毎日がお買い得)はどっちがいいのでしょうか?」
とある チェーンの経営者からのご相談です。
――――貴社では実際に切り替え計画はあるのですか?とお聞きすると
「どことかのチェーンは、ポイントカードから、EDLPにしたら、売上が下がったので、また、戻した」とかそこだけをクローズアップした他社の話をしてこられます。
――――他社のやり方を真似ている間は、上手くいくことはありません。とキッパリ申し上げました。
理由は簡単で、他社の話をききかじって僅かな販促費を振り分けた程度で、うまくいくのであれば、全ての企業が、毎年、増収増益になって大成功しているはずです。
傍観者で動かず、他社の話ばかりを集めて批評するのは評論家や学者にまかせておけばいいわけで、商売は、やるか、やらないか?そのどちらか。ということです。
いずれにせよ「うちは 毎日安いんです」とか「何倍ポイントセール」を本気でやるのであれば、その前に販売管理コストを下げておくことが必須なのは言うまでもありません。
ところが、チラシでポイント何倍サービスをやるチェーンに限って、販促強化という安さだけ強調し、コストを下げるのは、二の次思い込んでいるということです。
こういうことを言いますと「コストカットの話ですかあ…」という声が聞こえてきそうですが、
確かに、人口が増えてきた時代であれば、ポイントアップや価格強化といった販促強化で、売上を大きくみせ、昨年並みの収益が確保できたといえます。
少子高齢化による人件費高騰や原材料費のアップの状況をみれば、このままいけば、赤信号が灯るのは、時間の問題であることはだれでもわかることです。
そもそも、人口増の背景のもと、坪数と商圏から出した売上予想に対して、配置してきた出店と店舗人員が適正なものなのか?今後、現状のままで、高い顧客満足度を得ることはできるのか?
そういった戦略なしに、店を増やせば、そのリスクは大きくなるばかりです。
また、現状の無料ポイント会員やEDLPにしても過去の実績は見ることは出来ても、そこからは、この先、将来 顧客が求めていることは知る術がありません。
そのためには、ローコストオペレーションに基づく有料会員化が必須で、それなしに手に入れる事はできないのは明らかだからです。
そういう意味で、現段階で分かることとなると、お客様が必要なものが欲しい時に、必要な分だけ買って安いEDLP型のほうが、顧客満足度は高くなるということす。さらに、客数が平準化されるため、人員配置が楽になりより優位に戦えることが分かります。
一方でポイントアップはあくまでも売り手側による、この期間はポイント何倍、あるいはこの商品はポイントプラス何点といった仕掛けです。
ある意味、日替わりチラシを入れた販促強化策と同じで、この日のための、商品手配、商品積み替え、販促物の取り付け・撤去、レジの増員等々、同時にコストがかかることになります。
売上が大きく変動することから、人手を増やしたり減らす仕組みが無ければ、人時生産性は低下します。
こうした売上変動に合わせた人員調整がいかに難しいかは、現場を知っておられる経営者であればご存知のことと思います。
実際、ポイントアップにかかる人時を調べてみれば一目瞭然です。そこで生産性が上がっていないことに気が付けば手の打ちようがあるものですが、そのままいけば、どうなるかは火を見るよりも明らかです。
各社のお考えがあるので、どうこう言うつもりもありませんが、実際に、ひっ迫してから見直すのでは、すでに手遅れという事です。
人口が増えていた時代、こうした売り手の都合で、商売はなりたちましたが、人口減の今、こういったことが放置されれば、数年後ビジネスが回らなくなるのは、不思議な事でもなんでもないということです。
批判を恐れず申し上げるとすれば、どこでもやっているポイントセールに頼り、売上を大きく見せようとする企業に収益改善の見込みはなし。と断言しています。
こうした横並び型の販促で競うことが、経営悪化を招いていることに気づかず、同じことを日々繰り返す経営者は、一体どこを目指しておられるのかこちらが心配になるくらいです。
一方で、他社の動きに気を取られることなく、自社で様々な取り組みにトライしているチェーンもあります。
実際に様々な取り組みに着手しているものの、今一歩のところで、効率改善結果がだせない。ギリギリまで頑張ってきているのに成果がとれない。というのは、ビジネス上ではよくある話です。
しかし、得られることも数多くあり、販促強化の名のもとに、あれもこれも、やることが、力の分散を加速化させていたことや、他社の上手くいった話探しに時間を割くより、社内のムダを再活用しお金を増やすことに投資したほうが実効が得られる。といたことが社内共有できると言う点です。
商売というのは、やってみて、上手くいく手法を見つけていくコトです。上手くいっている企業というのは、自社でやってみて上手くいかなかったことを数多く経験してきたからこそ、上手くいく方法への欲求が凝縮され、思いが高まり、それが見つかった時、想像以上の力を発揮できるものです。
今まで、やってこられた、努力の積み重ねが、一貫性をもって繋がることで、力になることに気づくことができるからともいえます。
稲穂が育つには、種から苗、実をつけるまで、土の中の熟成期間があるから、美味しいお米ができるわけで、光のない暗黒の土の中で熟する時間こそが大事で、その期間なくして成長はありません。
小売りチェーンビジネスも同じで、成果を出すためには、日の目をみない真っ暗闇のなかで、勝ち抜く考えを熟成させたか?という点では同じです。
どんなに素晴らしい種や水田が揃っていても、この土の中の熟成時期がなければ、病気や雨風に耐える生命力はつかないということです。
人口減というこれまでにない、この時期にいかに取り組みそれを熟成させたか?この過程を経なければ、顧客利益を見据え、人時生産性をあげていく商売など出来ないと言えます。
さあ、新たなる元号を迎え、貴社では、まだ、業界横並び話に一喜一憂する社員を増やし続けますか?それとも、改革の骨格を作り、金を生む行動の一歩に踏み出されますか?