今週の儲かる繁盛店の視点 第256話:「人時の結果を活かし 成功できるチェーンと出来ないチェーンの違い」
「先生、店長は売上を上げるのに人が足りないっていうのですが、単純に人を増やせば人時売上が上がらない。このジレンマをどうやって解決していけばいいのでしょうか?」
とあるチェーンの経営者からのご相談です。
――――人を増やして、売上を上げようとするのが、最大の失敗原因です。とハッキリ申し上げています。
チェーン経営をしていると、数店舗の中に、一店二店と圧倒的に効率が高く赤字店の分まで、利益を稼いでくれるありがたいお店が必ずあります。
企業成長を遅らせる原因は、その「高効率店を理想の収益モデル」と間違えていることです。
これまで作ってきた売上の高いお店は、駅や集客施設が近くにあったり、昔からの契約で家賃が安かったり、道路の張り付きがよかったり、といった、期待以上に売れていく条件が揃った店。いわゆるドル箱店舗です。
裏をかえせば、実力以上に売れることから、お客様をレジでお待たせしたり、品切れが多かったり、接客が悪かったりと、キャパシティーオーバーの店です。対顧客満足度の低く、必ずしもそれが企業の目指す理想の形になってないという事です。
批判を恐れず申し上げると、戦略的につくろうと思って作ったというより、偶然プラスの要素が重なり、まぐれ当たりの店ということです。
「うちの稼ぎ頭の店に、どこに問題があるのか?」という声が聞こえてきそうですが
――――では、他の苦戦している店にも同じ量の人と物を投入して、同じ結果を再現できますか?とお聴きすると
皆さん「うっ!」と言葉に詰ります。
そういう意味では、ドル箱店は、対顧客満足度が低くても大目に見られることが多く、厳しくとがめられることなく寛大に扱われてきました。
断っておきますが、その優遇策がダメといってるわけではありません。
冷静に考えてみればわかることですが、各店にバラつきがある状態を屋台骨の構造だとすると、ちょっとした揺れにも倒れかねないということです。
屋台骨とは、企業を支える働き手。また、組織などをささえる中心となるもので、一店舗ごとの支えがしっかりしていないと、「屋台骨がゆらぐ」状態になってしまうということです。
僅かなドル箱店が会社の屋台骨を支える構造は、その市場が縮小した時、全社利益の低下が深刻なものとなります。
例えば、ドル箱店と同じ雛型をベースに大型店とつくったものの、あとから競合が出店し、売上が上がらない店。であったり
かつて大型団地があって売れたドル箱店でも、団地の高齢化・空室化によって売れなくなってしまった。とか、
また「売場演出POPに手間暇をかけいい売場をつくれば儲かる」といった勘違い指導を続け人時売上が上がらない店。…等々
理由は様々ですが、今まで売れていた店が、売れなくなり会社の数値に影響あたえているのは紛れもない事実だからです。
もちろん出店時には、将来の伸び続けることを願って出店をしてきたわけです。
しかし、経営ですから、出店してみなくては、わからないのもまた事実です。既に起きていることへのリカバリー策の失敗は、なんとしても避けなくてはなりません。
そのためには、こうして出店させてきた一店舗一店舗の店の実態を正しく捉えていくことが必要になります。
そのKPI(利益達成のための個別目標)の中核をなすのが人時売上であり、それを変えていくツールが人時割レイバースケジュールで、ここがリカバリーの出発点となります。
一方で、数年前より店舗の実態を捉えることに、着手している企業では、パイロット店舗と波及店舗の改善が軌道に乗りはじめ、今では、本部の組織改革に着手しています。
店舗を変えていくためには、本部から変わらないと変えることはできないわけですが、本部を変えるためには、店舗の実態を掌握し、パイロット店舗での成果や結果が必須となります。
そこでは、年に一日二日程度短期の売上アップといった点の話ではなく、2年以上安定的に人時生産性を上げ続け、面として拡げていく話でなければ、会社を動かすことが出来ません。
現実的な話、その仕組みによる効果がでるかどうかは、最低でも、1年~2年続けなくては、前年比、2カ年比で連続成長できるようになっているかどうか、見極めることができません。
企業によって、考え方があるのでそれをどうこう言うつもりはありませんが、
伊藤はかねてより「人時生産性の改善には特効薬はありません」と申し上げているのは、人時生産性はちょっと聞きかじった程度で結果が出るほど甘くはないということです。
「継続は力なり」という言葉にあるように、続けることということは「結果を継続して出す」ことであり、それが経営の自信となり企業力に繋がるからです。
詳細は セミナーでお伝えしておりますが
なんでもそうですが、人が夢中になって取組む姿は輝いて見えるものです。
チェーン企業も同じで、会社のトップが一つの目標に夢中になって取り組む姿というのは、企業全体を輝かせますしとても魅力的です。
お手伝いさせていただいている社長にはそのようになって欲しいと考え、それを実現させていくのが我々の使命と考えています。
不思議なもので、はじめて入ったレストランや店舗が、いい店で売れているかどうかすぐに気づくものです。
貴社の店舗を訪れるお客さまも同じで、社長の背中を見ている社員の皆さんの表情、それを支えるサプライヤー、金融機関の状態までも、来店されるお客様は、今後も利用するの価値があるかどうか感じ取るものです。
さあ貴社におかれましては、縮小するマーケット環境で、苦しい表情での経営をこのまま続けますか、それとも、この猶予期間を活かし、笑顔溢れる経営で市場開拓チャンスを掴んでいきますか?