今週の儲かる繁盛店の視点 第261話:「なぜ、多くの企業で業務量が減らないのか?人時の苦手な社長は、売上を上げるのも下手!?その理由は○○にあります」
とあるチェーンの業務改革プロジェクトで、店舗の非効率改善について報告がありました。
「特売の回数の見直し」、「ハンディターミナル端末の台数の不足」、「メーカー販促物が多すぎる」、「朝礼の時間が長い」等… 結構厳しい意見が出ています。
(社長の顔色が変わりました。)
既に3割以上の店補で業革プロジェクトに取組んでいるのに、いまだに、「朝礼の時間が長い」といったネガティブ意見が出てくることに違和感を感じたからです。
「なぜ、無駄な朝礼をやってるのか」という意見がでてくるということは、本部が現実だけしかみない仕事を毎日しているからだ。今のままでいれば何も変わらない。我々経営サイドがもっと働きかけなくてはだめなんだ!!」と檄を飛ばしました。
大量に人がいた時は、長時間同じ職場で顔を合わせているので、各自がバラバラで仕事をしても、お互いの仕事が見える状態にありました。
ところが、業務に人をつけてやるようにしますと、一斉に実施する「集中品出し」とか「混雑時のレジ支援」といった皆が顔を合わせて、やる仕事は一日のうちでも限られた時間しかありません。
また、加工や、発注、荷受け、清掃といった作業は、少人数で回すほうが効率的なことも徐々に分かってきます。
このように全て作業のには大小があって、かつ細切れで発生することから、フルタイム社員がいなくても、短時間契約の人でも業務がスムーズに引き継がれていく環境づくりが必要となってきます。
先の指示をうけプロジェクトはすぐその課題と向き合い始めました。
かつての朝礼は、時間もやる内容も決まっていませんでした。そのため、伝わらないことが多かったり、やるべきことが 〆切にに間に合わないことが問題となっていました。
そこで、現状の朝礼の実態を調査し、目的、役割を「再定義」することにしたのです。
実際に調べてみると…
店長が毎日6部門のマネジャーに対して行う、マネジャーミーティングは毎日30分間やっていて、一日30分×6人で180分=3人時かかっていました。
各売場の朝礼は不定期であったため、日々の実態を調査に基づき仮説をたてました。一売場出勤者が6人とすれば、一日10分×6人=60分。6売場で6人時かかっていることになります。
これらを合わせると店トータルで一日9人時かかっていて、年間で3285人時 時給1000円とすると約320万円以上のミーティングコストが掛かっている計算になります。
運営部長は、これを半分にしようと目標を掲げ、インフォメーションボードの運用プランを企画していきました。
連絡事項は、すべてインフォメーションボードで行うことにし、原則、朝礼やミーティングでは業務連絡は行ないません。店長と各マネジャーは連絡事項を事前記入し、パートナーさんは出社したら、その連絡シートを確認してから職場に入ります。
「え? では朝礼は、何をやるのか?」という声が聞こえてきそうですが
朝礼では 必ずやらなくてはならないことがあります。
それは… 「賞賛」です。
朝礼では、昨日一番貢献してくれた人をマネジャーは発表し、皆で賞賛し拍手を贈るのです。
そもそも、顧客第一と言いながら、事務所に呼ばれ注意はされることはあっても、褒められも、称賛もない職場で、売場に出たら元気な笑顔で「いらっしゃいませ」と言いいなさい。というほうが無理というものです。
ダメなことや、悪いとこは指摘することはできます。一方で、良い事や、素晴らしいこととなると、それは「出来てあたりまえ」「常識的なこと」とされてしまいます。
人は誰からも褒められず、認められなくなると、アイデアや意見を出さなくなります。
はじめは、「照れくさくて、何を褒めたらいいのかわからない」「そんな良い事ばかり毎日続くわけない」といった戸惑いもありました。
しかし やっていくうちに、聞いてる、聞いてないというコミュニケーションロスなくなり、業務遅延はほぼゼロとなりました。
「そうは言っても ひとりひとりの作業を見ているわけではないから…」という声も聞こえてきそうですが、
当然ですが、マネジャーは ひとりひとりの行動をよく知らなければ「褒める」ことはできません。
そのためには、日々の作業指示書があって、各自が今日どんな作業をやるのか?マネジャー自身が知っていなくては「褒めるポイント」も「注意しなければならない点」も分かりません。
作業指示書にもとづくレイバースケジュールが使える環境が無ければ、企業として、コミュニケーションロスの逓減も、朝礼の定義の再設定も、それにかかる業務量削減も、何ひとつできないということになります。
実際に「日々のレイバースケジュールを使いこなしているマネジャーの売場は、売上が良くなってきています」という報告があがってきます。
例えば
「売場の端から加工調理していた商品を、売れる商品から加工調理する手順にかえたところ午前中の売上が上がるようになった」とか「納品量が多い日は、予め他部門の応援要請で開店時に品出しを100%完了させることで、午前の売上アップになっている」といったことが、時間帯の売上の変化をみるとハッキリとわかります。といった、人の流動化を積極的に行っているマネジャーほど店の収益にアップとなる働きをしていることもわかります。
一方では、上手く行かない報告も上がってきています。
その多くは、自売場内の人員体制の中で、なんとかやり繰りしようとするマネジャーです。
「手が空いたら掃除や整理整頓をさせる」
「時間が余ったら商品手直しする」
「常に大勢の人員を抱え、常に忙しく動き回っていることこそが美徳」
といった、今までのやり方が早く終わる。ということに固執してレイバースケジュールを使おうとしない人もいるからです。
社長曰く、レイバースケジュール上で運用できる環境を全店で作り、それを活用するマネジャーを増やしていくことが、今後の課題と方向をしっかり見定めています。
最初は、こういったことも一つ一つプロジェクトで 時間をかけやってきました。今では、社長からこうして各担当にバンバン指示がでて、次々と議題にあがり改善されていくようになっています。
足の遅い人が、サッカーチームに入って練習方法を教わりボールを追っかけているうちに、人並み以上走るのが早くなるように、走りながらパスを回し得点ゴールすることが目的となると、当然、瞬発力や持久力といった力が付いてきます。
プロジェクも同じで、最初はやり方が分からなくても、人時目標があり、動ける環境があれば、人時について考える思考力が鍛えられ力ついてきます。
このプロジェクトも、はじめは、こちらがだす課題に数値を埋めて期日までに提出するのが精一杯でした。
今は、教わったことを、各自が考え、指示待ちすることなく働ける社内環境が整ったことで、業務量が減り生産性が変わったと言えます。
誰もが理想のゴールを目差せる環境を創り、売上を上げるための人時配分の仕組みを店長が使いこなすことで、結果は大きく変わってくるのです。
さあ 人口減少の今、貴社ではまだ、売上こそが全てとつばを飛ばし続けますか?それとも、営業時間をフルカバーするきめ細かな人時体制で売上を上げていきますか?