今週の儲かる繁盛店の視点 第287話:「全てが生産性アップに繋がっていく企業がある。その決定的違いは○○!」
「ハイ!頑張りましたね。こちらは30カ月達成の記念品です」といって受付の女性から手渡されたのは、「電動歯ブラシ」でした。
お世話になった前職を退社したあと、最初に行ったのがこの歯医者さんで、その治療が終わり、定期健診を3カ月に一度のペースで受診していました。
その累計が30カ月経って、歯医者さんからいただいたのがこの電動歯ブラシだったのです。
聞くところによると、ちゃんと 来る人は本当に少ないそうです。来てれば、本人も痛い思いをしなくてすむし、検査データの見方や良いツールを教えてくれます。医師も処置が簡単で時間がかからない。
双方にメリットがあるということを聞けば納得するものです。
会社勤めのころは、自分の代わりになる人はいくらでもいましたが、起業の場合、資本は体ですから、そのメンテナンスは、欠かせません。
会社を立ち上げ、いつも思うことは、すぐに代替えがきかないものはどれか?ということです。
チェーン経営も同じで、すこし生産性があがったからといって、過信するとすぐに元にもどる、というより これでいいと思い込んでいたことが「え?間違ってやっていた」といったことは、こういった定期メンテナンスで気づくものだからです。
業務改革の数値の責任者不在の企業に多いのが、数値の間違いです。各担当に任せっぱなしのままでいると、管理職の人時がきちんとカウントされていなかったり、新規事業の人時売上の位置づけが明確なっていなかったりと、せっかくとったデータが、使い物にならなくなってしまうからです。
特に来年4月からは、働き方改革で、同一労働同一賃金が施行されることから、今 整備しておきませんと、その取り組み効果はどうであったのか?全く見えなくなってしまいます。
そういう意味では、数値責任者と一緒にこの1年を振り返り、いまのうちに記録を正しく修正しておくことが大事です。
今年取り組まれた、新たな取り組みの生産性はどれくらいで、来期はどう目標に近づけ、いつから成長軌道にのせていくのか?といったことを整理し、方向性を決定するタイミングといえます。
そういった中で、今まで「人時生産性」について、まったく動いておられなかった企業からも、最近ご相談が増えています。
「先生、今年は、働き方改革で、残業削減効果もあって人時売上は少し改善できるようになったのですが、この先の生産性の上げ方ついて教えて頂けますか?」とあるチェーンの社長からのご相談です。
――――今年の 人時売上の達成率はどのくらいですか?とお聞きすると
「手元に数値がないのでわかりませんが、達成はできていないです。店に改善例を出せっていっても 中々出してこないものでして…」
――――全社の数値を把握していない、取り組みの効果も把握されていない。人時生産性の取り組みはそれでは全く無理です。とハッキリと申し上げました。
なんでもそうですが、現場の数値を積み上げたものが、経営目標になるわけではありません。
社長がこの数値を実現したいという、全社利益目標があって、組織としてどこの部署が担当し執行していくのか? これが成長していく企業の考え方であることは言うまでもありません。
「売上目標を掲げても、もう何年も達成できてないので、予算もあってないようなもんでして…」という声が聞こえてきそうですが、
――――だからダメなんです。伊藤は申し上げました。
予算の無い企業というのは、経営ビジョンがない企業と同じです。好きな女性と一緒になりたければ、楽しいデートのワンシーン思い浮かべますし、都心のタワーマンションを手に入れたければ、そこから見える景色を想像します。
世の中に良い店をたくさん作り企業を繁栄させたければ、いっしょに働く仲間とお客様の最高の笑顔を想像するから、情熱をもって必死に取り組むことができるのです。
何かを達成させようとするときは、それを心に強く思い描く想像力が必要です。商売で今より、儲かる企業にしたければ、その目標数値となる人時売上高・人時生産性を紙に書き出し、見えるところに張り出して朝晩、その数値と計画を読み上げ自己洗脳するぐらいの気概がなければ、社長自身の行動がそうならないからです。
そのやり方が、良い悪いは別にしても、自社の人時売上目標を忘れることのないように、しっかり心に刻み込み、その数値を達成させる願望がなければ、生産性は一円も上がりませんし企業の将来はないからです。あまりにも冷めた社長の言葉につい語気があらくなってしまいした。
今年は、生産性を上げる目的で、年次有給取得義務化がスタートし、労働時間の削減が進んだことと思います。
来年は、同じ仕事なら同じ給与待遇ということになり、単価アップは待ったなしの状況ですが、これを人事の問題と勘違いしていると大変なことになります。
お手伝いさせていただいている顧問先では、現場でのヒアリングを毎年行いますが、その中で最も強くでてくるのが、「社員の仕事内容が不明確」「社員は長く働けるから非効率なやり方でも注意されない」「社員が変わるとやり方も変わる」といった不満で、どこのチェーンでも必ず出てくることです。
多くの場合、ある程度やる仕事は担当パートさんごとに決まっていて、その作業の漏れやズレといった穴埋め作業を社員がやっています。
少し考えてみればわかることですが、業務項目ごとの作業時間と入荷数量が分かれば、本来は穴埋め作業というのは、発生しないことになります。
批判を恐れず申し上げるとすると、そういった穴埋め作業がなくなれば、社員も、いらないのではないか?ということです。
ところが、本来必要な時間と、どこが不足しているのか、見分けることができる記録もないことから、こういったことが放置され続けてきました。
中には、こういった穴埋め作業に一番関わっていたのが、店長である事も多く、これからはそれが大きな問題になってくるということです。
そもそも、店長としてやるべき、業務改善に手を付けず、朝早くから夜遅くまで、あちこちの売場の品出しや、レジ応援で自己満足しているだけなら、パートさんやアルバイトと同じ時給でもいいのでは?ということになるわけです。
これまで、同一労働同一賃金化が進まなかったのは、企業として、業務項目を明確にしてこなかったため、店長自身も身動きが取れない状態になっていたということです。
そういったことが、放置されたまま「改善策を出しなさい」「作業指示書を作りなさいと」いっても、形はマネできても、実際に運用ができないことから、人時生産性が上がらないのです。
一方で、経営ビジョン提示され、その目標に向かって数年前から、動いている企業もあります。
そこでは人時売上目標があって、出来る出来ないではなく、その数値を創り出していくのには、どういった工程が必要なのか、全員で共有できる仕組みがあります。
組織として業務改革の数値責任者がいるので、目標からずれた場合、その差異がリアルタイムで分かるようになっています。
目標にはすぐに到達できなくても、着実に近づくノウハウが企業の中に根付いていく。これこそが 生産性をあげていく原点となるからです。
さあ、貴社ではまだ、混沌とした状態で、人時生産性に取組み挫折を繰り返しますか?それとも、短時間で整理し、実りある成果を手にしますか?