商業界オンライン2017年11月13日に弊社代表伊藤の記事が掲載されました
少人数でできる改善をして、人時生産性を向上させる!
人手不足を業績不振の理由にしていませんか?
2017年11月13日
私の仕事は経営者向けのコンサルティングですが、業務改革プロジェクトを進める中で、人事部の方からも相談を受けることがあります。
「人が集まらないんです」と、あるチェーンの人事部長からの相談です。
――何人時必要ですか? とお聞きすると
「A店では3人です、B店で2人、C店で……、今後はパート・アルバイトが集まらないので、本社社員採用でカバーしようと考えています」とのこと。
私は「何人時」とお聞きしたのですが、「何人です」と頭数で答えが返ってきたのが記憶に残っています。
この2つ、注意していないと聞き流してしまいそうですが、実は大きな違いを表しています。
人に作業が付いている場合は、頭数でしか答えられませんが、作業に人が割り付けられていれば人時で答えられるということです。
簡単に言い換えると、「人に作業が付いている」と、採用してから仕事を決めることになるので、ムダも含めた採用になります。これに対して、「作業に人を割り当てる」と、必要以上のムダな採用をすることにはなりません。
「やって欲しい仕事はいくらでもありますから、ムダな採用なんてありません」という声が聞こえてきそうですが、
――やって欲しい仕事とは、利益に結び付く作業になっていますか? とお聞きすると、
皆さん、「うっ!」と言葉に詰まります。
儲からないのに、現場が忙しい原因は、ここにある
それぐらいは誤差のうちと、思うかもしれませんが、このように、頭数で採用していくと、利益が出る、出ないは別として、とりあえず目の前の作業をさせていくことになります。小売りの現場が儲からないのに、やたらと忙しいのは、まさにここに原因があるのです。
実際に調査をすると、その差は2割近くもあることが明らかになっています。仮に、年商10億円の店で人件費率を13%とすると、人件費1.3億円のうち2千万円は、利益に結び付くかどうか、見えない作業をやっているということです。
先のチェーンでも、社長からは生産性を上げるように言われてはいたものの、店舗からは人手が足りないと言われた時に、人事部としてそれを判断するデータがないことが問題でした。
「プロジェクトを通して、状況を整理していくうちに『人が集まらない』のではなくて、採用すべきかどうか『決められない』状態であったことに気付きました」と、人事部長は当時の状況を振り返っています。
「今では、人手不足状態から脱することができ、毎月、人時生産性も改善しています」と定期報告を受けるたびに、本当によかったと思っています。
実は「少人数でできるように改善しない」と同じこと
今、各社は業績不振の原因として「人が集まらない」ことを理由に掲げていますが、これは「少人数でできるように改善をしない企業」と公言しているのと同じです。
アナログからデジタル、パソコンからスマホ、ハイブリッド車からEV車と急速に世の中が変化する中、どの業界でも職場改善を怠る企業に対して、働き手の目は冷ややかです。職場環境改善に手を付けず、個人の力に依存したままの小売りチェーンに、応募者が少ないのは、ムリもないと言えます。
特に最近、パート・アルバイトの方が最も懸念していることの一つが、仕事に慣れてくると 「この曜日も出勤してほしい」と 店長から契約内容と異なる要請がきて 断り切れず、自らの時間が削られてしまうことです。
仕事内容が曖昧で、なし崩し的に仕事量が増えていきそうな職場は、入った瞬間に分かるものです。今は、自宅に居ながらインターネットを通じ、自分の好きな時間だけ働ける仕事はいくらでもあるわけで 契約内容を変えようとする企業に、長く働いてくれる人は、これからは来なくなると言えます。
これまで モーレツ型で出世してきた人事部長から見れば「なんと、ぜいたくな悩み……」と思われることでしょうが、企業側が求めることと、働き手の意識に大きなギャップがあることを認識し、早急に手を打つ必要があると断言します。
欠員を補充では人時生産性が下がってしまう
そもそも、チェーン経営は、商品、財務、販促といった共通業務を本部に集中させ、店舗は売上げを上げていくことを目的に効率化をしてきました。
しかし、少子高齢化、人口減少の深刻化が進む中、売上げに期待するのはリスクが高いことから、全ての店と部署で、人時生産性を高めることが必須となってきています。
採用難の時の単価上昇を考えれば、一人欠員が出たから、一人補充するという従来のやり方では、人時生産性はマイナスとなるので、各部を巻き込んだ改善策を講じていかねばなりません。
そうした中で、時間の経過とともに、これから進むべき方向は選択肢が限られてくるのは確かなことです。このまま人が集まらないことを不振要因に掲げ続け、手をこまねいているのではなく、プラスに転換するための好機と捉えることが重要です。
詳細はセミナーでもお伝えしていますが、これを切り抜けるには、作業人時がどこで不足しているかを正しく把握できるようにするのはもちろん、それと同時に、簡素化、平準化といった少ない人時で回す仕組みについて、業務改革を推進するプロジェクトや組織を早期に立ち上げることが重要になります。