今週の儲かる繁盛店の視点 第373話:「現状延長線上に収益向上はありません。企画の寄せ集めカイゼンと生産性基準を有する改革の違いとは?」
「先生、作業指示書を作って 定例会議で進捗確認もやってるんですが、どうも人件費が下がらなくて…」とある企業の社長からのご相談です。
2008年から始まった人口減少は、当初売上にさほど大きな変化はありませんでした。しかし労働人口の減少は、それまで、たくさんの人を抱えてきた企業で人手不足問題という形で顕在化したと言えます。
人手不足問題では、団塊世代によって人海戦術でこなしてきた作業が、数少ない若手社員に向けられ、パワハラ、ブラック企業といった社会問題になったのは、まだ、記憶に新しいことと思います。
有能の人材が社を離れ、残された高齢社員の手足となるパート・アルバイトが集まらない状況が続きました。
先の企業の店舗を拝見させていただくと、忙しい人に仕事が集中し、それ以外の人はマイペースでやるといった、問題点が浮び上がってきました。
人件費がなぜ上がり、採用したくても予算超過で採用できなかった状況がなぜ起きていたのかが垣間見えます。
こちらの企業では、社内の業務内容の棚卸が長年行われておらず、形骸化した作業に人が割り当てられていたため、売上対比13%以上という高い人件費を払い続けていたということです。
その要因が人時数にあったわけですが、日本が欧米諸国に比べて人時生産性が低いのはこうした状態が長年続いてきたからといえます。
人時生産性と聞くと、労働強化や、早期退職、効率の悪い部署のリストラといった粗削りなことがイメージされます。しかし、実際に取り組んでいくことの大半は、一人一人を尊重し、ベストの結果をだすにはどうしたらいいのか?について、丁寧に考えていくことです。
人件費の8割を抱える店を中心に考えていくことから、店舗運営部が中心となって動いていくことになります。
よくあるのが、業務改革と称して、現状の延長線上で活動をやろうとして暗礁に乗り上げウというパターンで、中でも多いのが、店舗運営部が業務改革ための活動経費を設定せずすすめようとする。ということです。
IT化やレジといった設備投資にしても、ノウハウ導入にしても、現状を変えていくためにはお金がかかります。
「そんなのあたりまえのこと」という声が聞こえてきそうですが、ところがいざやるとなると、業務改革費を計上しない企業が圧倒的に多いという事です。
その理由として、「うちは 店舗数が少なく売上規模のビジネスだから…」とか
「うちは、本部社員が本部と店舗での業務を兼任してる」という理由から、業務改革コストを計上するのはも難しい…という理由です。
なるほど、もっともらしい言い分です。
しかし、
―――新たに店舗を出店する場合はどうやりますか? と質問してみると、
「わかり切ったこと聞かないで…」とばかりに、みなさん口を揃えて「それは、開店プロジェクトを組んで進めていきます」と言われます。
GMSや、スーパーマーケットはもちろん ホームセンター、ドラッグと全てに聞いてみても「全社プロジェクトでやるのが当然」といった同じ答えが返ってきます。
では、もうひとつ質問です。
ーーーなぜ、新店は、プロジェクトで力を合わせてやるのが当然なのでしょうか?
みなさん いかがでしょうか?
お店を作って、計画通り売上げを上げるには、部門の垣根をなくし全社一丸となって出店計画をたて進めなくては、そのお店を成功させることなど到底無理だからです。
このことは、通常の各主管部門のコストと別枠で開店準備金として設定されます。
要するに、何か新しいことを始めるのに、必ず準備金が必要だと分かっていればしっかりかけるということです。
しかし、実はこの質問には、もうひとつ重要なことが隠されています。それは「なぜ、新店の時は、開店準備金を用意してやるのが当然」と思ったか?という点です。
このことは、重要な意味を示唆しています。
私たちは、日常生活やビジネスの現場において、意識するしないにかかわらず、様々な経験や学習をしています。
この様々な経験や学習を積み重ねる中で「見えないながらも、この商売は、こうするのがふつう」といったことも、無意識に蓄積していってることに気づかなければならないということです。
つまり、新店づくりを進めていく際、「だいたいこんな感じ…」といった無意識に蓄積しているイメージに即して、「こうするのがふつう」だと思って展開しようとしているから、成功度合いが高くなるということです。
それを具現化していくのが、開店準備室プロジェクトであり、そこでは出店計画書が作られ、これが元となり初期投資、運転資金が算出されます。
成長企業はこうした出店計画を次々と策定することから、成長に対して考える力が醸成され、その再現性が高くなっていきます。
人口減で、出店を控える企業が増えている中、出店を続ける企業が益々力を強くするのは、投資をして利益を増やすことを全社レベルで遂行しているからです。
人時生産性を上げていくのも同じで、業革を進めていくのに「こんなイメージや、こうするのがふつう」と誰もが思って展開できるようにすることが成功のきっかけになり、その可能性を高くすることで全体利益が上がっていくわけです。
それが無ければ業務改革計画も出来ないし、もっと言えば企業成長戦略がない…ということなのです。
実際に、プロジェクトを組んで進めている企業では、店舗の人時売上と顧客満足度改善により収益が上がっています。
その結果、経営の自由度や余力が生まれ、挑戦が自信に繋がる成長基盤をしっかりしたものにしておられます。
さあ、貴社では、まだ、既存組織でカイゼンモドキを進めよとしますか?それとも、別枠で大きく企業成長を成し遂げる基盤づくりの道を選択しますか?