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今週の儲かる繁盛店の視点 第389話:「目先の売上や見映えに捉われ高収益へのチャンスを逃していないか?」

「先生 うちは、店舗数が少ないので、本部はそんなに人を増やしてません。まずは、店舗に人を配置し、本部は増やさないほうがいい…と考えるのですが」とあるチェーンの社長からのご相談です。

――――今後、改革路線を望まれないのなら、それでもいいと思います。そう申し上げました。

これから、企業を成長させていくためには、新たに店舗を出すか、あるいはネットスーパーのような通販で、売上をとっていくことは必須となってきます。

何もないとこから何かを生み出すということは、既存の店舗運営とは全く違う動きになることから、新店にしても、ネットスーパーにしても、新規の立ち上げは、プロジェクトとして組織化していくことになることからここはご理解いただけることと思います。

しかし、店舗と本部主管部の仕事とでは、根本的とも言えるほど違う点がひとつあります。この根本的な違いこそ、人時生産性が上がらない最大の原因といえます。

そう「根本的違い」とは「仕事の目的が暗黙知で理解されているかどうか」という点です。誤解を恐れず申し上げれば、店舗の場合ほとんどの店長、副店長、売場長は、仕事の内容は大筋同じです。

どの店でも同等の仕事をやってくれることから、依頼する商品部側も安心して頼めるという構図があるわけです。

一方、主管部門の一つである商品部のバイヤーの仕事はどうでしょうか?店舗側からその様子は全く知ることが出来ません。

商品部長でさえ全体の粗利確保に追われ、個別の動きは掴めていないというのが殆どで、仕事内容は個人商店のように、それぞれのやり方で…というのが実態です。

あえて共通点をあげるとすれば、①特売計画、②価格変更連絡、③定番商品改廃、といったことが中心になりますが、この3つで業務量のトップを占めています。

ところが、売上構成比別にみると、③の定番商品改廃が7割、②価格変更業務が2割、①特売計画が1割と、業務量の多さと売上構成比の時間配分はまるで正反対になっている。ということです。

「定番商品は そんなに毎年変わらないので手がかからない」という声が聞こえてきそうですが、

たしかに、人口が増え売れていた時代はそれでも、売れていたたため、前年踏襲型でもさほど大きな問題となりませんでした。

しかし、国内市場は一変し、人口減で売上が大きく減る中、利益を確保していくための定番商品の見直しは必至で、

――――来期の商品改廃計画はあったら見せていただけますか?とお聴きすると

「やらなくてはいけないことは分かってるんですが…」と言葉に詰まります。

こういった全体計画を作る指示を出さずに、よくあるのが、地域一番の品ぞろえを謳い、「ここでしか扱っていない銘品やブランドのアイテム数を増やし、顧客の支持を得ようとする」といった売上アップ手法です。

先の社長も、高質スーパーで扱うような高額商品群のコーナーを設けたり、地方の銘品を導入しお客様から「こんなものまである」と一目置かれるような店づくりを目指してこられ、まさに、そういった商品群が一等地の商品棚に組み込まれていました。

導入当初は、物珍しさもあって売れたものの、やっていくうちに、様々な問題点が浮き彫りになってきました。

新たに入った一つの銘品ブランドの棚を見ると、売れ筋商品は品切れで売場は空っぽ、変わりに売れない不動向商品が申し訳なさそうに売場に数個おかれていました。

社長の一声で、導入したこの銘品ブランドもはじめは売上のけん引とはなったものの、販売数と仕入れロット数がかみ合わず、店舗収益率の足を引っ張る形になっていたのです。

何か物珍しい商品を仕入れるのは簡単でも、その商品が儲かるようになるためには、そういった不具合をリカバリーする仕組みが無ければ、店舗は販売期間切れ商品の山となってしまうということです。

さらに、ややこしいのは、こういった商品に限って、人気商品に偏った売れ方をすることから、表面売上は上がったように見えても、抱き合わせで納品される不動向商品のロスで利益率が下がっていたのです。

売れそうだからという安易な理由で、儲けの少ない商品群を定番に入れて展開することは、一時的なマイナスで済む安売り販促強化のイベントより危険。と申し上げております。

この話を受け、社長はすぐ、発注ロット数を最適化するために、商品部長とともに仕入先企業に対して協力要請に動かれました。

しかし、そこからの道のりは険しく、簡単なものではありませんでした。定番商品売場だけでは、商品販売数量をあげることができず、けんもほろろに断られ、仕入れ企業の協力を取り付けることが出来なかったのです。

そこで、社長は一計を案じ、目の前の自社売上だけを追うのではなく、視点を上げて考え、仕入れ先企業の損益分岐点がどのくらいかを考慮し、定番商品戦略を再構築することにしたのです。

仕入れ先企業にしてみれば、品数を増やせば増やすほど売上は増えるものの、それぞれの生産ラインを動かさなくてはならないことから生産効率は下がります。

つまり、仕入れ先にとってもっとも儲かる商品を拡販することが、利益を増やすことに直結するということです。

先の仕入れ先企業にも看板となる主力商品があり、利益の半分以上をわずか数品の主力商品が稼いでいたことがわかり、それらの商品の年間販売数量を引き上げることで合意を取り付けることが出来たのです。

主力商品の販売実績を2倍3倍にあげていくことが出来れば、それに準じてリベートであったり、粗利交渉を優位に進めることが出来るという訳です。

これまで、各仕入先から提示された従来型の受け身の商品調達をしようとしてきたやり方を、定番売場だけでなく、エンド計画まで含め見直し年間プランを再構築することで、徐々に数値実績は改善していき36カ月粗利率改善実績をさらに更新し続けています。

社長が突破口を開き、プロジェクトメンバーによる、仮説と検証に基づいた商品調達方式にすることで仕入れ先企業との信頼関係を深めながら新たな成長戦略を描くことが出来たのです。

チェーン企業として、仕入先企業と協業で、主力商品を売り込む売場棚割り計画が出来れば、高収益体制ができるだけでなく、お客様にとって大きなメリットを提供することが実現できるということです。

これまで、自社だけでなんとかしようと閉塞的なやり方ではできなかったことも、高い視点で、お互いの企業の収益構造を創造していくことが出来れば、2倍3倍どころか5倍10倍へと、収益を上げることも夢ではないといえます。

さあ 貴社ではまだ、商品部バイヤー任せの赤字商売をやり続けますか?それとも、プロジェクト体制で、仕入れ先企業とともに高収益経営を実現させますか?


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