今週の儲かる繁盛店の視点 第390話:「人時売上を上げるため、主管部門はどのように変わっていかなくてはならないのか?」
「先生、店舗の人時生産性を始めていくのは、店舗が先でしょうかそれとも、本部を整備してからでしょうか?」と少し前に弊社セミナーにご参加された、とある企業の社長からのご相談です。
聞くところによると、会社を引き継いだものの、長年店舗を増やすことができなかったため、これから店舗を増やしていかれたいとのこと。
――――リーマンショック以降~人口減といった逆風が続き、売上や店舗数を大きく減らす企業が多い中、これから、店舗を増やし地域に貢献してきたい。という気概のある社長を応援するのが弊社の仕事です。がんばりましょう!と背中を押させていただきました。
但し…これまでとは違う手法でお店をつくっていくことになりますので、引き継がれた方法に、必ずしも固執しないということが大前提となります。
その手法とは、店舗運営で上手くいかないくなった「非効率なやり方」をいかに見つけることができるか?ということです。
いいですか、上手くいく方法を探すのではなく、上手くいかない方法を見つけだしそこに掛かっている時間を活かし、成功確率を上げていくという事です。
これは、簡単なことではないし、厳しいことです。
言い方を変えれば、同業他社がやって上手くいってるようにみえるやり方を真似するのではなく、独自の手法で、儲かる店づくりを行なっていく。ということです。
この方法には2つのメリットがあります。一つは、新しビジネスチャンスを見つけるノウハウを社内化することで、再現性を高めることができる。ということです。
二つ目に、独自に開発したやり方であることから、他社が追従してくるのに時間がかかるため、その間優位に商売の展開を進めることが出来るということです。
ここでの留意点は、その仕組みづくりには最低1年という時間がかかるという点と、主管部門のルーティン業務とは、切り離した別の組織体制が必要になるということです。
理由はシンプルで、主管部門の業務を見直していく中で、そこでは多くの利益相反が起こります。独立の組織でなければ、成果を出していくことができないからです。
こう申し上げますと
「特に、現状の主管部門のやり方に問題があるわけではないので…」という声が聞こえてきそうですが、
――――問題があるということではありません。現状の主管部門の業務は、お互いどのような仕事をしているのか聞いてみなければわからない…ということがあまりに多いからです。
例えば、席の近い商品部バイヤー同志でさえ、何年かたった後に「ああ、そういう仕事だったんですか!」と、ようやくわかった…ということも珍しくありません。
それくらい、主管部門の仕事というのは、決まったカタチや規格というものがなく、内容もハッキリ理解されていないことが多いのということです。
この、「何をしてくれるのかよくわからない」という、状態が解消されない限り人時売上で、望むような効果を期待することはできないということです。
語弊を恐れず申し上げれば「経営として、何を貢献してもらうのか明確に示していますか?」ということです。
これまで、主管部門の仕事といえば…
「商品部は担当別に仕入先と協議し商品を仕入れて、売上利益を取ればいい」
「販売促進は、昨年ベースに効果の得られるとこにチラシを入れればいい」
「開発部は、新店案件を前例にならって出店計画を立てればいい」
「システム部や施設保全部は、老朽化設備の更新計画を立てればいい」
と、思っていると大変なことになります。と申し上げています。
こう言いますと「主管部には店舗の声に耳を傾け、売上を上げるように指示している」という声が聞こえてきそうですが、では
―――お客様に御社の商品の価値を伝え、いつでも欲しい分だけ量を提供できるようになっていますか?とお聴きすると、
「え?」と言葉に詰まります。
そもそも、そういったことが主管部門ごとに出来ていれば、人口が減ろうが、景気が悪かろうが、客数減に悩むなどといったことはないはずです。
事実、あらゆる業種でこの逆境にもかかわらず最高益を出している企業はいくつも存在します。
店舗客数の増減=企業の貢献度と考えた時、顧客と接することのない主管部門として、客数を増やし、人時売上を上げていくために何で貢献していくのかが明確になっておられますか?ということです。
店舗などの場合、指示した情報がどこまで行きわり伝わっているかによって、人時売上は、如実に変わってきます。
各主管部門も同じで、店舗の人時売上を上げていくための体系化された計画があって、チームメンバーに行動を促すために十分な情報が伝わるようになっていますか?ということです。
本部の会議で社長が指示を出して、すぐ取り掛かって動く部門もあれば、ゆったりかまえる部門もあり、それはいままで主管部門のやり方に委ねられてきました。
ある意味指示待ちともいえるやり方から、人時売上を目標に一本化することで、待ち姿勢から各主管部自ら動く仕組みに変わることになります。
人時売上は店舗では日次、本部では週次で捉えていくことになることから、今週とったアクションが、週次の人時売上実績にはっきりと反映されてきます。こう言いますと
「主管部門の仕事は、直ぐに人時売上に反映されることばかりではない」という声が聞こえてきそうですが、
おっしゃる通りです。しかし、仕事の中身はそれぞれ違っても、出された課題に対し、どこまで進んでるのかというのは、全てで共通していることです。
そのプロセス通りに進んでいるのかを確認することで、人時売上への貢献度を確認していくということです。
これまで、売上利益だけが目標の場合、管理や企画といったとこでは、全社目標と個人の紐づけはできませんでした。
しかし、人時売上が目標となれば、売上に加え、人の動きが関わってくることから、全ての部門が対象となります。そう言う意味では、人時売上と、貢献意欲調査は相性がいいといえます。
貢献意欲調査とは、全ての部門の従業員を対象に、会社が求める貢献目標に対し、どうすれば、それを達成させることが出来るか?という設問にアンケート形式で回答してもらう調査のことです。
たとえば、「あなたが業務目標を達成するために必要情報を会社は十分に伝えくれますか」といった設問項目で、10段階中9点を獲るような部門は、リーダーとチームメンバーが効率よく作業をしている。ということが言えます。該当部門の作業指示書を見ると、毎日、定期ミーティングが開催され、人時売上が高くなっていることがわかります。
一方で評価点が10段階中3点と低い結果の部門は、リーダーが仕事を抱え込み、人が多い割には、一人一人が機能していない。ということが見え隠れするという仮説がたちます。
そこで調べてみると作業指示書ひとつ作られてなかった。というようなことはよくあることです。
本部主管部門のスタッフが、人時売上を上げていくためにどのように行動しているかの実態を把握し、業務改善させていくことが出来るということです。
この調査を実施していくことで、どこの部門・店舗が、貢献意欲が高いか低いか明確になり、経営として意思決定が早くなり、改善スピードが圧倒的に速くなるのです。
人口が増え売上も伸びた時代、トップダウンでも上手くいったわけですが、人口減による売上減が続く中、社員一人一人に向け貢献意欲調査を行うことは、社員自らは何で貢献すべきか?という考えを引き出すための仕組みということです。
さあ、貴社では、まだ主管部門と人時売上は別物のまま低迷をつづけますか?それとも、結果を変える仕組みで強い多店化体制を実現していきますか?