今週の儲かる繁盛店の視点 第401話:「商品・人にかかるコストの上昇をリスクと見るかチャンスと捉えるか? 」
「先生、この1年どういったことが起ると思いますか」業務改革に取り組み中の、とあるチェーンの社長さんの一言です。
先行きの不透明感はありますが、海外はすでに経済が回り始めていて、原材料費が上昇しています。
モノやサービスが売れ、企業にお金が廻り始め、景気回復に向かうわけですが、日本の場合まだ多くの企業が、以前の7割といった状況です。
帝国データバンクの見通しでも6割以上の企業が先行きはマイナスと回答しています。特に日本の場合、水際対策を2年近く続けていて、海外からの就労者を受け入れていないことが大きく影響しています。
総務省の人口統計を見ると、日本人の人口減は毎年40万人減で推移していますが、それとは別に海外からの就労者が毎年15~20万人増えていたことがわかります。
そのおかげで国内人口は20~25万人減で持ちこたえていたわけです。ところが、新型コロナの影響で水際対策と称し2020年から受け入れを止めています。さらに2021年は流失数が受け入れ数を上回り、国内人口は60万人近く減るという過去最大の減少幅になる見込みです。
コロナ特需が一巡しても売上が減り続ける要因がここに起因していることが分かります。
そもそも海外からの就労者は人手不足対策として国が認めた方々ですから、働き手=消費者であった人々が減少しているということです。
今後、徐々に、入国許可は緩和されていく事と思われますが、その効果が出るのは、早くても1年先ぐらいと考えれば、今年一年間は、売れない状態が続くと言えるでしょう。
そういえば、最近は、電車に乗っても、外国人の姿は見かけなくなりましたし、以前は、近くのスーパーやホームセンターにいっても、外国人の人が買い物をしている姿を見かけたのですが、今はほとんど見かけなくなったような感じもします。
だからと言って、このまま、何もしなければ、赤字に転落してしまうかもしれないわけで、何らかの策を打たなくてはならいということです。
こういいますと、ネットスパーや移動スーパーという新規事業に…とすぐ手を出したくなるものですが、今は大手でも収益化するのにはお金も時間がかかっています。まずは、既存店の収益回復戦略をしっかりとたてていきましょう。と申し上げています。
収益回復戦略というと、人時目標を決めそれに向け、人員を減らすということを思う方も多いと思います。
人件費だけが上がっていたコロナ前はそれでもよかったわけですが、今は、原材料費や包材の値上げで、商品価格が上がり始めています。
人件費はもちろんですが、商品調達コスト状況も把握できるような仕組みにしておかないと、販管費引き下げだけでは足りなくなる公算が大きいからです。
そう言った中で、どうやって販売力を引き上げていくのかと考えた時、そのポイントは、その商品発注にかかってくるということです。
理由はシンプルで、商品発注は、売上の7割を占める、最も大きいコストだからです。
この発注業務が、正しく行われていれば、売上は上がるし、品切れ、値下げに伴うロスを予め防ぐこともできる。ということです。
ここでお聴きしますが、
―――日々の商品発注はどうなっていますでしょうか?とお聞きすると…
「うちはベテランがいるから大丈夫」とのお答え。
もう一つ質問です。
―――昨日発注した商品の数量どれぐらいありましたか?
「それは、調べてみない事には…」
さらにお聞きしますが
―――発注した商品が納品された日の定番品切れは何件ありましたか?
「え!…」と言葉に詰まります。
もちろん、発注をはじめとするほとんどの業務は、担当者やパートさんに権限委譲されています。
これだけ状況が大きく変わってきているのに、日々数百万円以上もの仕入れ内容を点検する仕組みをもたないまま、原材料費値上げの対策はどのように考えておられるのでしょうか?ということです。
例えば、発注総数と金額、納品予定日別数量、品切れ件数、品切れアイテム名、アイテム別値下げロス金額といったことです。
「そんな数値はうちのシステムでは出ませんよ…」という声が聞こえてきそうですが、
メーカーは、原材料包材を価格転嫁することで、コスト吸収策をとったわけですが、小売業はそれを受け、さらにお客様と対峙することで、より様々な角度で、収益対策をとることができるということです。
発注総数によって荷受け品出しに必要な人時は変わってきますし、値上げによる発注金額上昇は資金繰りに影響してきます。
販売数量が変わってきてるのに、今までと同じタイミングで発注すれば、値下げロスは増えてしまいます。
簡単な話、ムダな人時を発生させない。ムダな商品量を発注しすぎない、ムダな商品値下げを発生させない。
少なくとも、こういった一目見てわかる資料が毎日、店長の目でチェックできる仕組みがなければ、この先の売上減少の対策は何も取ることが出来ないといえるでしょう。
かつて商品原価も安く、人件費も低かった時代はなんとか利益を出すことが出来たわけですが、昨今の商品原価の値上げ、人件費の値上げといった状況を見れば、店舗運営として発注が正しく行われているかどうかをチェックできる、新しい仕組みに切り替えていくことは、待ったなしということです。
実数から計算してみればわかることですが、発注担当者は週休二日で休みますから、3割は不在でその分予測に基づく発注になります。
その品切れや、商品ロスは、店の責任者がチェックできて、改善できる仕組みがあれば収益改善も夢ではないということになります。
こういうと、「そんな、システム投資のお金はない、いまのシステムはそんなことに対応したグループウエアじゃないんです」という声が聞こえてきそうですが。
繰り返しになりますが、調達コストの中に占める商品原価費の対売上比は7割と最も高く、これは人件費の約5倍の額に相当します。
このもっとも大きなコストにかかってくる値下げロスや、品切れロスで売上対比0・5%改善が進めば、そのまま営業利益としてプラスオンされるわけです。
こういった取り組みは、ほんの一例ですが、こういったデータが掲載された、店長専用資料が毎日配信され、店長がそれを片手に、発注担当者と5分でいいのでその問題について話し合うことができたらどうなるか?
そして、それが店長業務として作業指示書に組み込まれ、すべての店長がその行動をとったら、単年利益の目標達成も夢ではないということです。
これまで 商品値上げはメーカーの話と思っていたことも、こうして、店舗の業務ロス改善に反映させることを考えれば、資金繰りは大きく改善され、新規事業への投資も早期に実現可能になる訳です。
さあ、貴社では、まだ、コストアップは厳しいといってまだその場にとどまりますか?それとも、コストアップをチャンス到来と捉え大きく躍進しますか?