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今週の儲かる繁盛店の視点 第437話:「世代を越え大きく躍進するために欠かせないこととは?」

先生、改善はヤラサレ感があるとやらないので、社内で話し合いをしてから進めるようにしてるのですが、どうも結果が伴ってなくて…とある企業の社長さんからのご相談です。

聞くところによると、電気代が昨年の倍近く跳ね上がっていて、このままいくと大変なことになる、どう課題として取り組んでいくかを考え報告しなさい。と指示したものの、一向に改善提案が出てくる気配がないとのこと。

――――指示を受けたチームは悩むことも「考える時間」と思っていませんか?とお聞きすると

「え?どういうことでしょうか」とキョトンとされます。

ここで言う「考える時間」とは予め決められた前提条件で、答を導き出す導線を考え作っていくことです。

ところが、この前提条件を決めておかないと「悩む」ことに時間をかけすぎ進まなくなってしまうことから、時間のムダになっていませんか?という事です。

決められた前提条件とは何か?と問うた時、全社の問題として、業革プロジェクトを立ち上げ横断的な対策を講じていくということです。

先の企業では、この前提条件が決められていなかったことから、いつもと同じように主管部門(施設部)が主体となって動いていました。

社長から言われた通り、節電協力のお願いのPOPを掲示し数店舗で照明を暗くしたところ、「売場が暗くて商品が探せない」とか「商品鮮度がわからない」といったクレームが増えてしまったため、急きょ元に戻し、棚上げしたままの状態になっていたのです。

一方、店舗運営部が中心となり、主管部門を招集するプロジェクト方式で動いている企業では、まず、施設部門に、全社の電気代削減目標を算出してもらい、店舗側は何を具体的にすればよいのか?明確にしてもらっています。

例えば、電気代の6割を占める動力電源を使う冷蔵ケースの、冷やし過ぎ是正には、冷蔵ケースを何度に再設定すればいいのか?とか、あるいは空調を効率的に使うために、清掃はどのくらいの頻度でやればいいのか?といった手順書を作成してもらい、それを店舗の作業指示書の中に組み込むこんでいくことで、仕組みとして回せるようにしたのです。

売場照明については、もっともデリケートなとこなので、開店以来一度も計測した事の無かった、照度計測調査を行い、明るすぎず暗すぎずといったストレスフリーになるように基準を再設定するだけで、電気代は1割以上下がってきます。

実際に、こうした手続きを踏んでやることで対顧客店舗コンディションの「おすすめ商品のわかり易さ」であったり「店員の接客態度」や「お店の清潔感」といった主要項目点数が大きく下がったりすることがなかったことから、店舗が抱える対顧客リスクを最小限に電気料金を下げることが出来たと言ってよいでしょう。

そうは言っても、値上がりした全ての電気料金をカバーできるわけではないので、人時売上を上げる方法を業革プロジェクトでは手を緩めることなくすすめていかなくてはなりません。

現実問題として、少子高齢化による売上減やコスト増の問題をうけ、ややもすれば高コストの温床になりがちな縦割り組織に警鐘を鳴らす意味で、数年前から社長主宰で着手した業革プロジェクトが、さらに力を発揮することが出来れば、電気料金も十分カバーできるレベルと考えるからです。

しかしながら、国内小売り業界では、「売上さえとれてればなんとかなる」とか「人時生産性はもっとこなれてからでも遅くはない」と、旧態依然とした売上至上主義が多く、売上アップ策としてEDLP(毎日がお買い得)をいきなりやろうとして失敗する企業が後を絶ちません。

伊藤はこれまで、EDLP化と称し似て非なるものをやろうとして、結局で失敗した幾多の企業を見てきました。

その共通点は、人時売上をあげるという本質的なことに手を付けず、価格を下げれば、客数もついてるといった考えに基づくものでした。

ところが思い描いた通りに客数は増えず、利益率がさがっただけで企画は途中で挫折していったということです。

このコラムをお読みいただいてる経営者の皆さんは、これまで様々な場面で、陣頭指揮をとり、難局を切り抜けてきた方だと思います。そこでは、上手くいったものもあるでしょうし、いつのまにか消え去ったものもあることと思います。

そういった局面で取捨選択する時、どれぐらいの時間を要したか?思い出してみていただきたいのですが、そこでは殆どの方が「数分」で決めているということです。

チャンスは誰の前にも平等に現れるが、瞬時に通り過ぎてしまうという経験上、そのような勘を身に着けて来られたのだと思います。

つまりより多くチャンスを掴むには、あらゆる課題について議論し、いつでもキャッチアップできるような受け皿が必須になります。

それを担うのが業革プロジェクト会議で、企業をどんな会社にし、どういった顧客にどんな商品・サービスを届けたいのかということをプロジェクトリーダーが自らの言葉で説明し、メンバー全員と共有していくことになります。

月に一度集中的に、自社のかかえる課題を題材に、メンバー一人一人が担当責任者となり、人時売上改革の難しさや、面白さを経験していくことで、有事の際すぐに動ける体制が築け、それが次の世代を担う原動力となっていきます。

しかし、それが各個人の頭の中にしかなければ、その再現性は受け継がれていくこととはありません。

成功を導き出したやり方や手順を体系化し「これをもとに結果を出していく!」と本気で社長が言葉にしていかない限り多くのチャンスを手にすることなどできない。ということです。

当社には一風変わった社長さんがご相談にお見えになりますが、皆さんに共通していることは、普段はとても穏やかなかたばかりですが、こと人時売上のことになると目つきが変わり、動かない社員に対しては、烈火のごとく厳しく指導されるということです。

というのは、これまで多くの人手をかけてやることを是とした事業構造は、売上減になると会社が傾く…といった苦い経験を幾度となくされてきたからです。

収益が上っていくビジネスとして、世代を越え理解できるよう体系化されているか?

このことは、極めて重要でありそれは、企業収益力の差として現われてくるものだからです。

さあ、貴社ではまだ、「悩む」時間に投資し続けますか?それとも「悩む」時間を減らし、一気に成長の道を駆け上りますか?


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