今週の儲かる繁盛店の視点 第443話:「なぜ、LSPを導入したのに人時生産性の成果を得ることが出来ないのか?」
先生、LSPをやりはじめてみたのですが、どうも人時生産性があがってこないものでして…
少し前にセミナーに参加された、チェーン企業の社長からのご相談です。
聞くところによると、お仲間のチェーン企業からLSP システムの話を聞き、1店舗でやってみたものの、そこから先に拡げていくことが出来ないとのこと。
LSPとは レイバースケジュールプログラムの略で、店舗の生産性を上げていく為に必要となってくる作業指示書のことです。
これによって、どこの業務が非効率なのかを浮き彫りにし、ひとり一人が無駄なく動くことで、業務改善を進めることが出来ます。
ところが、この目的を取り違えて、他社がやってるのを見てとりあえず導入してみた、とか、まず1店で出来ればあとはあとは何とかなる、といった、入れることが目的になると、全店波及ができず投資回収ができない…ことが起きます。
――――なぜ、こういったことが起きるのでしょうか?
LSPシステムの使用法については、システム会社から教わったり取説を読めばわかりますが、ややこしいのはシステム会社では人時生産性を上げてくノウハウまで教えてくれるわけではないということです。
そういう意味では、そのシステム設計に携わる弊社のような、専門企業も同時入ってすすめさせていただくことになります。
最初は、みなさん同じレベルですが、実はその使い方しだいで、徐々に差がついていきます。前職時代もここで、失敗を繰り返し7年以上かかってしまったことは、拙著「個店力最大化のすすめ方」でも触れていますが、1つ出来たら、2つ3つと増やしていく部分が難しく、ここで諦めてしまうのが大半ということです。
各社お考えがあるのでどうこう言うつもりはありませんが、設計されたシステムプログラムに何かが足りていないか、多店化して生産性を上げていく「仕組み」「組織」を作り上げていく手順が曖昧?といったことが理由で、行き詰ってしまうということです。
弊社には、様々な企業の社長がお見えになりますが、先の社長さんのように「LSPを入れたものの2年近く導入効果が出せてない」とか、「人事異動で、LSPシステムを操作できる人が動いてしまい、事実上元の状態にもどってしまい諦めてしまった。」と苦しい胸の境地を語る社長もご相談にお見えになります。
――――もし、それを貴社で成功させるには、何が必要になってくるでしょうか?とお聞きすると
「え?」と口籠られます。
この先、人時生産性を基準に利益を伸ばし続けていくためには、全体の中でのLSPの目的役割を明示したうえで、使いこなせる専門知識を備えた人材の組織化が必要になります。そうでなければ、だれか一人が辞めたり、休んだりするとたちどころに動かなくなってしまうからです。
まずは、いつまでに専門社員が何人必要で、彼らはにいつまでに何をやってもらうのか?といった、指導者育成計画や組織体制づくりが重要になってくるということです。
具体的には、最初の1店舗の導入がスタートしてから全店導入完了するのはいつで、その時の実現人時売上はどのくらいのになるのか?とか、LSPを使い人生産性を引き上げながら、新規顧客を獲得していくにはどうすればいいのか?といった数年先、さらに発展させていくことも同時に考えていくことになります。
なんでもそうですが、新しいことを始めるときは、プロジェクトを組んで膨大な量の情報やデータ集めながら、試行錯誤をして作っていくことになります。
もし最初のLSP導入店を作るために、解決すべき100個の問題があったとしたら、2店目を作っていく局面では、問題をせいぜい10個以内に絞っていかなければ、多店化展開は出来ません。と申し上げています。
理由はシンプルで、最初の一つめの店舗と2店舗目の目的役割が全く異なるからです。
一店舗目の目的は、新しい形をつくり結果を出していくことですが、二店舗目の目的は誰がやってもできるようにし、3点目以降の店で再現できるようにすることです。言い方をかえれば、最初は実験店であり、二店目はお手本の店の違いといったニュアンスです。
こうして言葉にするのは簡単ですが、やるとなると大変で、高い壁がいくつも立ちはだかります。
伊藤自身、前職時代最初に取り組んだプロジェクトでは、年間200以上の課題改善計画を作り提案してきましたが、最終的にアウトプットに大きく結びつたものは、その中の20個程度です。数でいえばたった10%ですが、そこで結果を出せたことが、黒字化のカギになったのは紛れもない事実で、びとつめとふたつめは、時間の配分を考えないと、時間切れとういう大失敗を招きかねないということです。
無尽蔵に人がいるのであれば別ですが、そう言った企業は存在しないわけで、深堀をして高い成果あげることは、最初の一店舗では出来たとしても、それと同じやり方で多店化させていくことはできない。ということです。
そういう意味では、最初の一店舗を1年間かけじっくり導入し、2店舗目では、取組み項目を10分の1に絞り6カ月ぐらいでリリースできる体制をつくっていくことが求められます。
組織としてLSP導入専門チームを2つ立ち上げることが出きれば、毎年4店舗ペースでの導入実現が可能となり5年で20店舗ぐらいは人時生産性を上げていくことができる計算です。
また、この専門チームで頑張った方々は、人時生産性向上の専門知識と経験を備えた将来の幹部候補となります。半世紀の間、総合職ばかりの専門家不在の弱体化してしまった小売りチェーン組織を活性化させ 新しい収益構造の構築を担っていくことになります。
LSP導入とは、表面的な導入に意義があるのではなく、社長主宰のプロジェクトが中心となって、現状の非効率業務を洗い出しながら、人時生産性の高い店舗を作って広めることで、全社の収益構造を変えていくということです。
お手伝いさせていただいている企業で、導入がスムーズにいっているのはこうした、導線計画に則ったやり方を社長が理解をし、苦しみもがきながらも地道に進めていったプロジェクトメンバーの努力の賜物といえるでしょう。
LSPを通して日々の業務を見ていくことで、店長は毎日何に注意しなくてはならないのか?そして、新らたな顧客を開拓していく為に店舗のコンディションはどうすべきか?といったこれから新しい目指すべき姿が見えることで、社内の活気は大きく変わってくることになります。
さあ、貴社ではまだ、LSPを導入することで満足してますか?それとも、通過点として、大きく目標を掲げ、全社一丸となって大きく飛躍しますか?