今週の儲かる繁盛店の視点 第445話:「なぜ、ドル箱店に依存した考えから抜け出せないのか?ドル箱店依存から脱却できない企業に行く末は?」
先生、ここ数年売上が厳しくて…と眉間にしわを寄せ、セミナーにご参加になった社長さんからのご相談です。
お話をお聞きすると、新型コロナで行動規制がかかった、外食や旅行が大苦戦したのを見て、地域に根付く小売の場合そこまで落ちることはないのでは?
と楽観視していたところ、売上は今も減り、コロナ前の3割近くまで落ち込んでしまっているとのこと。
――――なぜ、売上がそれほど落ちないと思われたのですか?
「うちは 各店立地の良いとこに店があり1店あたり売上も高いことから、他社より体力があると思っていた」とのこと。
ところが、値上げによる買上げ点数減で売上の回復が遅れているところに、電気代の上昇と、人件費が重くのしかかりこれまでにない厳しい状況になっているとのこと。
営業数値を拝見すると、好立地に恵まれたドル箱店が他店を引っ張るカタチで利益を維持しています。ドル箱店は経費率が高く、一旦売上が滞ると、全社の身動きがとれなくなるというリスクがありますが、日本経済のデフレがそれを吸収してくれる形となっていたわけです。
どの企業にもそういった稼ぐお店が数店あり、多くの赤字店をカバーし全体の利益を維持されていることと思います。
ところが今、モノの価格が上がるインフレが世界中で起こっていることから、国内でもあらゆるコストが上昇し、経費率の高いドル箱店がその役割を果たせない状況になってきています。
こうなってしまうと、リストラで人員整理をしたり、事業や資産の売却をしたところで、今期はなんとかなっても、来期どうなるか?を考えると、社長として胃が痛くならないほうがおかしいと言えるでしょう。
かつて 人口が増えていた時代であれば、こういった好立地商圏での出店は必勝要素のひとつとなっていました。
しかしながら、ネット通販やドラッグストアが台頭する中、いつでも、どこでも、必要な時に買うことができる時代になり、ドル箱店の集客力は年々薄れつつあります。
ドル箱店依存から、一店一店で稼ぐことができる収益店に、変換させていかなくては生き残りが難しくなるということです。
出店改装にはお金もかかることから、まずはお金の負担が少なくてもできる収益構造部分から順次に切り変えていく事になります。
特に、売上対比13%を超える人件費が、最大のコストになることから、その中身がどうなっているか?明らかにしていくことがカギになってきます。
「一人ひとりの作業の中身は、どうやって調べたらいいのか?」と言った声が聞こえてきそうですが、
――――その中身の違いが、収益の違いになるわけで、それを避け、利益を生み出す仕組みをつくりだすことはできません。とハッキリ申し上げています。
こういった調査をキチンと定期的に実施し、人件費率を現状の13%から一桁台に抑えることができれば、年商20億の店で1億もの利益が変わってくることになります。
商品発注作業ひとつとっても単に、「品薄になったら発注する」といったことになっていませんでしょうか?ということです。
この発注が、正しく行われていれば、売上は上がるし、品切れ、値下げに伴うロスを予め防ぐこともできる。ということです。
ここでお尋ねしますが、
―――商品発注状況はどうなっていますでしょうか?とお聞きすると…
「うちはベテランがいるから大丈夫」とのお答え。
もう一つ質問です。
―――発注した商品の値下げ金額は日にどれぐらいありましたか?
「それは、調べてみないと…」
さらにお聞きしますが
―――発注した商品が納品された日の朝10時の定番商品の品切れはどのぐらいありましたか?
「え!…」と言葉に詰まります。
もちろん、発注をはじめとするほとんどの業務は、担当者やパートさんに権限委譲されているわけですが、毎日数百アイテム行われる発注の内容を
「発注⇒値下げロス⇒品切れロスといった一連の流れで点検する仕組みをもっていない企業にとっては、経費が垂れ流し状態になっていませんか?という事です。
かつて商品原価も安く、人件費も低かった時代はそれでもなんとか利益を出すことが出来ました。
しかしながら、昨今の商品の値上げや人件費の上昇といった状況を見れば、まずは、発注をはじめとするほとんどの業務が正しく行われているかどうかを見れるようにするのは待ったなしということです。
そもそも、発注担当者は週7日のうち2日はお休みですから、その間の過剰発注や品切れは避けられません。また、すべての店に同じスキルを備えたベテランパートさんがいるわけではなく売場間であったり店舗間の格差はこういったとこからも生まれます。
それ以外にも退職・異動はつきものですから、永遠にベテランパートさんがそこにいるわけではないということです。
こうして、さまざまな視点で調査していくとわかることは、労働人口減が進む中、現状のキャリア依存の商品発注方式の先には、マイナスはあってもプラスの要素はないという事です。
チェーンストア経営の中に占める商品原価費の対売上構成比は7割と最も高く、これは人件費の約5倍の額に匹敵します。そして、このもっとも大きなコストにさらにかかってくる値下げロスや、品切れロスがマイナス要因になります。
業務の実態を調査し、作業流れを修正することで、粗利とコストで売上対比0.5%でも改善が進めば、そのまま営業利益としてプラスオンされるわけです。
さらに、こういった必要なデータ一覧が掲載された、店長レポートを毎日配信する仕組みをもつことができれば、店長はそのデータを片手に売場へ行き、発注担当者と毎日5分その問題について話し合うことができます。
それを店長業務として作業指示書に組み込み、すべての店の店長が同じ行動をとることが出来れば、営業利益の桁を変えることも不可能ではなくなるということです。
店長レポートとは、日々店長が見なければならない、店舗ロスチェックと、店舗コンディションが明記された弊社が独自に提供しているものです。
店長は朝一番にこのレポートを手に各売場担当者と対話し内在化された店のロスと新規顧客作りのヒントを見つけ出していくことになり、人時生産性には欠かすことの出来ないものといえます。
これまで 自社で10年かけて育成しなければならなかった店長を5分の1の2年で育成するこうした仕組みがあれば、人材確保と、店舗利益確保の面で高収益化を目指すことも十分可能になるということです。
さあ、貴社ではまだ、リスクの高いドル箱店に依存した経営を続けますか?それとも、各店が儲かる仕組みの店舗運営で、大きく飛躍しますか?