今週の儲かる繁盛店の視点 第450話:「なぜ、人時生産性の取り組みはうまくいかないのか?失敗を繰り返す企業が後を絶たない理由とは?」
今週で2022年も終わりですが、来年は、弊社も10年を迎えることになり、当コラムも今号で、450号となります。
これもひとえに、メルマガやコラムをお読みいただき、ご自身の事業や業務に役立てていただいている皆様のおかげであると厚く御礼申し上げます。
2014年創業以来、毎週もがきながら書かせていただいておりますが、毎回3000文字は書いてまいりましたので単純計算でざっと135万文字。単行本ですと10冊以上の分量を書いてきたことになります。
毎週、書き溜めることなく、その時の情勢やお手伝いさせていただいている企業の話をベースに出稿しております。「その通りだと思う」と共感される方もいれば、「厳しいご意見」をいただくこともあり本当にうれしい限りです。
そこで今日は、だれもが苦戦する人時生産性を成功に導くためのコツについて、書かせていただきました。
題して、「なぜ、人時生産性の取り組みはうまくいかないのか?失敗を繰り返す企業が後を絶たない理由とは?」です。
お時間を作ってお読みいただければ幸いです。
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450話「なぜ、人時生産性の取り組みはうまくいかないのか?失敗を繰り返す企業が後を絶たない理由とは?」
先生、業務改革で相手に納得してもらうのは本当に難しいものですね・・・とある企業の社長さんからの一言です。
社長が言っても聞いてくれない?そんなことあるのか?と思いきや、聞いてやってもらえることのほうが少ないのが現実。
口では「はい」と返事をしても、いつまでたっても企画書が出てこなかったり、進捗報告すらないまま時間切れというのはよくある事です。
「まあいいからとりあえずやってみなさい!」といって、しぶしぶ動いてもらうことで、精一杯。というのが実態ではないかと思います。
特に、今までやってきたことを変えるとなると大変で、営業、商品・調達・物流システムが横断的にからむような場合、利害関係が異なることから改革の障害になっていたりします。
冒頭のチェーン企業の社長さんと初めてお会いしたのは3年ほど前のことで、「先生、競合が出てきて…大変なんです、なんとかならないでしょうか?」という言葉は今でも印象に残っています。
お話をお伺いすると、かつては、大手スーパーが出てきても、価格では負けることはなかったものの、ここ数年、ネット通販の台頭やドラッグストアの出店で、営業利益率は年々下がっていたとこに、低価格ディスカウントが出店し、これに対する競合対策を教えてほしいとのこと。
――――なぜ、1店舗がへこんだだけで、そんなに厳しい状況になったのでしょうか?とお聞きすると、
実は、競合が出てきた場所は、自社の売上一番店近くであったことからダメージが大きく、このままだと赤字ギリギリの他店について閉鎖を考えなくてはならない。状況だったのです。
今は、半数のお店で「業務改革を中心とした店舗コンディションプロジェクト」に取り組まれていますが、競合店が出てくる前の人時売上を上回るまでに回復され「来期は全ての店でプロジェクトを完了させれば、最高益になりそうです。」と社長さん喜んでいまして、こちらもお手伝いして本当に良かったとおもっています。
もちろんこちらの企業も最初からすべてうまくいったわけではありません。
地元の有名チェーンといえども、店舗規模、品ぞろえもバラバラで、店舗運営も決まったやり方があるわけではありませんでした。
キャリアの長い人に依存した年功序列が続いていたことから、何かひとつ変えようにも、ことごとく反対する人が出てきて、プロジェクト発足から2年近く業績を上げることができなかったのです。
社長のお考えとしては、売れる店に依存してきたやり方から各店ごとに収益が上がるやり方に切り替えたいとのことで、その意向にそって計画を組み立てたところ、予想以上によい結果に結び付けることができたといえます。
プロジェクトではメンバーが業務改善計画を立て、その企画をもって、主管部門に改善依頼を行っていくわけですが、「前例がないことはできない」とか「それをやるためのお金はどこが出るのか」であったり「失敗したら責任はとれない」といった調子でけんもほろろに断られ、空回り状態が1年以上続いていたのです。
先日、そんな、プロジェクトリーダーA氏が、「先生、主管部の協力が得られ作業時間が大きく減ったことで、人時売上が上がる見込み立ちました!」と満面の笑みで報告をしてこられたのです。
―――― え!それはよかったですね~一体どのようにされたのですか?とお聞きすると
「プロジェクトからの依頼の仕方」を変えられた。とのこと。
人時生産改善を突き詰めていきますと、それが絶対的な拠り所になることが分かるようになってきます。そのため、どうしても無理に進めようと肩に力がはいってしまうことから、うまくいく?いかない?といったふうに論議が平行線のまま…という光景は、決して珍しいことではありません。
A氏はそこに気づき、これまで、店舗からの改善要望事項一覧を片手に、主管部と「交渉」するやり方から、店舗運営のリクエストを聞いてくれる主管部は、何に困っているか?というふうに「問い」かけるやり方に変えてみたところ…
そこから、スルスルと話がまとまり始めたとのこと。
商品部に対しても、店の生産性を上げることについて、社長から指示がでていたのですが、そういった作業にどれぐらい時間がかかり、売り上げはどれくらいという基準をバイヤーとして売り場づくりに反映させればいいのか、といった情報が一切なかったからです。
そこでプロジェクトのほうで、発注、荷受け、陳列、販売、値下げ等にかかかる時間と売上実績を共有できるようにしたところ、今度は、商品部から「何をすれば、人時売上があがるのか教えてほしい」との問い合わせが寄せられ、業務改善を進めることができたそうです。
これを、きっかけに、開発、物流、システムといった部門に対しても、同じのアプローチ方法をとってみたところ、協力体制を得ることができたそうです。
これまで 縦割り組織の弊害となっていた縦情報の流れを、横断的に情報が共有できるようにしたことで、年間1店舗1千万以上のコスト改善を進めることができたのです。
多大な労力をかけお金にならないミニマム改善ばかりで結果が出ず、挫折する企業が多い中、本質を押さえ僅かな力で結果を変えていく鍵を見つけたA氏の活動は大きな功績といえます。
Aさん曰く、期限が迫るなか、何度も断られ続けるという窮地に立たされたときは、絶望の連続だったそうです。しかし、プロジェクト活動を進める中で、何気に全体としてどうすべきか視点を上げて考えてみたところ、相手が耳を傾けてくれるポイントを分かるようになったと後日、明かしてくれました。
業務改革や改善を錦の御旗に、交渉を無理に進め失敗する企業が後を絶たない中、実際に自らやってみて、活路が見つけることができたことでは、ご本人にとっても企業にとっても大きな財産になったことは明らかといえるでしょう。
さあ、貴社ではまだ、多大な労力をかけ業務改善を推し進めますか?それとも、僅かな力で企業業績を変える手法でスマートに企業経営を誘導させていきますか?
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来る2023年も、役立つコラムを執筆してまいります。皆様、良いお年をお迎えください。