今週の儲かる繁盛店の視点 第452話:「なぜ,店舗の状況を知る ことから始めなくてはならないのか?]
2023年は独立してから10年目を迎える年になりますが、仕事柄、多くの経営者とお会いし、これまで100社以上の方々と直接かかわってきました。
そこで見えてきたことは、低い利益率に苦戦する企業が、店舗という場を良くしていくための情報量が圧倒的に足りないということです。
背景には、半世紀にわたり続いた人口増とその後のデフレ経済があげられます。
人が集まりそうなとこに出店しチラシを打てば一定の売上が見込め、低金利による資金調達が可能であったことから、低い利益率でも店を維持することが出来たからといえます。
しかし、状況は大きく変わり、これからは、単に世帯人口が減るだけでなく、新型コロナによって、今まで主力顧客であった高齢者層が来店しにくくなることを加速させました。
世界的な金利上昇から景気減速も否めません。企業として資金調達が難しくなることから、社内収益力を高める、事業の見直しや新しい方法を見つけていかなくてはなりません。
気をつけなければならないのは「長期微減が続く」という、少しずつ悪化する状況下に長年いると、「決断するのが鈍くなる」ためその状態から早く抜け出さんなくてはならないということです。
急な変化であれば「まずい!」とスグに気づくものですが、ゆっくりとした変化だと、「いずれ、やり方は変えなければと思っても、すぐではない…」と、決断のテンポが遅いままになっているからです。
傍から見ると、「かなりヤバいのでは?」という状況でも、ほんの少しずつの悪化であったため、やっていけなくなるまで同じことを繰り返してからでは手遅れになるということです。
理由は単純です。「衰退状況に身を置いていると、思考も行動力も一緒に衰退してしまう」からです。人口減だから…価格が上がるから…「マイナスになるのが当たり前」と考え、行動する活力を自ら削いでいくのです。
こうしたとき重要なことは、「自分だけでは出来ないこと」に目を向ける…。いわば、今は、手が届かないが、やらなくてはならないことを掲げ、やってみたい環境をつくることができれば、見聞きし、調べていくうちに興味が湧き本当に出来るのでは?と考え動き始めるという話です。
ご指導させていただいている企業でも、業務改革プロジェクトを立ち上げ、各自を担当範囲から外に出していただきます。担当外のことはわからないことが多く、メンバーは各々が本当に助けてくれる人を見つけるように行動します。その結果、やるべきことはより鮮明になった。と口々にする人が社内で増えていきます。
オンラインでのやり取りが主流となった、ここ数年のやり方を否定するわけではありません。これまで、長年かけ店舗でお客様と直接かかわり、ビジネスチャンスをつくりあげてきたように、社内でそれぞれが抱える問題を引き出し課題化するのは、膝をつきあわせなくては見えてこないということです。
と申しますのは、プロジェクトでは、自分が困っていることを自ら発言しないと、本当に助けてくれるのはだれか見分けることができないからです。
社内でそういった力を持った人を見つけ、どうすれば問題解決することができるか問いかけをすることですべてが始まるわけです。
インターネットだけあれば…、システムに詳しければ…、経営数値さえ知っていれば…、商品のことさえ分かっていれば、といったことを各自が心の中に思っているだけで、何も発言しなければ、業績回復に結び付くことはひとつもないからです。
プロジェクトは「自らが困っている=社内の課題」と位置づけ問いかけすることで、目の前の壁と向き合い、傷つき、共感し、仲間とともに全体を良い方向に導いてくれる特性があります。
世の中、理論理屈や正義だけでは動きません。決算書的に正しくても、この仕事が大事…だと言われても、「やりたい」「報われたい」「豊かになりたい」…という想いがなければ継続的な努力をすることは不可能で、それが活動の原動力となるからです。
「企業成長し続ける」ことの本当の大切さがわかる人は、「想像を絶する苦しみや絶望の経験があり、想像もしない出会いに助けられた」という体験があり、これを伝承することを大切にしています。
言い方を変えれば、他企業の成功話の良いとこ取りをし、その場をしのぐのではなく、全体を良い方向に導くために、良いことと苦難を経験させることが大事ということです。
仮に、他企業の良いとこ取りでうまくいったとしても、それは過信になるだけで、再現性は望めません。むしろ、良いこと1割で、苦難は9割であったとしても、そこで手にした成果は代えがたいものとして企業と個人の自信となる。
これを、実現するには、各自が自分の枠外に出て、活発にコミュ二ケーションするために、壁と向き合い、傷つき、共感する場をつくることが大事だということです。
なぜならば、知恵はそういったお互いの意見を言い合う体験からしか生まれないからです。
こういった前提があることで、企業として、店舗が必要な時に、欲しい情報を見分けることがができるようになっていくものだからです。
さあ、貴社ではまだ、不必要な情報整理に時間をかけ続けますか?それとも、必要な時に欲しい情報を手にすることができる店舗運営で大きく飛躍しますか?