今週の儲かる繁盛店の視点 第463話:「なぜ、必要情報が揃ってない中で作業割り当表を作ることがダメなのか?」
先週からマスク規制が緩和となり、外すと解放感がこんなにも違うものだなあ~と改めて今週は実感しています。
スーパーや百貨店、電車やバスはまだマスク姿が多いですが、レストランなどはしている人は見かけなくなりました。
イベントが次々開催され、本格的に人が動き始め、スーパーなどの普段使いの店などでは、再びコロナ前の「売れない」状態に戻ったカタチになったわけてす。
企業側も、新商品を投入したり、あの手この手で売場を変えたり、販促強化に躍起になっています。
注意しなくてはならないのは、同じ「売れない」でも、コロナ前とは全く状況が変わってきているということです。
売上面では、商品値上げで、一時的に売上は上昇したものの、節約意識の高まりから思いのほか売上は伸びず粗利低下が起こっていて、さらに、経費面では、人件費、水光熱費が経験したことのないレベルで上昇しているということです。
いわずもがな、今までの売り場情報をもとに、業務を組み立てようとすると、あちこちで差異が生じてくるということです。
先日もセミナーで
「先生、売場づくりより先にやらなくてはならないことは何か?ようやく理解できました」セミナーに参加された社長さんの一言です。
商品ボリュームで迫力のある売場、関連販売売場、手直しで整理された売場、まるで業界紙のカラー面に出てくるような売場は、かっこいいものでどれもこれも、魅力的な売場に見えます。
たしかに、そこだけを切り取ってみれば、テーマ性があるように見えても、店舗全体として生産性が高いかどうかは別ということです。
かつて、こうした商品展開がもてはやされた時代がありましたが、必要以上に納品され売れ残った商品をあちこちと動かし、最後は倉庫の片隅で値下げして処分といったことが、行われてきたのは記憶に新しいことです。
今でも、大量仕入れで頻繁に売り場を動かしては、売上を上げていこうとする企業もありますが、なぜ、頻繁に売り場を動かすのでしょうか?とお聞きすると
「チラシの訴求内容に合わせて」とか「同じだと、飽きられてしまうから?」といった答えが返ってきたりします。
――――実際、その効果はどのくらいあるのですか?とお聴きすると
「え?それは…」と言葉に詰まります。
チラシの日替わり商品ぐらいは、実績把握されてるかとおもいきや、それも何ケースぐらい…といったレベルで、正確な実績はどこにもないのが実態ということです。
チラシを訴求しますと、店舗では商品を積み替えたり移動したり、POPの差し替えといった多くの人時がかかっています。本来であれば、エンド別販売実績を検証しながら、作業の内容を見直していくことになります。投入した経費に対して、その結果がどうであったか?というのは、小売りに限らず全てのビジネスでの基本鉄則だからです。
ところが、その効果を捉えるものが、売場写真しか残っていないため、その効果検証ができず、人時売上を上げることが出来なかったのです。
エンドや特売コーナー以外の、他部門売場に陳列する「関連販売」でも同じようなことが起こっています。
例えば、「○○の素」といった合わせ調味料などは、メニュー提案と称して麻婆茄子の素が青果売場のナス売場の前にでっぱり什器で出されていたり、回鍋肉の素がキャベツ売場並べて陳列されることがあります。
ところが、各商品の販売実績は、合算値しかカウントできないため、定番売場と関連売り場のごとの販売実績を捉えることが出来ず、効果検証できないという問題があります。
また、「関連売場」を維持するために何が必要なのか?明らかにされていないという問題もあります。
実際に、ご支援させていただいている企業の店で「関連販売」箇所がいくつあるか数えてみてもらったところ、ある店では70個所でこういった売場が展開されていました。
それをひとつずつ見ていくと、同じ商品でも定番売場はしっかりと管理できているのに、「関連売場」では品切れが起きていたり,商品が斜めになっていたり、埃がかぶっていたりで、お世辞にもよくできた売場とはいえない状態になっていて、
運営部長さんの曰く「ちゃんとするように指示はしてるのですが・・」少々バツの悪そうな表情です。
そこで、実際この売場に、どれくらい時間がかかっているのか業務改革チームに追跡調査をしてもらうことにしました。
発注担当者が、関連販売売場を見に行く時間を、一か所あたり仮に3分かかっているとすると、70個所を点検するために、一日3.5人時の必要人時がかかってくることになります。
年間ベースでは、3.5人時×365日=1277人時となり、パートさん一人分の年間勤務時間になります。
これだけの数の「関連売場」を回していくためには、それだけ人員を抱えていなくてはできないということです。
「関連販売」売場が放置された状態になっていたのは、各担当者の問題ではなく、人時予算未設定の責務であり、起こるべきして起こったことということです。
断っておきますが、関連販売がダメということではありません。しかし、本部として業務量や中身を調べずに、あれこれ指示を出すやり方では、店舗の士気が上がってこないのは無理もないということです。
過去にいろいろな、販促系コンサルの話を聞き、あれこれ手を出して、とり入れてやろうとしてきたことが、後になって利益棄損になっていたことがわかった。象徴的な出来事と言えるでしょう。
こういったことが明らかにされない中で、ソフトウエア企業の作業割り当表を入れても、歯抜けの部分が多すぎて、結局ゴールには到達できないのは火を見るよりも明らかです。
言い換えれば、1から10まで、人時売上を上げていくめどがつくまで、ストーリーを組み立て、それを具現化していくことが現実的な改善策になるということです。
なんでもそうですが、人は大変なとこは避けて通りたくなるもの、そのため、よほど危機感を感じているか、モチベーションが高い経営者じゃないと、その一番大変なところは、誰も手を付けようとしません。
そういうときにどうすればよいかというと、そういったことに精通した人と時間を共有することによって引きあげてもらうことが必要です。
最初の段階では、そういった人とつきあうことによって意識を高めて、その方にきちんとチェックしてもらうことが近道になります。
結果が出なくて、悩んでいるのであれば、今までと同じでは変わらないわけで、何が問題で問題点を特定し解決することから、一緒になって考えて教えてくれる人から学んでいくことになります。
それを経営としてマスターできれば、自社で臨機応変に、人時売上を上げることが出来る指示が、出せるようになっていくものだからです。
さあ、貴社では、まだ、必要な情報もないまま作業割当てを作り、低迷状態のままでいますか?それとも 経営として人時売上をマスターして大きく飛躍しますか?