今週の儲かる繁盛店の視点 第466話:「本部で店舗収益構造の再設計が出来ない企業の行く末は?」
新年度が始まり、先週は、春の嵐が吹き荒れる中、入社式が行われリクルートスーツ姿の多くの人を見かけました。
ノーマスク入社式を機に、リアル出社への移行は予想以上に早く、ランチ時のコンビニ混雑も以前の状況に戻っています。一方、郊外店舗を持つ企業の売上は、値上げとコスト増でさらに厳しい状況になっています。
「先生、うちは、すぐ人に仕事を振る人間が多いもので…」とある企業の社長さんからのご相談です。
お話をお聞きすると、昔は、「すぐやれ、なぜできない?」といったワンマンでやってきたものの、最近はパワハラといったことが多く取り上げられるようになってから、言葉に気を付けて「柔らかく・やさしく」といった指示を出すようにしているとのこと。
ところが、今度は、それに乗じていつまでたっても動こうとしない。すぐ、下の者に丸投げして、部下が会議で見当違いなこと発表させられたり…といったことが散見されるとのこと。
人口が増え、利益がとれてい時代はそれでも良かったわけです。しかし、今は、人口減、コスト高、高齢化といった、未曾有の状況に突入しています。来期もどうなるかどうか見えないという状況で、本部の動きが遅く、気づけば赤字になっていたというのはよくあることです。
なぜ、こういったことが起きるのでしょうか?
少し考えてみるとわかるのですが、今までは、特別なことをしなくてもなんとかやり繰りできていたことから、月次報告書だけでよかったわけです。ところが、このコスト高を乗り切るためには、効果の無いことを止め、その時間を新しい取り組みに振り替えいかなくてはならないため、その分時間がかってきます。
具体的には、営業会議用の報告書類をまとめる以外に、プロジェクトとして企画を提案していくため、事前調査や仮説検証が必要になります。そこでは、無駄を止め、新しい企画を投入するという工数が増えることから、いままでの時間配分ですと人時不足になります。
提案期限が来て、企画はどうなったか?社長がと聞くと「まだ、出来ていません」といった答えが繰り返され、・・・気づけは半期が過ぎ、年間通じ何も変わらず初めてそこで減収減益が大問題になってくるわけです。
こういうとき、
――――会議議事録はありますか?とお聞きすると。
「今は、残業も制限されているので議事録は・・・」という声が聞こえてきます。
各社お考えがあるのでそれをどうこう言うつもりはありません、しかし、議事録ひとつあるのと無いのでは、全く状況が変わってきます。何が決まって何が決まっていないのか?ということが明らかになり共有することができます。
会議の発言は、音として発せられますが、空中に文字として表示されるわけではないので、お互いの受け取り方に相違が起きます。議事録が残っていれば、「言った、言わない」のむだな議論も避らけれます。
また、その時は分かったつもりでも、人の記憶は翌日には半分が消え、徐々に薄れるもの、社内の力関係で意見が分かれるのは日常茶飯事、そんな時どこに問題があったのか記録があればすぐ別の方法をとることもできます。
何でもそうですが、何か新らたな取り組みをする時は、計画書が連絡文章として発信され、それをもとに進めていくことにになります。ところが、店舗への計画書はあっても、本部内で何か変えていくことは、部門長任せになっていて何も形になって残っていないのが現状になっているということです。
店には作業指示書通りに動くようにと指示しているにもかかわらず、本部は、部長の口頭による、その場しのぎに回答で済んでしまうことがほとんどです。言わずもがな、現状の厳しい状況を乗り越えることが出来ないのは火を見るより明らかです。
店舗の生産性を上げていくということは、店舗と本部の間で利益相反する部分を、ひとつひとつ紐解き、解決していくことです。
しかし。国内チェーン業界は店舗の業務内容が把握しにくいことを理由に、利益相反について見て見ぬふりをしてきたことから、店舗作業が増え人手不足が社会問題になっていたことは記憶に新しいことといえます。
全ての指示が悪いわけでがありません、その中には、効果を上げたものもあり、マイナスのものもあるという事実です。問題はそこで成果が出なかったことを見つけ、止めていく仕組みや組織が無いことです。
言い換えますと、これまで出されてきた店舗への指示の中で、非効率な業務を明らかにし、本当に必要なとこに人時を再配しなくては、収益構造を変えることは出来ないということです。
実際に、こういった会議で細かく詰めていくことで、店舗オペレーションにかかっている業務負担を減らすことが出来れば、店舗の人時2割程度はあっという間に下がってくるものです。
あらゆるコストが上がりづづける中、本部から出される指示のどこに問題があるのかを明らかにし再設計することでしか、コスト増に歯止めをかけることは出来ないということです。
さあ、貴社では まだ、本部改革未着手のまま、減収減益を繰り返しますか?それとも、「成長のきっかけをつかむ」会議の進め方で、店舗の生産性を大きく伸ばすことを実現させますか?