今週の儲かる繁盛店の視点 第475話:「なぜ、人時売上が上がらない要因を特定せずに、マニュアル作りや作業指示書づくりをするのか?一貫性のない企業の行く末は?」
先週から関東も梅雨入り、連日雨の日が続いています。
5月8日の5類移行から一カ月がたち、経済の流れは一変しました。インバウンド需要は増え株価も3万円台を超え,コロナをめぐる法的位置づけの変化は消費者マインドを大きく変えています。
思い起こせば、コロナ前、外食やコンビニの人手不足による採用単価高騰問題や、消費税10%移行に伴う、キャッシュレス化が進みました。
小売りチェーン企業にとっても、これからが人時生産性改善に取り組むといった、大事なタイミングだったわけです。
ところが、コロナ問題で状況は一変します。巣ごもり特需で売上が上がり、営業できなくなった企業が、やむなく手放した人材の受け皿となったからです。
小売りチェーンの得意とする人海戦術で、大幅増益を手にする追い風が吹いたのです。
しかし、特需の風が止むと人海戦術に頼るやり方は推進力を失います。人件費の重みで沈みかけ、改善の大幅な遅れに再び気づきます。
コロナ禍に脚光を浴びたネットスーパーや移動スーパーも今は風前の灯火の状況です。
先日も、
「先生 店舗からの改善要望が出てこないのです。」とある企業の社長さんからのご相談です。
お話をお伺いすると、業務標準化のためのマニュアルを作るにあたり、店舗の非効率な業務改善と平行して作成するよう指示したところ、マニュアル作りだけが先行して、人時売上の改善が全く進まないとのこと。
おっしゃる通り、現状のコストのかかるやり方をマニュアルにすれば、そのやり方にお墨付けをつけることになり、ますます業務改革は進まなくなってしまいます。
人口減少が起こっている市場で、企業がすべきことは、大量の人を使って、売上を取るやり方から、少ない人数で、欲しい商品を欲しい時に好きな分だけ買うことが出来るきめ細かな対応が出来るビジネスモデルに切り換えていくということです。
その為には、現状の店舗実態を知り、その中の非効率な業務を見つけ出し、何が問題なのかを特定していくことが必要になります。
ところが、人は自分のこととなると見えなくなるもの、いざ、非効率業務を探すとなると中々見つからないものです。
たとえ、見つかったとしても、そもそも、経営者トップ自身が決めてきたことを否定することになるわけで、それを、簡単に認めるわけのはいかないのが現実だからです。
では、どうやって、非効率業務を見つけ出し、解決していけばいいのか?となるわけですが、
非効率業務を見つけ出し、次々と解決していくためには、まず、その答えを導きだすためのいくつかの要素があります。
① 社内のだれの問題を解決するためにやるのか?
② なぜ、そういった、非効率な業務になってしまったのか?背景理由。
③ どんな、実害実態があるのか?
④ 第三者からの評判評価は?どうなのか?
⑤ 他に有効性があることが示すことが出来る情報はあるか?
大事なことは、こういった要素をひとつひとつの情報を整理して書きだす。ということです。
それをすることなく、社長の見た目や感覚で、主管部にまとめなさいと指示しても言葉の羅列になってしまい、やる価値があると思われる内容にならないということです。
実際にどういうふうに、取りまとめていくのか?というと。
一番最初に、「一言でいうと、その非効率な業務はどういうことなの?」という項目が一列目にあって、「え?ほんとうにそんなことがあるのか?」と普通に思う項目名を現場目線で、記載していきます。
例えば、「朝礼は毎日全員参加する必要はあるのか?」とか「毎月お買い得商品のPOP価格が変わらないのにタイトルだけ変える意味があるのか?」といった、その効果が疑問視さているものを記入していきます。
二列目には、どういう実害があって、なんでそういうことがおきてしまうようになったのか?といったバックグラウンド、を記入していきます。
例えば、「その作業によって、自分の作業ができなかった」とか「残業になってしまった」といったことです。
そういった穴埋めをしていくことで、何でそういうことが言えるのか?ここではっきりしてくることになります。
さらに、具体的な実績として、実際どれぐらいの時間がかかっているのか?という計測した数値や根拠となる計算式を書き込んでいきます。
最後に、止めた場合、簡素化した場合、止めなかった場合の一年後の改善予測数値を記入し、妥当性をアピールする情報を記入していく。
こういった一覧表を作成し、お店でどういった問題があって、その問題を特定し解決していく手順書を作り、一つひとつ精査していくわけです。
ところが、多くの企業でこういったことをやった経験がなく、何をどうすればいいか?いまいちピンとこないのです。
背景には、小売業に長くかかわってきた人は、「習うより慣れろ」といった、人の動きを真似したり、口頭での指示を自分なりに理解しこなすといったやり方で教わった人が多く、文字にして顕在化させ伝えるといったことが苦手、ということがあります。
冷静に考えてみればわかることですが、現場を良く知る、チーフや店長が、そういった問題を言葉にして、運営部長に上げることが出来れば、もっと早い段階で問題が解決でき、社内の仕組みをかえていくことができるはずだからです。
創業100年近くの企業であっても、文章を策定したアンケートの実施や、数値化することに対し苦手意識があるため、そういった記録が企業に存在しないのです。
業務改善、生産性を上げていくためには、前出の5つのポイントをもとに一覧表をつくっていくわけですが、そのひとつひとつを解決していくことにも時間がかかります。
本来であれば、結果を導き出すための導線計画があって、経営トップに対して、業務改善提案が必要なのですが、そういったことを進める人材がいないのも足かせになっています。
経営者の中には、こういったことを学ばれている方も多いともいます、しかし、事件は現場で起きていることから、現場の店長やそれを統括する運営部長さんが、これができないことには、情報は分断され、業務改善が進まないのです。
実際に、生産性の上がっている企業では、現場で起きている課題を経営課題に変換する業務改革部門を新設し、経営改善提案をすることを重視しています。
もちろん、ひとつふたつやったところで、すぐになんにでも対応できるといったことはないことも申し上げておきます。
ところが、ある地点まで到達すると、そこから、一気に進んでいくのも業務改革の特徴といえます。
自社を題材に効果が得られるやり方数多く体験・訓練することで、結果を導き出すことが出来る人材が増えていくからです。
さあ、貴社では、まだ、経営と現場の情報分断によるやり方で、高コストを放置しつづけますか?それとも、社員が言語化する力を身に着けていくことで、上げ企業収益力を一気に変えていきますか?