今週の儲かる繁盛店の視点 第530話:「非効率業務改善はコストカットの道具じゃないことを分かっているか?」
先生、ムダな業務を書き出すように言ってるんですけど、この一年間で一つも出てこないんですよ。
とあるチェーン企業の社長さんからのご相談です。
とにかく何でもいいから店に行って、店で困ってることをヒアリングしてきなさい。と言ってるんですが、「対応は難しい」とか「時期尚早」とか「予算がない」・・・といった報告だったので怒ったんです。
―――――その報告書があったらお見せいただけますか?
それが、ないんです。営業報告は何十枚もでてくるんですが、ムダな業務一覧となると、口頭の報告だけで、どこまで進んでいるかもさっぱりわからないんです。
―――――なぜ、出てこないのでしょうか?
たぶん、これを作ると、おそらく部門間で議論が活発におこなわれるでしょうから、そういったことをやり抜く勇気が必要になってきます。
しかし、人は変化を嫌う生き物。まだ教育が出来てない…とか、マニュアルの準備をしてから…みたいな、言い訳が出てきて、とにかく先延ばしにしようとする。そこが問題なんです。
前期は、値上げで多少蓄えもあり、賃上げもできました。
しかし、お客様の節約意識は高くなっていて、割高なものや、すぐ使わないようなものは、買わなくなっていて、ジリジリと売上は下がっています。
今のうちに、業務量を削減し2割~3割くらい低い人時数でまわせるようにしていかないと、競合企業との差は開くばかりです。
競合企業は、儲かるモデルをつくりどんどん出店してますが、うちは、そのモデルすらできておらず10年近く新店をだせていません。
ムダを削減したローコストモデルで、早く、出店攻勢をかけていきたいと思ってるのですが、どうやればいいのかわからないのです。
一見、とても穏やかな口調の社長さんですが、メガネの奥の眼光はからは、熱い想いが伝わってきます。
ーーーー非効率業務を取りまとめるというのは、簡単そうですがハードルが高く、社内でやろうとすると、現状の幹部社員はまずやりたがりません。
理由はシンプルで、自らやってきたものを否定しなくてははならないからです。そのため、信頼していた部下や側近が、「抵抗勢力の主」だった。というのは決して珍しいことではありません。
こういったことを乗り越えていくのに絶対必要なプロセスが、本部と距離をおく店舗でのヒアリングミーティングです。
なんといってもお客様に一番近いところで、お金を稼いでくれてるのは、店舗のスタッフの人たちであり、忌憚な意見を聞くのにはもってこいだからです。
しかし、こいったことをやったことにない人にやらせると、炎上して、収拾がつかなくなります。今は SNSが浸透していることから、「会社がまたなんかやりだした」とか「どうせ、口だけで何も変わらない」といった、ことが拡散して、収拾がつかなくなった事例がいくつもあります。
本部の役員部長や、鬼滅の刃の鬼の形相の幹部の方に、なんかのついでに店に行った時それをやりなさい。といっても、そもそも無理なのです。
一人一人から本当のことを聞きだしていくには、予め質問事項をちゃんと用意し、全力を投入していかなければできません。特に、大事なことは、ヒアリングを受けたあと、「参加して良かった!」「とても満足した!」「これから、会社は変わって良くなっていきそうだ」と明るい楽しい自分将来と、会社未来を感じてもらえるかどうかです。
ヒアリングをおこなっていく上で安心できる環境、質問手順、取りまとめ等の細心の注意を払わなければならないものだからです。
「たかがヒアリングに大げさな」という声が聞こえてきそうですが
言わずもがな、これで満足いく結果が得られようになると、実施店舗の空気は一気に変わります。これまで本部との軋轢や、働き方に対する不安や不満、何度言っても動いてくれない会社への怒り、変わる様子が手に取るようにわかるということです。
出てきた貴重な意見は、各主管部門に改善を促す大きな力となります。
プロジェクト事務局はこれらをブラシュアップし、明文化し非効率業務一覧表にしていきます。
ベストセラー本には一流のプロ編集者がいて、読者の心に伝わるようにように、何度も見直しが行われるから、読み手に感銘を与え意識変革を促します。
非効率業務一覧表も同じです。主管部門の読んでもらいたい人の心に伝わるように、わかりすい文書のための校正を何度も行っていきます。
非効率業務改善の意図が、読み手にきちんと伝わるようにできるかどうかが、成功の鍵を握るからです。
何を言ってるのかわからない、経費削減の一覧表をつくったところで、だれも見向きはしません。誰が読んでも、瞬時にわかる一覧表でなくてはダメなのです。
ヒアリングミーティングやってみたいが、炎上が心配?基本から学びたい?改善を加速させたい?という経営者のための、非効率業務改善のすすめ方は、7月セミナーで詳しくお伝えしていきます。
さあ、貴社では、まだ、ゴリゴリの業務改善で無理なコストカット改善を目指しますか?
それとも、信頼関係を深めていくための非効率業務改善を目指しますか?
著:伊藤 稔