今週の儲かる繁盛店の視点 第123話:「本業の稼ぎを示す営業利益の向上策とは?」
第123話:「本業の稼ぎを示す営業利益の向上策とは?」
「イトウサン、生産性向上をテーマにしてる展示会に行っても、店舗全体の生産性を上げるようなものがないんですよね」とあるチェーンの経営者の声です。
製造業や農業が生産性を競って技術革新がいたるところで起こっているにもかかわらず、小売業は生産性の「せ」の字も出てこないのは事実です。
「いや、うちはセルフレジ入れてますよ。自動発注もやってますよ!」というチェーン経営者の方もおられるのですが、
———全体でどれぐらい人時生産性が上がったのですか?と質問すると「え?それは調べてみないと、メーカーカタログ数値では、・・・」と皆さん言葉に詰まるんです。
「人がいないからその代わりにセミセルフレジを導入した」「発注の手間がかからないから自動発注にした」、といって様々な理由で、機器を購入されるのはいいのですが、そもそもその導入目的が中期ビジョンと繋がっていなければ、単発効果だけの高い買い物となってしまいます。
こういったものが今後、普及していったとき、導入して終わりであれば、競合以上の作業生産性にはならないわけです。
本来は人手でできるオペレーション改革を徹底的に進めながら、もうこれ以上は機械化、コンピューター化するしかない!と、行動してから購入を決定したかどうか?が、その後の成長の重要な鍵となってきます。
多くのチェーンで業務改善が進まない要因の一つは、こうした準備をせずに、部分対応で機械化をやってきた背景にあります。
気づけば、自営の人時生産性が低下し、テナント収入頼みになっていた。というのが厳しい現状です。
今や衰退産業の代名詞になっている、百貨店の歴史がまさにそれでして、地価の高い好立地な場所で売れる商品を並べて「売場スペース貸し」で収入を得る指標しかなかったため、自営部門の工夫による、生産性改善とは全く無縁の業界と言われてます。
「うちは接客を重視しているから食品スーパーのような人時管理は向いてません」と、いう声が聞こえてきそうですが、百貨店や専門店といえども、商品を並べたり、値下げ、値上、レジ、発注といった作業がウエイトを占めています。
その一つ一つの作業を直視しないで、売れ筋商品の不足だとか、マーケティング上手くいっていないと不満をもらす企業ほとんどは、コストを下げる仕組みを持たない、高コスト体質であるということです。
一方で、営業利益でしっかり3%以上出しているチェーンでは、販管費を常に低く抑える仕組みを備えています。
販管費の中でもコントロールしやすいのは人件費ですから、これをコントロールする指標をもって、作業量に応じた、売場の作り方が書かれた、作業指示書をつくっているのです。
そういった、指標なしで、店長に人時生産性を上げろ!と言っても「設計図なしで、新店を作れ」と言ってるようなもので、やりたくても出来ないのです。
今までどおりに「良い人材を集めればいい会社になる」「魅力ある売場づくりや演出をすれば売上があがる」「接客さえよければ売り上げは上がる」といったことを信じ、お金をかけ収入拡大を期待し、営業赤字経営を続けるわけです。
断っておきますが、これが必要ないと言ってるわけではありません。業務改革で打って出て攻めに転じるには、店舗の物量、作業量をムダなく、一つの指標をもち最小時間で運営できるようにすることが不可欠です。それがマネジャーの役割であり、担当の垣根を越えて、店舗の人時売上高を最大化させるのが、店長の役割となります。
これは、店舗型販売している全ての業種で共通したことです。
「作業指示書をつくれば、すぐにコストが下がるのでしょうか」ということも質問されますが、
———–手順とおりに進めて、戦略的に活用していけばこれほど生産性を上げることのできるツールは他にはありませんし、従業員が考えるようになることが最も大きな収穫になると。とお伝えしています。
小学校で九九から学び、高学年になって連立方程式や応用問題が解けるようになるには時間がかかります。
店舗は小学校ではありませんが、そのくらい丁寧にやらないと定着化に時間がかかるということです。
繰り返し学べる環境に身をおけば、成績があがるのと同じように、毎日それに触れる、興味を持たせるということが重要となります。
やる気が湧くまで準備をする。という言葉があるように、成功への近道は、その準備に時間をかけることです。
経営陣がプロジェクトを組んで準備をし、店長、そして売場のマネジャー、パート社員と落とし込んでいき、繰り返し使えるようになるには相応の時間がかかります。
また、導入するにあたって、標準時間であるとか、固定作業や変動作業といったものを切り分けていくのですが、全店統一というものでもなくチェーン店の数だけ標準時間があります。これはここでの詳しい説明は省きますが、ざっくり言えば、店舗規模が同じでも標準時間が同じ店は一つもないということです。
このように、生産性向上の道のりは長い旅となりますので、ただひたすら事務的にやって、続けられるものではありません。
ゴールを掲げそのロードマップを作り、どのタイミングで始めれば店舗と本部が喜びを共感をしあうことができるだろうか?ここを考えるのも経営トップの使命であります。
年度の終わりには毎年こういった、感動を共有できたらばどうなるだろうか?あるいは期首にこういった仕掛けをいれてみたら社員の顔はどう変化するであろうか?それがお客様への対応や営業成績の結果にどう影響するか?
小売業の生産性改善とは、お客様、従業員、会社を巻き込みながら、ゴールへ向け進み続ける実感ができる 至上最高のビジネスフィールドといえます。
さあ、貴社ではビジョンを掲げ、来年度のロードマップづくりにもう取り組んでおられますでしょうか?
今日も最後までお読みいただきありがとうござました。
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