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今週の儲かる繁盛店の視点 第573話:「今、景気減速が明白な中、小売チェーン経営に求められることとは?」

先日、コンサルティングが終わって、顧問先の社長さんと食事をご一緒させていただいたときのことです。

「先生、これから結構厳しい状況になってきそうですね?」 顧問先の社長さんのひとことです。

お話をお聞きすると、

「前期決算は、大手、準大手小売チェーンのみならず、中堅中小チェーンも増収減益になっています。
うちは、たまたま、人時売上に取り組んでいたので増収増益になりましたが、皆さんどうされてるのでしょうか?」

――――なぜ、そう思われたのでしょうか?

「おそらく各社さんとも、多くの品目が値上がりした分、人件費を増やしても良いだろうという、気の緩みがあったのだと思います。

しかし、結果は値上げをしても、賃上げ分を吸収することができなかった。

そこにきて、今期は、トランプ関税で輸出企業を中心に冬のボーナスは厳しくなるでしょうから、賃金と物価の好循環にブレーキがかかると思うんです」

おっしゃる通りです。

すでに、インフレ疲れのアメリカでは、昨年小売チェーン閉店数は7000店を超えていて、これは新型コロナ2020年の1万店に次ぐ高い水準で、今年はそれを上回る予測がでています。

こういったアメリカ国内経済を立て直す声が高まる中、トランプ政権は発足したわけです。

アメリカは戦後ドルを国際通貨として、各国を支援してきたわけですが、こうした背景から膨れあがる財政赤字と貿易赤字を立て直すことを最優先としています。具体的には、国防費の削減や輸出の強化といったことです。

そのため各国は、アメリカに頼らず自力で生産性を高めて利益が出せるようにすべきと、言っているわけです。

これは、各国の企業が筋肉質の体質に変わることを意味しています。

日本の政府としても関税交渉にあたっているわけですが、現状のままでは、景気は悪化するだけなので、

いまのうちにどの企業も、人時生産性をどう高めていくべきか?今すぐ、行動することが喫緊の課題ということです。

じゃあ、具体的に、中小中堅チェーンに何が出来るのか?というと・・・意外と思われるかもしれませんが、それは、前出の社長が言われたように、EDLP(エブリデイ・ロープライス)だということです。

理由は簡単で、人時生産性の高めることでしか、EDLPはできないからです。

ここで、申し上げるEDLPとは、PB商品を値下げするとか、卵や青果の一部を安くするといった“部分的”なものではありません。

また、大手チェーンのようにメーカーとの交渉力がないと出来ないといったハードルが高いものでもありません。

店舗あたりのトータル人件費を大きく下げると同時に、お客様が買い求めるナショナルブランド商品を他店よりも下げることで、買い回り点数と、絶対客数を増やすことで、

売上・利益を大きく伸ばすという戦略です。

具体的には、醤油やマヨネーズといったいわゆるナショナルブランドを中心に、ライバル店よりも安く買えるようにして、お客様の家計の応援をしていこうというものです。

そして、その原資は、EDLC(エーブリディ・ローコスト)として企業トータル人件費をさげることで生み出すしくみをつくっていくというものです。

だから、他のライバル店が、益々賃上げ問題で、増収減益もしくは同じような売上で減益になっていくとしても、この取り組みをやった企業だけは体力があって、お客様から選ばれる。他が撤退しても一人勝ちできる。ようになるということです。

言わずもがな、単に価格が安いというだけではだめです。前提としていつでも欲しい分の十分な商品があるかどうか?ということです。

いくら安くても、品切れで買えなければ、意味がないわけで、共働き世帯が増えた今、営業時間中は、全ての商品が完全に揃っていなければ、その期待に応えられないからです。

先日も、「うちの作業指示書みてほしいのですが・・・」とセミナーに持ってこられた社長さんがいらっしゃいました。

よく見ると、開店時間は9時なのに、青果は10時すぎまで品出し作業をやることになっていたり、惣菜も11時30分まで品出しをするようになっています。

そもそも、開店時間に合わせて100%品出しを完了するという視点のかけたものは十分な作業指示書とは言えません。このままでは、人時売上は上げることはできません。とはっきり申し上げました。

きちんとした作業指示書を作るしくみがあって、その通りにやれば、買い上げ点数も客数も増えるというものに沿って、人を配置していく。

これこそがEDLP戦略の基本だからです。

大手でなくても、交渉力がなくても、中小中堅のチェーンでも出来るというのはこうした理由からです。

さあ、貴社では、まだ、現状のままで何も変えずに進みますか?それとも、EDLPにかじを切り大きくライバル企業との差をつけますか?

著:伊藤 稔