今週の儲かる繁盛店の視点 今週の儲かる繁盛店の視点Vol.16「価格戦略で成長する会社と衰退する会社の違い」
第16話:「価格戦略で成長する会社と衰退する会社の違い」
先日 個別ご相談にお見えになったチェーン経営者の方からこんな質問をうけました。
「伊藤さん。価格戦略は運営面ではどう考えていけばよいのでしょうか」というご質問です。
—-競合価格など気にせず、本部の指定価格で売って売上を上げることです。とキッパリと申し上げてます。
「しかし、競合がEDLP(毎日低価格)でやってくると結構堪えるのです」
何を根拠に影響がでていると言われているのかよく分かりませんが、私の前職は本家の米国流EDLPの会社でしたが、勝つことのできないスーパーは日本国内に数え切れないほどあったのですよ!と申し上げると。大変びっくりされます。
結論から申し上げますとそれに勝つ方法は 価格を引き下げるのではなく、お店の運営方法のグレードを上げることです。
お客さんから見ると、「あなたの店は その程度の売り方しかしてないのだからもっと価格を下げて売れ!」と言われてる訳です。
安いからあたりまえという「店の匂い」を出すと、安売り顧客を引き寄せる一方で、今まで来てくれていた普通の価格でいいというお客様は減っていきます。
口にこそ出しませんが、大多数のお客様はちゃんとした安心した品質とサービスのあるお店で買いたい。のです。
逆に、「ちょっといいものを売る店の匂い」をだすと普段買ってくれるお客様にプラスして、そういうお客様の層は確実に増えてきます。
ちょっといいものの例として、味にこだわりのある老舗銘店商品を売るのには、品質サービスの徹底しているだけではなく、その商品特徴をちゃんと説明できなければなりません。
商売として「商品知識をもって、考えて、練習して、お客様に信頼していただく」方法を提供していかないと陳列しただけでは1つも売れないのです。
頑張って美味しさを伝えそれでも賞味期間が近づけば、最後の最後の手段として値引き販売をすることもあるわけです。
こういった努力はお客様も見逃しません。デパ地下が 強い理由はそこです。
ここで、分かるのは どんなに頑張っても売れない商品が必ず存在するということです。それを老舗メーカーにちゃんとフィードバックして差し上げることが重要です。
味、容量、パッケージデザイン 等々をメーカーに伝えそのパイプを太くしていくことが 新しい売り方を見つけ出す力になって必ず返ってくるからです。
これに応えてくれる メーカーを見つけだし、共に何処までいっしょに成長できるパートナー探しこそが商品部の仕事です。
これは一例ですが、スーパーの平場でも売りこなす力がつけば、自家需要だけだなくギフトでも使ってくれるわけで、一世帯あたりの年間購入金額が上がります。
「ちょっといいもの」であれば、お客様は今は購入できないけど、将来はここで買いたいとか、クリスマスとか、父の日は絶対ここ、という大切な人へのプレゼントの揃う店と認識してくれます。
大事なことは、
高級品やギフト品ばかりを売れとういうことではなく、「お客様が大切な人と過ごす楽しい時間をイメージしそれに必要な 食材 住居 衣料品を通して年間いくつ提案できるか」だと言い切れます。
これには、決して完成形はありません。常にそういったことにチャレンジできる店づくりを してこそ商売間口を広げれるからです。
低価格戦略は「安いのが正しい」でありここが終点です。そこから先は 従業員はもう考えなくていいんだという「思考停止」になります。
思考停止になると、良いサービスとか付加価値を高めるお店のあり方とかが、まったくイメージできなくなります。
バイヤーも付加価値をメーカーに求めなくなります。どこまで原価が下がるか?この機能いらない、品質はカットして、下げてくれの一本やりです。
さらにやっかいなのは、原価が下がらないことを「売れないいいわけ」にする運営部長や店長が異常繁殖します。
そもそも、商品部が価格を下げてくれないから「店長としてもう打つ手がない」という言い訳をしているだけなのですが、店長がこうなると社長も弱腰になるのです。
社長自身が鵜呑みにされてること自体が問題でして、それに対して「差益率下げてもいいから利益は確保しろ」と言ってやらせてみればいいのです。
リストラをして、価格を下げて、思考停止従業員をたくさん生み出して・・・それを実現されたときに、そこに従業員の幸せがあるのか?
その「悲惨な状態」を経営者としてはっきりイメージできるかどうかです。
安売りやるんだったら、従業員を半分にして、一切のサービスを無くせばいいのです。
その極限を知らない状態で、「価格が下がらないから・・・」などと言っている店長に「価格じゃない?」と言っても 説得力に欠けるわけです。
私はその渦中で陣頭指揮を取ってきましたが、血を吐くような経験の中から、こういう中途半端な経営こそもっとも危機的な状況にあると考えています。
イオンの傘下のダイエー看板が消えることなりましたが、イオンは本体で利益がでない価格戦略をとってきた結果、ダイエーの生血を吸ってリストラ延命措置に踏み切ったわけです
その先は、イオンは生き延びても、これからリストラされるダイエー従業員や、ダイエー閉鎖店舗近隣住民の生活を豊かにすることはできないのです。
巨大大手が儲からない店舗を量産し、拡大M&Aを繰り返してきた結果です。
少子高齢化、労働人口の減少は海外移民の受け入れは拡大することになります。地方の元気な農業団体は既に外国のお嫁さんを積極的に受け入れ過疎化を回避しています。
これからはさらにグローバル化が進み外資小売業も日本に参入してきます。
どのような外資がきても、国内大手の手法と変わりはありません。だからこそ、売る力の十分な準備をしておかないと大手と同じ切り詰める経営になってしまうのです
繰り返しになりますが、
商品には原価があります。それを割り込んで売り続けることはできません。
他の経費を削減しそれを引き下げる店舗運営の仕組みづくりは、また 別の機会にお伝えしますが、バッサリコストを削って安売りする高度成長期モデルが存続できる時代では終わりました。
人口減はマイナス面だけでなく一人あたり食品も住空間もゆとりある時代となります。
そのゆとり時代を大切な人と過ごす楽しさを 提案できる店づくりこそが次世代の売る力の根幹になるわけで、これを外して価格戦略を立ててみてもなんの意味もありません。
この考えを組み立て社内で合意をとり1つの方向に向かう舵をいち早くきることが個店力最大化となり、5倍 10倍 30倍とレバレッジが効かせられるのが貴社チェーンの最大の魅力となります。
さて、貴社のでは、将来の為に価格戦略をどう描きますか?
今日も最後までお読みいただきありがとうございました。
●「コラム更新をお知らせいたします」
ここから簡単登録。メールアドレスをご登録頂くと、コラムの更新時
にお知らせメールをお届けします。最新号をお見逃しされないために
是非ご登録ください。