今週の儲かる繁盛店の視点 第175話:「失敗を糧に突き進むチェーンと、何もしないリスクを冒すチェーンの違い」
「先生 人が集まらないんです」とあるチェーンの社長からのご相談です。
――――どういう基準で採用人数を決めてますか?とお聞きすると、
「欠員補充がメインですが、人時売上は活用出来てません」とのこと
――――言うまでもありませんが、人時売上が活用されていなければ、実態把握できてないわけで、その改善は絶対にありえません。とキッパリ申し上げました。
人の採用の基準を持たずに、採用を続ければ、上がる単価に伸びない売上の状況下で、減益となるのは火を見る明らかです。
まずは、手計算でもいいので、人時売上を出すのは絶対に必要であると断言します。
一方で、少子高齢化の進む中、ここ3カ月で、毎月人時売上昨年比を2桁以上伸ばし続けているチェーンがあります。
実際にその店に行ってみると、品切れや商品ロスも減っている。売場は過剰なプロモーションコーナーや通路のでっぱりが減り、買いやすくなっていて、これは生産性が変わって当然と納得できます。
そんなに人を減らして 売場は大変なのではないか?と少々心配気味であったものの、とても気持ちよく元気にだれもが働いている。
「一人一人にまで、人時売上の意味を伝え、それを変えていくための工夫をしています」と社長から売場主任クラスまでが同じことをいうのには驚きました。
人がいないことを、売上低迷の理由にする経営者と、一方ではこれは千載一遇のチャンス、少数先鋭で回る仕組みづくりに変えていこうとされる経営者では、生産性で2桁以上の違いがハッキリと表れてきた事例と言えます。
社長に今後、数値は維持できそうですか?とお聞きすると、「努力したことを結果に反映させることができるようになったので、これを続ける努力をしていきます」と謙虚で自信に満ちた言葉で答えてくれました。
こちらのチェーンもかつては、あの手この手で、新規商品や催事をもうこれ以上できないというくらいまで、パンパンに盛り込み売上を維持してきました。
しかし、このままでは限界があることに気づき、個別の作業がホントに儲けになっているかどうか?特定の人だけの負担になってるのではないか?と疑問をもたれ、こういった仕組みに着手されました。
安全安心 地域顧客満足 一人一人を尊重 等々、企業理念を掲げる企業は多いですが、それを実現させる行動が毎年 四半期 月次 週次でそれが落とし込まれ 一人一人の行動になっているかどうか?
経営者が本気でこれに取組まないところは、経営と現場のベクトルがズレていて、そのズレがその企業の業績低迷の結果となって表れてきます。
衰退企業の典型は、経営者が経費率と会社全体の売上の話しかしません。経営者が売上という外面だけを気にする、殿様商売を続ける限り、永遠にこの「人時」という数字と関わることはないでしょう。
しかし、謙虚に現場に足を運び、日々店舗やお客様の声に耳を傾けておられる経営者は必ず、この「人時」にたどり着きます。
なぜならば、現場で物が売れていくには、どういう条件が必要なのか?これを数値化し把握することの重要性に気づいておられるからです。
現場から経営全体を一言で語れる言葉をもち、社員を鼓舞し、社員と地域の幸福を実現させるのは経営の役割です。その為には、本部と店舗がKPIをもって、時間ごとに行動できる仕組みが必要です。
それをフル活用し、本部と現場のベクトルを一致させていくのは経営の責務です。
「うちには、そんな指標がでてくる仕組みが無いから難しい」という声が聞こえてきそうですが、
どこでも、使う指標は決まっています。現場からすれば、これが知りたかったという指標であることは間違いありません。
反対に、この数値がなければ、店長や運営部長は何もできないはずなのです。
詳細は セミナー等でお伝えしておりますが、まずは、自社の人時売上を算出し、それをどうやって向上させていくか?経営として真剣に考える時間をつくることです。
売上でも客数でも なんでも同じですが、数値として顕在化させることで、それを変えていくにはどうすればいいのか?という思考が動き始めるものです。
新たな指標をもって、取り組みで失敗することは、成長への道を見つける一歩です。むしろ 今、生産性改善に何も取り組まないリスクこそ最大の失敗であるといえます。
さあ、貴社では どちらの道を選ばれますか?
今日も最後までお読みいただきありがとうございました。