今週の儲かる繁盛店の視点 第199話:「販管費高止まりで、気をつけなければならないこと」
「先生 人件費により販管費が高止まりしてしまっていて、売上が上がっても利益が・・・」とあるチェーンの経営者からのご相談です。
お聞きすると、これまで、独自の強みある商品力のおかげで、順調に売上を伸ばしてこられました。気付けば、人件費も上昇をつづけ販管費が高止まりになっていたそうです。
―――その売上上昇分には、何人時必要なのか、設定されていますか?とお聞きすると、
うっ!そこまでは・・・と言葉につまります。
「売上が上がったので、人件費が上がった」ということと「人件費をかけて売上を上げた」というのは、全く意味が違がってきます。
前者は、売上が上がった結果をみて、コストがかかっていた話です。後者は、仮説を立てて意図的にコストをかけて売上を上げた。ということになりそこには、経営の意思が反映されています。
先のチェーン企業も経営の意思をもって、コストをかけていたからこそ、今まで通りのやり方では、人件費単価が上昇に伴い販管費が高止まりする。ことに気づかれたわけですが、問題は、どこから手をつけていくか?ということが重要となってきます。
そのためには、売上と人件費をひとつにまとめた、人時売上をその業務改革の指標のひとつとして使っていくことになります。
人時生産性の基となる、人時売上の計算式は 売上高÷人時で算出されます。
よくあるのが、「人時売上を上げるには、売上を上げればいいこと」と簡単に言われる方がおられます。
冷静に考えてみればわかることなのですが、これまでに、既存店前年売上クリアを3年以上続けたことがあるかどうか、自問自答してみてください。
と申し上げておりますが、果たして、皆さんの会社ではいかがでしょうか?
3年連続というとかなり絞り込まれてきますが、つまり、毎年売上を上げつづけることは、ハードルが高く、難しいということになります。
言い方を変えますと、現実的に、コントロール出来ない「売上高」を無理に上げようとしますと、人時売上高を上げることが出来ないばかりか、販促強化により人時が増え「人時売上」が下がってしまっている企業の方が多くなっています。
一方で、人時売上の分母の「人時」を減らしていくことで「人時売上」をアップさせていこうという方法です。
こちらは社内という手の内で進めることができるため、これにより人時売上アップは可能となります。
ここでは、利益になっていない業務を探し出し、利益の出る作業に再配分していくことが、主な取り組みとなります。
例えば、納品のない日も同じように人員が張り付いていたり、在庫が多いためバックヤード整理に何時間もかかっていたり、値下げ処理に何時間もかかっていたりと、売上のむすびつかない作業だけ合わせただけでも、かなりの時間をかけていることがそこからは見えてきます。
「そんなことが、発見できるようになるのか?」という声が聞こえてきそうですが、
こういったことは「作業指示書」を導入していくことで、一目瞭然となります。
なによりも大きいのは、目先の売上を狙ってチラシの企画や部数を増やしたり、ポイントセールといった販促策の収支結果がどうなっているのかも知ることが出来るという点です。
多くの人時のかかる、チラシの増加やポイントカードの倍増に歯止めをかけ 日々の標準的な業務の流れで、利益が出る店舗経営に軌道修正されていくという効能もあります。
それと並行し、総業務量を減らしていくことになりますが、いざ、はじめるとなると、どこから減らすべきか皆目見当がつかないのです。
そこで、それぞれの業務が利益になっていりかどうかチェックしていく為に、業務改革プロジェクトを設定し、業務の棚卸を実施していくことになります。
実際に調べたことのある方ならお分かりのことと思いますが、こういった業務棚卸を通じて、販促強化のチラシ訴求企画が、全体の一割の売上をあげるのに、全体の三割以上もの人時を毎週かけていた赤字業務であった。
という事実が浮き彫りにされた事例もあり、その見直しに取り組んでいる企業もあります。
このような、赤字業務を減らし、総業務量を減らしていくことは、企業規模に関係なくどこでも取り組むことが出来るわけです。
むしろ店舗数の少ないチェーンの方がフットワークがいいことから、如実にその効果は表れています。
1年後には、気づけば、経常利益率で、競合他社の前に躍り出ていた。というのは良くある話なのです。
少子高齢化、労働人口の減少により、売上は減り続け、人が集まらなくなっています。
そういったなかで、人件費、原材料費の上昇は留まるところを知りません。
さあ、貴社でも、このまま販促強化を繰り返しますか、それとも標準体で毎年利益更新できる、収益パターンをここで築いておかれますか?
今日も最後までお読みいただきありがとうございました。
レイブンコンサルティング代表 伊藤稔