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今週の儲かる繁盛店の視点 第203話:「店舗の人時計画力を強くするには」

「先生、今年は手始めに、全社員の年次有給休暇を年間最低7日とることにしました。GWでも連休をとらせます」とあるチェーンの社長の一言です。

いいですね~ 来年度は、生産性を上げてもっと取れるようにしてください。とキッパリ申し上げました。

こちらの企業、これまでは、年次どころか管理職は、夏休み冬休みも正直まともに取れていないのが実情でした。

社長としては 以前から「休みなさい」と言ってはいたのですが、それ以上に、やることも多くて、残業の付かない店長や管理職が、その穴埋めのため休むことが、出来なかったのです。そうなると、その下も休みづらくなりますし、本部まで休めないことが、日常的に繰り返されていたのです。

社員の中には、休みをとると家で「なんで休みなの?」と奥さんに、小言を言われるので会社にいたほうが気が楽。という人も結構おられるようですが、それはさておき、

そもそも、なぜ、休みをとることが出来ないか?ということを 現場任せにしてしまい、経営が言うべきことを言って来なかったことに問題がありました。

たしかに、本部スタッフや店長としても、今まで、とってはいけないと言うことは一度も言われたことはない。といっておられましたが、これが問題でして、

「とってはいけない」ではなく「とらなくてはいけない」と言えるしくみにしなくてはいけないということです。

最近は、女性の活用ですとか、育児休暇といったことを 行動計画として、HPに掲載して宣言する企業も多く見受けます。

それは、女性の従業員だけの問題ではなく、男性社員の問題でもあって、男性が早く帰り、家事や育児をすることが、その手助けになることは、いうまでもありません。

企業側がそういった、仕組みに変わらない限り、その家の女性の労働負担は減らず、その能力を企業で活用することは、出来ません。

「それが 出来れば 苦労しません」という声が聞こえてきそうですが、

前出のチェーンが、休みをとれるようになったのは、特別なことをやったわけではありません。

作業指示書によって、ムダを無くし、その上で自社の中で足りないものを埋めていく、手順で進めるうちに、気づけばそのステージに上がっていた。という感じです。

これまでは、作業指示書といっても、個人契約にもとづき、人員が割り振られていたものでした。表向きは指示書でも、中身は人に仕事が付いた、個人スケジュールの一覧書にすぎません。

その中身は、売上高の高い日に人が多く配置され、少ない日は人数が少ないという、配置シフトとなっていて、とにかく感覚的に頭数で、売場ごとに何人いれば回るといった、常に多めに人をもつ方式で運営されてきたのがわかります。

ところが、最近ベテランの定年退職や、若年労働者の減少から、多めにひとを持っていても、必要な時間に人がいない、状況が各店で起っていました。

なんとかここで手をうたなくてはと、社長の号令で、プロジェクトをスタートさせ、作業指示書に基づいた、仕組みづくりを開始ししました。

祝日だから人が必要といった、固定概念から解放され、日別に、どういった人員配置でいけばいいのか事前に予測がだせるので、無駄のない人員配置ができるようになったのが、一番大きく変わった点と言えます。

これまでは、本部応援がなくては、間に合わない日が、年に何日もあったのですが、今はそれもなくなりました。

そうなると、本部スタッフも、予定通りに休みが取れるようになるので、本部と店舗の共通ルールとして 年次有給休暇取得拡大に踏み切ることができたといえます。

今まで、契約シフトからくる「人出不足状態」を補うやり方でやってきたものを 一旦リセットし、商品の納品数量に合わせた人員配置・採用計画をたてることで、意図的に「人が余る状態」を作れるようになったのです。

さらに、無理な出勤や残業を要請することがなくなり、個人の負担が減ったことで、離職率が改善されました。予想外だったのは、これにより 近隣競合や異業種からの転職応募者が増えてきたということです。

お子さんが熱を出しても、休みが取りずらい状況の競合チェーンの職場を辞めて、応募されてきた方や、小売は初めてだけど、こうして作業指示書があるなら働いてみたいという食肉工場の技術者といった、異業種からの転職組が、いまでも増えています。

なんでもそうですが、強みを作るために、得意なことだけをやっても、弱い部分がありますと、そこに引っ張られ、なかなか強みが活かせないものです。強みづくりには、まず、どこが弱いのか?を知ることが重要といえます。

得意な分野で強さを発揮するには、準備や手配にも時間がかかります。そのために、弱い部分に手間がかからないように補強をして、おくことが大事なのです。

先のチェーンの場合、休みが取れないのが、人を集められない弱点となっていました。

だからといって、休みを安易に与えてしまえば、今度は店が回らなくなってしまいます。そこで、日々の商品量にあわせ、人時が調整できる仕組みに投資することで、余剰人時を戦略的に生み出し、業務改善に引き当てることができたといえます。

そのうえで その余剰を 年次有給休暇というカタチで社員還元しているわけです。あんなに、人がいない、集まらないといって、厳しい顔をされていた、人事部長も 別人のようににこやかになり、キャッシュアウトのないこの賃上げ効果の高さに、喜んでおられます。

店舗の人員計画の強みをつくるには、まず、どこが弱みなのかを知り、そこの弱い部分の穴埋め投資をおこない、このチェーンのように全体の生産性をあげていくサイクルをつくっていくことになります。

貴社でも、人時計画力を強くし、今年度の社員の年次有給休暇取得日数を増やし、収益力をアップを実現させてみてください。

今日も最後までお読みいただきありがとうございました。


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