今週の儲かる繁盛店の視点 第204話:「生産性を上げる仕組みを持つチェーンと無いチェーンの違い」
「先生 人時の活用方法がやっとわかりました。もっと早く気が付いていれば、結果は全く違うものになっていたと思います」
とあるチェーン経営者の一言です。
―――いえいえ、社長の素早い決断があったからこそ、結果を変えることができたのです。とお伝えしました。
こちらのチェーンは、自社でLSPを作りやってこられたのですが、中々定着出来ず、人時も改善されてないことから、ご相談にお見えになりました。
売上高は、毎年更新させることは難しいですが、人時売上は、原則どおりにやれば、誰でも結果を変えていくことはできるものです。
結果がかわらないのは、どこかやり方が違っているからに他ありません。
本で読んだり、他社の情報を聞きながら、まねてやっても、そこには理想と現実のギャップがあり簡単にはいかないものです。
なんでもそうですが、はじめてのことをやるときは、体系的なものがありませんと、どうしても稼働させるだけで手いっぱいとなってしまうのです。
結果が出ないため、先導する側も教わる側も、疑心暗鬼となって、頓挫してしまい、弊社にご相談にお見えになる方は後を絶ちません。
LSPをはじめとした、清掃、保守、物流、改装・・・・といった内製化事業に数多く関わってきましたが、成果をだすには、間違いを極限まで減らしてから拡げる。という大原則があります。
批判を恐れずハッキリと申し上げますと、失敗したくなければ、いきなり自社だけで、やらないということです。
資金が豊富にあって10年かけて、ゆったりやるのであれば、それはそれでもいいと思います。
そんな企業は存在しないわけでして、遅くとも3年以内に結果を投資回収していく計画でなければ、実用化できないからです。
清掃などを内製化するケースでも、作業のやり方ひとつひとつを専門家に依頼し聞かなければ、知ることはできないことは数え切れないほどあります。
店舗の床掃除ひとつとっても、除塵でゴミをとる工程をとばして、自動洗浄機をかければ、床のワックスをはがれ黒ずみとなり3カ月持つはずのワックス洗浄が、一回でダメになってしまいます。
こういったことは、清掃機械の取説にも、ワックスなどの溶剤の注意書きのどこにも書かれていません。
その手順や注意点がわかっているから、清掃専門業者は、時間内に一定基準の品質を仕上げることができるわけです。
これを、内製化するには、そのノウハウを知るために、専門家に教えを乞わなくてはなりません。
実際にやってみると、お客様と接触しそうになったり、上手く機械が扱えず、自動洗浄機が目詰りを起こし、想像していた時間の2倍3倍かかり、教わった通りには出来ないものです。
内製化していくときはこのように、責任者自らがこうして実務業務に入り込んでやってみることも、絶対に外せない点です。
専門家の指導説明を受け、実際にやってみて机上では気づかない「間違いやすいこと」にはじめて遭遇することができます。
それにもとづきマニュアルを再整備していくから、全店展開がスムーズにいくのです。
LSPの活用方法は、清掃よりいくらか高度になりますが、やり方手順は同じです。
定着させていくためには、ノウハウを知る専門家を据え、基本から理解し実際に活用するところから始めていくことになります。
活用するのは 店舗運営本部であり、店舗ですから、その人達が実際に扱うことで、問題点が浮き彫りになります。それを修正し、マニュアルを作っていくことになります。
ここまで、お伝えして、さあスタートとなるわけですが、そこでも作業の切れ目であるとか、どこまでをひとくくりにしてカウントするかとか、品出しと加工業務の区分はどうするかという質問は、山のようにでてきます。
先の、チェーンはこうした準備を飛ばしてしまい、契約時間に合わせて、仕事を割り振りしたため、逆に人時が増える事態が発生し、運用休止状態が何カ月も続いていました。
最終的には、自社化を断念し、外部発注にすることで、再スタートをし、人時売上向上にこぎつけることが出来ました。
LSPというのは、TVやパソコンのように、スイッチ一つで扱える家電製品とは違います。
むしろ住宅新築工事に使われるパワーシャベルの扱いに似ていると言えます。
車両系建設機械、大型特殊の免許こそ必要ありませんが、その扱い方の実技訓練はもとより、作業計画の作成、作業指示と連絡、調整が必要となります。
LSPも同じで活用実技訓練だけでなく、作業指示書に基づいた連絡、調整は必要です。
作業指示書を作成するにも、まず現状の店舗運営の流れを調べておかなくてはなりません。そのために、業務の棚卸から始めることになります。
商品の棚卸は、どこでもやりますが、業務の棚卸をやっているところはありません。
しかし、売上比率10%以上もの高い人件費コストがかかっている、業務内容を明らかにしなくては、どこに問題があるのか、見当をつけることもできません。
そのためには、各業務の項目を「その企業の言葉で」、明文化していくことがその第一歩となります。
今、「その企業の言葉で」と申し上げましたが、大事なことは、業務項目名の意味は、同じ企業でも売場によって全く違ってくるからです。
加工食品の「品出し」と言えば、荷受けした商品を売場に移動し、箱から出して棚に並べる作業となります。
鮮魚売り場の「品出し」となれば、加工、調理、値付け、陳列というふうに、流れとくくりが違ってきます。
同じ店舗内であっても、言葉が違うので、売場毎に使われていることばで、明文化することがポイントとなってくるのです。
先のチェーンでは、必要な調査がなされていなかったり、周囲の状況を確認しながら目的がぶれないように誘導する者がいなかったため、業務項目の定義が曖昧でした。
そのため、LSPとは名ばかりの単なる作業シフト表づくりに時間を掛け続けていたのです。
このままでは被害が広がる一方なので、自社開発のLSPを断念していただいた経緯があります。
大事なことなので繰り返しますが、作業シフト表と作業指示書は全く異なるものです。異なるツールを時間をかけ使い続けることは、悩む時間、手待ち時間を発生させ、生産性の低いことを続けることになります。
この事実を社長に申し上げ自社化から外注の決断をしていただきました。その後投資効果が出始め 笑顔の社長が見ることが出来て、本当にうれしく思っています。
チャレンジして、上手くいかなかったことは、失敗ではありません。
むしろ、早い段階で、上手くいかない方法を知ることが出来、上手くいく方法に切り替えたことで、一気に生産性を上げ、成功に近づくことができたといえます。
さあ、あなたのチェーンでは、利益に繋がる業務改革について、準備をすすめておられますか?
今日も最後までお読みいただきありがとうございました。