今週の儲かる繁盛店の視点 第212話:「人時生産性改善の陥りやすい罠とは」
「先生、売上が伸び悩み、どうも、イマイチ人時売上が上がらないのです」先日お見えになられた、とあるチェーンの経営者からのご相談です。
ハードディスカウンターが、価格訴求のチラシを打つようになり、周囲が刺激され地元のチェーンも価格を下げてくるとのこと。
――――売上を上げることだけを目標にされているうちは、人時生産性は上がりません、とキッパリ申し上げました。
理由は単純で、人時生産性は、売上よりも人時に左右されるものだからです。
ダイエットをしようと決めた人が、「世の中に甘いものがあるから、痩せられない」「人が美味しいものを勧めるから、つい食べてしまう」「運動すれば食べてもいい」という人を見て、どう考えますか?
恐らく、「楽な方法を見つけて行動しない人」「自己管理が出来ない人」「勝手な自己解釈をして結果をだすことを諦めている人」と思われると思います。
チェーン経営も同じで、楽な売上改善指示を続ければ、各自が一番売れた時の感覚で商品量を発注し、商品調達にしても、人件費にしても、水道光熱費にしても、売上が最も高い時に合わせ全てを手配します。
特に、ベテラン従業員の勘や経験に頼れば頼るほど、その傾向は顕著に表れ人件費と在庫が膨らみます。
しかし、一旦増えたコスト減らすとなると、社長が、口をすっぱくして、注意しても、なかなかできないものです。
ダイエットと同じで、なんでも増やすことは、簡単ですが、減らすことはとても難しいといえます。
人の行動は不思議なもので、一瞬でも目の前の数値が上がったことを味わった経験があると、その光景が脳裏に焼き付き、同じことをやれば、同じことが再現できるという間違いを繰り返します。
企業によってやりかたは様々なので、これらをとやかく、いうつもりはありませんが「もうそろそろ、そのやり方おやめになったほうがいいですよ」と申し上げています。
断っておきますが、決して売上をあげなくていい、と言ってるわけではありません。
少子高齢化、人口減少に突入した現在、ただでさえ上がりにくい売上高に固執することは、利益獲得の効率の高いやり方ではない、と言うことです。
人口減少したとき、人時生産性を上げるには、効果の薄いものを足していく、足し算の方式のやり方から、それを、止めていく、引き算方式にすることで利益獲得の勝率を上げるやり方に変えていくということになります。
理由は単純で、労働人口が減ってる中で、儲けのないものに、時間を掛ければかけるほど、儲かるコトをやる時間が無くなるからです。
例えば、「これまでチラシは打つのがあたりまえ」とされてきた特売チラシ1回の訴求にかかる、その商品調達コストひとつとっても、通常より発注量を増やすわけですから、物流、在庫は全店で増大します。
まして、完売とならないことを承知の上で、その余分な商品の陳列、積み替え移動、価格チェック、POPの取り付け取り外しにかかる人件費は、売上に関係なく毎回発生していきます。
経営として、儲かるかどうかわからないことに、商品調達費や人件費や物流費といったお金をかけ続け、年間52週ムダを垂れ流し続けてきたことに気づいているかどうかということになります。
一方では、90%の在庫でそれを完売するような商品発注をするしくみをつくり、それを現状の80%の支払いで済むようにすれば、残る利益は同じになります。
そして、そこで生まれた、余剰人時を使って、新規利益の創出にとりくんでいる企業もあります。
「そんなことしたら、縮小均衡になってしまうのでは」という声が聞こえてきそうですが、
――――貴社のガチガチの人員体制の中で、新しいことをやるための組織づくりには何人だせますか?とおききすると、
みなさん 「うっ」と言葉に詰ります。
なんでもそうですが、不採算事業を整理し、そこでうまれた資金を新たに儲かる事業に再投資するのが、儲かる企業の共通点です。
小売りチェーンも同じで、店舗や本部の非効率な業務を、塊としてゴロンと取り出し、それを利益を生む業務に再投資していくことになります。
つまり、社内の非効率業務をやめさせ、ガチガチな状態の店舗や本部業務に、意図的に余剰時間をつくり、生産性を上げることについて作戦をたてる部門をつくり、人時生産性を引き上げていくことになります。
例えば・・・・時間のかかる作業を手作業でくりかえしやっていたり、縦割り組織のために応援したくてもできなかったり、先のように、チラシによる過剰人員がかかっていたり、といったことは、そういうことを経営が考え実行する組織やプロジェクトなしでは、泥濘ともいうべき、落とし穴から抜か出せないからです。
詳しくはセミナー等でお伝えしておりますが、これまで様々な取り組みをされ人時生産性に興味をおもちの経営者の方であれば、そういったことを見つけることができます。
大事なことは、目先の業務改善ではなく、経営が主体となって進める、本業の業務改革として改善の泥濘にはまらないようにすることです。
さて、貴社では、人時生産性を上げるのに まだ、売上高にこだわりつづけますか?それとも、利益視点で効果のあるものに集中する仕組みで動き始めますか?
今日も最後までお読みいただきありがとうございました。