今週の儲かる繁盛店の視点 第223話:「変革スピードによって、成功できるチェーンと失敗するチェーンの違い」
「先生、「人時売上」は出すようにしているのですが、これをどう活用していけば生産性を上げられるのでしょうか?」
先日、相談にお見えになった、とあるチェーンの社長からのご相談です。
――――はやる気持ちはわかりますが、そこで出てくる人時売上高は、正しい数値ですか?
「えっ?それは、どういう意味でしょうか?」
――――売上を総労働時間時間で機械的に割って算出するまえに、勤務時間は正確にカウントされていますか。ということです。
「7割ぐらいはちゃんとやっていると思っていますが…」
――――それでは、ダメです。管理職も含め100%できなければ、それは人時売上として全く意味を成しません。とキッパリ申し上げました。
理由は簡単で、そのローデータとなる、総労働時間が、当日7割しか確定されていなければ、正しい人時売上が出ません。数値が正しく出ない企業の業績が自然に改善することは決してないからです。
人時生産性が上がるようになりますと、企業業績があがり、個人給与が上がります。無駄な指示を本部が出さなくなりますので、本部と店舗が一枚岩となり生産性向上に協力し合うようになるからです。
各個人が 自分の業務に集中することで業績が上がる為、従業員満足度が向上し、益々社員は一生懸命に働くようになります。
「そんな、理想的チェーンがあるのでしょうか?」という声が聞こえてきそうですが、
これは、前職の総合スーパーで、私が営業統括を担当していたときに実際に起こったことです。
一度このスパイラルに乗りはじめますと、収益力が高くなり、その効果は5年~10年と発揮し続けるので、善循環が始まります。
社内では、数値目標が達成されることが認知されることから、幹部社員は執行計画をキチンとたてるようになります。
当然ですが、その計画が何らかの理由で、下振れしそうになった時の対策まで考えることから、高い確率で経営目標を達成することが出来るようになります。
こうした準備の大切さを、失敗から学び、「成功する思考法」や「利益創出手法」そのノウハウを有する、外資グローバルのメンバーと関わり実務で動かしてきたからに他ありません。。
かつては、日本の横並び意識の中で、同業他社に気を取られ、ノロノロスピードから脱却することが出来ませんでした。
しかし、グローバルチェーン各国の桁外れの生産性の高さを目にすることで、チャンスはあるということを確信できたのです。
当時、前職のチェーンは、同規模の各国のチェーンと比べると、その人時生産性はどこの国よりも低いものでした。
しかし、その1年後に、世界最大級グローバルチェーンのなかで世界一の人時売上高をだす、チェーンになったのです。
その結果、業績賞与が毎年上がり、それを目標に、改善が進み 個人の貢献度があがることから、従業員満足度が上がり、それによって、新規採用に優位に働き、優秀な人材を優位に確保できるように変わったのです。
日本しか、見ていませんと、いろいろなことで、遅れをとります。例えば、今、ワイドショーのトップニュースにでてくる、○○ハラスメント事件という社会問題も、日本にしか目をむけていませんと、他では?どうなの?というようなどんぐりの背比べのような対応策となり、いつまでたっても同じことがあちこちで繰り返されます。
グローバルの視点で考えれば、ハラスメント行為は、国境に関係なく、全てアウトは当たり前のことで、「そんなことに 時間やエネルギーを費やす暇があるなら、生産性改善に力をいれなさい!」というのは10数年以上前に、すでに周知徹底されていました。
これは、サービス残業や長時間労働の問題も同じで、「小売サービスチェーンだからといって、個人に依存しきった上に成り立つことであってはならない」と当時グローバルチェーンから、厳しく指導を受け、それが徹底した業務改善の始まりであった、ことを昨日のことのように思い出します。
「なにもそこまでやらなくても…」と正直思った面もありましたが、ここ数年で、その、グローバル基準が、日本でもようやく話題になってきたといえるでしょう。
人時売上高も同じで、国の働き方改革の名のもと、製造業ではその指標で動き始めてはいるものの、小売りサービス業では、まだまだ取り組んでいる企業は少ないのが現状です。
「うちは 地方のドミナントチェーンだからグローバルとはあまり関係ない」という声も聞こえてきそうですが、
インターネットやSNSが普及した今、こういったことに注意をしておきませんと、いつ、どこから、内部の情報や告発がされるかもわからないわけです。
セクハラ、パワハラ、ブラック、ムダが多く残業が多いと言った情報が出た瞬間、企業の信頼は失墜します。
冷静に考えてみるとわかることなのですが、こういた諸問題は、人時生産性を引き上げていくことと全てが共通しており、人時生産性への取り組みをキチンとやることで、そういった問題は同時解決できます。
人時生産性の視点から見ても、ハラスメント、サービス残業、ムダの多い業務による長時間労働は、全て悪であるということには変わりはないのです。
ここが、しっかりと固まってきますと、経営目標数値のブレがなくなります。
前職では、人時生産性を上げる業務改革に取組む前までは、予算とのブレが大きく、そのため、各店の月末見込みという「店長の勘」に頼ったものを毎週集計していました。
いわゆる、「全社見込を出す」といった作業をやっていたのですが、その見込通りになったことは、ただの一度もありませんでした。
それも不思議なことに、売上予想は的中しても、経費の使いすぎで利益が下振れする。という、魔訶不思議なことが日々おきていたのです。
まるで、家計収入以上に、毎月支出が多くそのためローンに手を出すかのような状況であったといえます。
本来であれば、自分たちが使う経費は、そこで使うのを止めれば守れます。しかし、それがオーバーしているかを知るすべが無かったからブレたのです。
そのために、人時管理の仕組みを導入だけでなく、その運用方法を確立することが必要で、それが利益安定にさせることが分かったのです。
その効果は大きく、手元でその数値がみれるわけですから、「勘や経験」に基づく、月末見込みのようなことをしなくても、どこが逸脱しているか一目瞭然にわかるのです。
店舗運営本部は、その年間目標値を設定し、毎週その目標値に向かって店内の作業指示を作り、人時を目標値内に収束するように。と注意喚起をする。これだけでも成果は上がってきます。
しかし、継続的に生産性をあげていくためには、業務量を減らしてく施策を本部は計画し、それが執行されることで、毎年人時売上があがるようになります。
もちろん売上策は考えますが、売上はコントロールすることができませんから、こうして、業務量を減らし。人時売上を上げ利益コントロールすることをメインに執行計画を本部は立てていくことになります。
詳しくはセミナーでお伝えしておりますが
変革スピードを上げるためには、他社の動きに翻弄されることなく、自らが基準や目標を設定し、その上で長期結果が出せるプランを執行していくことになります。一方でその基準や目標をもたず、勘と経験の見込みに頼るチェーンは、短期で利益のブレを繰り返すことになるのです。
さあ、貴社では、正しい人時売上の目標と基準もう備えてありますでしょうか?
今日も最後までお読みいただきありがとうございました。