今週の儲かる繁盛店の視点 第228話:「チェーン経営者が陥りやすい均一化・標準化の罠」
「先生。均一化標準化すると 個性がなくてつまらない店になるのではないでしょうか?」先般、個別でお見えになった、チェーン経営者からのご相談です。
なんとも悩ましいものです。これとても 深い問題でして、経営者の中でも、これをズバリ言いきれる方は少なく、これほど不可解で言いにくい問題はないといえます。
何で多くの会社で分かりにくいのか?と申しますと、社員から見ると、自分が今までやってきたことへの否定になるためです。
今まで 人時生産性の改善とは、人についていた仕事を 仕事に人をつけるということで、誰でもできるようにするということを申し上げてきました。
これは言い方を変えれば、標準化という名のもとに、仕事にどんどん人を割り当て人時生産性を究極まで高めて収益力を上げるということです。
一方では、自分の裁量や個性ということがなくなるため、会社として、違った角度から個人を称賛し従業員満足度を上げる仕組みが必要となります。
どんな商売でもそういった葛藤はあるものですが、会社が組織化して大きくなっていくためには、それを突破しない限りは、いわゆる 人間性の積み上げ式の個人商店のまま巨大化していくこととなります。
これは、良いとか悪いとかの問題ではなく、それがチェーンとして成長する方法なので、均一標準化された店を創るのか、100店100種のいい店はいいけど悪い店もあると言ったバラつきのある店を創っていくのかは、経営としてこの先どうすべきかの選択肢の問題となります。
どうやって利益を生み出すか?そのビジネスモデルを経営者が決めることだからで、それが企業の原動力となります。
社員にとってみれば、100種100様の人間性に富んだ積み上げ式の方が、個人的に自由に仕事ができるので、そのほうが嬉しいし楽しいことは言うまでもありません。
これを業務改革で人時生産性の高い均一的なやり方に変えていくとなると、個人のやり方が否定されることから、面白くなくなります。少しばかり優秀な社員に丸投げしたところで、中々簡単に進まないのはこのためです。
「いやいやこれぐらい、出来る社員はうちにもいますよ」という声も聞こえてきそうですが、
経営者の目から見て、中には、業務改革を任せることができる役員クラスの社員がいる。と思っているところにも、大きな落とし穴があります。
口では「ハイ」と返事をしても、自己否定からはいっていかなければならないため、わざわざそのリスクを冒してまで、一役員が動くようなことはしません。
だから、社長が動くことがない限り、誰も動こうとしないのです。
そのために、社員を熱狂させて躍らせる仕組みと同時に人時生産性はインストールしないと上手くいかないことになります。
人時を始める時は、まずは、社員に踊ってもらう仕組みとセットで考えることが成功のポイント。ということになるのです。
国内のテーマパークやナンバーワンハンバーガーチェーンはそういった取り組みで、成長し続けている企業です。
前職の西友もその究極を目指すため、毎年開催される社員集会3000人の場で功労者を徹底的に称賛します。
米ウォルマートは、株主総会には、毎年 各国から2万人もの優秀な社員を招待し、株主総会の場で功労者を徹底的に称賛しています。
それで、企業業績と給料ちゃんと上がっていくわけですから、大事なことは、この二つの仕組みが動けば 何年何十年と利益を増やし続けるビジネスモデルが出来上がるということです。
どちらか一方しか見てなければ、絶対に意味は分かりませんし理解することもできないと思います。
仮に同じ条件下で、多店舗展開をする場合、ちゃんとこの二つを実行した会社は、どこのお店も高い品質サービスを均一化するように変わっていきます。
一方で、100種100店の業態をつくれば、間違いなく一店舗ごとに、個性をあるお店を作ることはできます。
その代りこの店はいいけど、この店はダメという、バラつき是正を行うチェーン力発揮がでませんから、高コストで、手間と人時がかかり、やがて立ち行かなくなります。
社内研修も含めて、社員に対してケアする仕組みの導入と完全セットで、考えなくてはならないことは、ここでは必須となります。
十分な時間と資金とノウハウがあれば、未開の地も開拓し突き進むことができます。しかし、そんな企業は世の中に存在しないのです。
かといって何もせず、あるいは何も持たずに自社だけの考えだけで進めようとすれば、時間とお金と社員の信頼を大きく失うことにも成りかねません。
こういった変革を成功させていく流れをストーリーとして社長ご自身が把握することが重要となります。
分かっておられる経営者は、第三者機関である外部の専門機関をフル活用し、その展開方法を明らかにすることから始め、常に優位な収益パターンを作り動かしておられます。
大事なことなので繰り返しますが、企業として成長し続けるためには、会社としての生産性と社員の生きがいを満足させるしくみが不可欠であり、少子高齢化、労働人口の減少のなか、自己否定と称賛型ビジネスモデルづくりを制したものが全てを制すと言えます。
さあ、貴社では、早く進めることで優位に動きますか、それとも、手間と時間とコストをかけた店舗運営をまだつづけますか?