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今週の儲かる繁盛店の視点 第244話:「これからの新規出店で成功するチェーンと失敗するチェーンの違い」

「新店を出すことにしたのですが、何か気をつけることはありますでしょうか?」

先日、弊社にお見えになった 経営者からのご相談です。

――――それは、よかったですね 頑張ってください と激励させていただきました。

「実は、うちが出ないと競合に出て来られちゃう場所なんです、自社競合のこともあって、人時生産性はどう考えればいいのか?お聞きしたい」 とのこと。

――――人時売上はどの店舗を基準に決めましたか?とお聞きすると

「ある程度の規模がとれたので、一番売れている○○店を基準にした」ということですが、 

気をつけなくてはならないことは、今まで通り、ある程度人口がある土地に店を作れば、多少コストが掛かっても利益はとれる。といった神話が崩れ去っているということです。

批判を恐れず申し上げれば、人口が減る時代では、同じような品揃えの競合店舗と対峙した場合、人時売上の高い店だけは生き残れますが、その他は消えてなくなるからです。

事実、ここ数年前に店を出したものの、出店時の最高売上から、売上は減りつづけ、上がるコストに撤退を余儀なくされる店舗はたくさんあります。

マーケット人口があって、道路付けがいい、地型がよくて売り場面積が広くとれる。地権者も好意的。都心でも工場だったとこが、いつのまにか更地になり、出店可能な土地となる場所が増えています。地方にいけば、空地や居ぬき物件はたくさんあります。今は かつての店を出したくても出せなかった状況とは大きくが変わり、金融機関からもそういった話がくるくらいの借り手市場といえます。

問題なのは、少子高齢化の時代に、今まで通りのやり方で「人時生産性」を確保することができるか?ということです。

人口減でも、そういった場所を狙ってコンビニやドラッグは新規出店を続けています。
また、Amazonに代表されるネット通販では品ぞろえを拡大させ、チェーン既存店の売上は現実問題として減る一方です。

チェーンとしての新店は大きな投資はかかるもの、貴重な収益増となるので、出来るならやりたいと考えるのは当然のことといえます。

冷静に考えてみればわかることですが、企業全体の収益をあげていくのは、人時売上高が獲れるかどうかであって、ここを間違えると、大型投資も取り返しがつかなくなる。ということです。

人時売上高の高い店を作るためには、その骨子がきちんとあって、それを実現させるためのやり方手順が必要となります。

極端な話、商圏人口が少なくても人時生産性がとれる戦略があれば、その方が優位にというケースはたくさんあるからです

この取り組みによって、売上が低くても、人時生産性でカバーできる新たな仕組みを創り出す機会が得られますし、なんといっても、そこで培われた自社のノウハウは、既存店舗再生に直接寄与できるという点です。

大事なことは、ひとつの儲かる店が多くの薄利店のマイナスをカバーするのではなく、各店の人時生産性を高め、個店ごとに利益を増やす仕組みでチェーン力を発揮させていくということです。

一方で、これを見据え、過疎化に悩むある地方のチェーンでは、ここ数年前から、新店をストップし、既存店で利益が出せる人時売上高を高めるテストに果敢に取組んでいます。

もちろんですが、最初からすべて上手くいくことばかりではありません。

実際に、社長の陣頭指揮のもと、改善指示をしても、その時はやっても、刻一刻と状況の変化する現場では、型にはまったやり方をすると、サービスの低下や非効率な業務を増やす状況が多発していました。

そこで、腰を据え、業務を根本から変え「自社の店舗で力を発揮したい」という人が、たくさん集まる仕組みをやらなくては、と思ったのがきっかけだそうです。

そのためには、店舗ごとにあるべき作業指示書をつくり、それを人時割レイバースケジュールに変換させ、業務を見えるようにすることが必須となります。

そして試行錯誤の結果、一店舗当たりの頭数は増えたものの、逆に「人時は15%以上減らしても無理なく回る」という、増益ポイントを見つけだし、厳しいマーケットにもかかわらず増益に転じたのです。

そこでは、戦力となる若い主婦層に働いていただくために、短時間契約であるとか、年次有給取得促進策を進める為に何が必要か?を骨格部分からしっかり構築していきました。

その結果、フルタイムに近い古株パートナーさんは減り、必要な時間帯だけ働いてもらう短い契約時間の方が増え、平均年齢も下がってきたのです。

さらに、マネジャーや売場責任者といった特定の人にしかできない作業があればあるほど、多くの人時がかかることも見えてきたのです。

これまで、管理職業務は、現場に一任をしていたため、経営として中々踏み込むことが出来ませんでした。この取り組みによって、指示したことが、行なわれているかどうか?どこで作業が停滞しているのか?といったことが、経営幹部にもリアルタイムで把握することが可能となったのです。

業務棚卸といった事前調査時間は必要ですが「やり方さえ分かればそれを学び訓練すればできるはず」といった当時の決断が、今の成果に結びついているといえます。

今では、年次有給の消化率も改善が進み、そういったことは既に社内であたりまえとなっています。

仕事の指示が曖昧で、休みが取りづらいという 小売りチェーン特有の問題に踏み込み、それを根本解決することを最優先課題に置いたことで、「有給休暇義務化」に十分対応が可能なものになっています

なんの商売でもそうですが、常に右肩上がりで増収するとは限りません、しかし、いかなる理由があろうとも、結果を下振れさせないことが大事なのはいうまでもありません。

ブレナイ方針というのは、それを支えるコスト改善とそれを新たな成長戦略に再投資する仕組みが必要です。

その骨格づくりは、決して付け焼き刃のように短時間で習得できるものではありません、しかし それをマスターすることで、利益の増え方が違う先端企業と呼ばれるようになる日も夢ではないのです。

さあ、貴社では、こういった、骨格づくりから着手し新店計画を進めておられますか?それとも、まだ、売上を目標とした出店を続けていきますか?


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