今週の儲かる繁盛店の視点 第245話:「低コスト運営で成功するチェーンと失敗するチェーンの違い」
「競合店が閉店したので、店では人時を増やしていきます」と運営部長が言うのですが、本当にそれでいいのでしょうか?
先日セミナーにお見えになった、とあるチェーンの経営者からご相談です。
―――基本的には、競合が閉鎖した程度で人時は増やしません。とハッキリと申し上げています。
理由は簡単で、競合の撤退によって、必要人時は若干変わることはありますが、実際に調べてみると、通常業務で必要のないことをやっている人員の方が圧倒的に多いからです。
「そんな 調査する人手も、うちにはありませんと」という声が聞こえてきそうですが
語弊を恐れず申し上げるとすれば、この調査で1店舗年間1千万の利益が変わってきますが、それでもやりませんか?とお聞きすると。
「え?ほんとうに?」というふうに 皆さん驚かれます。
例えば、ダイエットによって体重が1キロ減れば、1L牛乳1本分を運ぶ足腰への負担が軽減され怪我が防げますし、生活習慣病の予防にもなります。いすれにしても、生活習慣業予防検診を受けることで、自分自身の状態を知ることができます。早期予防、早期発見、早期治療によって、がん、心臓病、脳卒中という病から身を守ることが出来ます。
食べ過ぎないことが体への負担を減らし、健康維持を促進することは誰でもわかります。
店舗も同じで、利益を生まない未作業状態の人員をみなおすことで、経営への負担は大きく変わってきます。
特に、これまで作業指示書を使っていない企業では、多めに人員を抱える傾向にあることから、早期発見、早期対応をすることで相当のコスト改善が見込めるからです。
実際に日々の作業量を調査し、時間ごとに売場単位で組み込んでいくと、2割~3割、場合によっては4割以上も多く人員を抱えていたことがハッキリと分かります。
一般的に店舗では「混みあう日」に、レジで待たせたり、品切れをさせたり、クレームになることをさけるため、多めに人員を確保しようとします。
問題なのは、この日を基準に、他の曜日の人員構成考えることで全体の、契約時間数が増えることです。
さらに、人に仕事がついているため、その人にしかできない仕事をしてもらうために、個人都合に合わせたシフトとなり、人員過多となっていくのです。
こういったことが、見えてきますと、決まって経営者は「なんでこんなに人をたくさん契約してるんだ」という怒りモードになるのですが、
そもそも、経営として増やし続けてきた、チラシやクーポンといった販促強化策を、店の人海戦術に頼ってやらせてきたことにムリがあったということです。
言い換えますと、販促強化はチェーンとして機能していても、最もコストのかかる店舗運営部分でチェーンとして機能していない状態になっていた。ということです。
多くのチェーンで人手不足と 言われているのはこうした個人に依存したやりかたを続けているからで、この実態を把握しないまま、新卒などの採用を今まで通り続ければ、当然ハイコストとなるのです。
かつて、人口が増え、売上が維持できて経費もそんなに上がらなかった時は、何とかなったのですが、こういった背景から「上がる経費」に「上がらぬ売上」が続き、連続減益といったことが、目前で起きているのが、昨今の状況です。
一方で、こういった取り組みに、数年前から着手し、生産性を改善されているチェーンもあります。
「先生、いやあ~ 本当に準備していてよかったです。年次有給取得は法施行に先駆け、年次有給計画を率先してとるようにしました」といって、笑顔で語られるのは戦略人時に取り組まれておられる、とあるチェーンの経営者です。
年次有給を取得するということは、年次有給を取った人の時間の穴埋めをどうするのか?ということになります。
こちらのチェーンの場合、戦略人時の取り組みで、年末でもほぼパーフェクトで、人時は予算内におさめることができるようになりました。
それにより売上は横ばいでも、人時売上の改善によって、今後は増益の目処がたっています。
この企業が取り組んだことは、長年、売上の大小に合わせていた人員計画を、日々の業務量に合わせ、人員を再配置したということです。
これまでは、商品量の少ない金曜は人が多く、逆に商品量の多い水曜は人が少なく残業が発生していた。ということがわかり、部門の枠を超え人事ローテンションをかけることでアンマッチを解消させています。
また、全社的に業務量を減らすことで、ムリな新卒採用はやらない。という方針も打ち出され、来期の人件費予算とその執行計画も早々に決定されました。
こういったことは、作業指示書を基本にした、人時割レイバースケジュールを使いこなせるようになったからに他ならないのですが、
ここまで使い慣れてきますと、売上は月末締めで、人件費は20日締めでやっているとタイムラグがあるので人時売上のずれが生じてきます。
今後これを解消するべく、費目ごとの月の締めを月末にすべき? という意見がでてきたのです。
創業以来一度も、変わることのなかった締め日の在り方ついても、見直し課題のひとつとして、業務改革の遡上にあがってくるのは、まさに、根幹から変わる準備ができている企業といえます。
売上高から業務量に合わせた人員配置に移行に着手したことで、毎月のプロジェクト会議も一貫性をもった考え方で進むようになりました。
決めるべきことが次々と決まり、意思決定のスピードが速くなり、それが数値の成果になって現れたということになります。
さあ、貴社では、戦略人時を使い、進むべき道を示す先手経営をとりますか?それとも まだ 売上基準の人員配置で後手経営を続けますか?