今週の儲かる繁盛店の視点 第265話:「業績回復の早い会社がある。その一方で、業績回復の目処の立たない会社がある。そこにある決定的な差とは?」
「先生、今まで いろいろな取り組みをしても効果が続かず 結果が変わらなかったのですが、前期は7年ぶりに増益できました。こうすれば変わる、と実感したのは今回が初めてです」
とあるGMSタイプの企業の社長の一言です。
――――はい、その通りです。頑張って来期も収益アップへ向け、ひとつひとつ潰していきましょう!
と背中を押させていただきました。
各社が苦戦する中、どうしてこういう声をいただいたかというと、それはここ1年半の取り組みのすすめ方と関係あります。
はじめてお会いした時は、とにかく、売上が良くなかったものですから、本部経費を大幅削減や売上アップのための、チラシやポイントカード、派手な売場演出といった販促策をこれでもか!これでもか!というぐらいやりつづけていました。
その結果、売上は横ばいでも、増えた店舗作業量によって、店舗経費は上がり、本部のわずかな経費削減では焼け石に水。膨れる経費を止めることの出来ない状況にありました。
人がいくら頑張って早く走っても、自動車や電車には追いつくことができないように、その根本となるエンジンと仕組みから見直していかなくては早く走ることは出来ません。
企業経営も同じで、早く品出しを…、早くレジ打ちを…、早く接客を…といわれても、従来の人海戦術のままでは利益を2倍3倍…と増やし、成長戦略資金を稼ぎ出すことまでは出来ません。
多くの人員をかけ売上アップをするやり方から、少ない人時で利益を増やすやり方にかえなくてはならないわけですが、
こう言いますと…
「残業カット?給与削減の話?」という声が聞こえてきます。
むしろ逆で、個人給与の水準を上げるために、少ない人員で回すことから考える。ということが重要になります。
少ない人数で回せるようにすることで、個人の給与水準は上げられ、トータル人件費を下げることを可能にするからです。
販促や商品開発といった売上重視型の企業の場合、自社でコントロールしにくいものに人やお金をかけていきます。
利益基盤の押さえがない分、利益を生み出す力は弱く売上未達の場合は、最悪減益となってしまいます。
例えば…
・売上アップだけを昨年ベースに決めたことをやるだけで、精一杯の本部組織。
・社長として必要なところに、コストを掛けることできない硬直した予算編成。
・生産性の低い情報機器や老朽化した什器で、多くの時間を割かれている店舗。
といったことが起こります。
「それが解決出来ないから困っている」という声が聞こえそうですが…
こういう大きな問題に直面したときは、その問題を一度に解決しようとはせず、問題を細分化し、その一つを解決するようにしていきます。
販促強化や、新規商品開発、5Sやカイゼンなど、いろいろな新たに増え続けた業務が、利益になっているか?というふうに細分化していくと糸口がみえてきます。
問題点を細分化して解決していくことで、会社としていくら利益が増え、成長戦略にいくら利益が必要なのか?予測がつきます。
今、売上低迷が起きているのは、人口減少や少子高齢化 人手不足とされていますが、真の原因は、こうした予測にもとづいた利益目標の立て方をしているかどうか?ということにかかってくるのです。
一方で、すでに企業として、年度の利益目標を掲げ、執行計画で自社コストを調整する仕組みのある企業は、利益を生み出す力があります。
こういった企業では、外的要因で、売上が未達の可能性が出てきた場合、業務ごとの利益構造を把握できているので、瞬時に、すべてのコストまで動かし、利益確保に照準を合わせるという、経営のアドバンテージをとることができます。
その大元となるのが「人時売上高」です。
1人当たりの時間売上を把握し、問題点の細分化ができているので、企業として今すぐやらなくてはならないことが明確なため、結果的に業績回復が早くなります。
前述の企業で問題になっていたことは、個々の業務が利益になっているのかどうか見えていないことでした。
それを調べていくうちに、本部の組織を見直し、その店舗への指導力ある本部に変えていくことが課題であることが浮き彫りになってきたのです。
その流れというのは、
まず、経営指標を人時売上高に変え、各店の人時売上を日々出すようにしました。その上で、作業指示書を通じて、店舗オペレーション力アップのための指導を繰り返しトレーニングするようにしていったのです。
当然ですが、人時売上高を改善するにあたって、店だけではできないこともたくさん出てきます。そういったことを 店舗運営本部はとりまとめ、各主管部に要望を出していきます。
業務を細分化し、企業として利益目標を正しく設定することで、店舗運営本部の業務も変わりました。これまでの店舗運営本部の業務は、チラシの本数を多く増やし価格強化の要望をだすことがメインでしたが、人時売上をあげるための執行計画立案をし、その指導という立場に変わりました。
当社では、年度の中間期の時期になると、指導先各社、来期へ向けて経営のオフサイトミーティングを開催し戦略を策定します。その要となるのが、人時売上をあげる為の店舗のヒアリングミーティングです。
「毎年やってたら 改善することが無くなるのでは?」という声が聞こえてきそうですが…
業務改革改善提案は 一店舗あたり数百項目以上でてくる店もありますから、改革プログラム進行中店舗が10店舗であれば、1000件近くの改善項目が出てきます。
冷静に考えてみればわかることですが、投資が必要なものもあることから、単年でやりきるのは難しく数年かけ、全てやりきっていく量となります。
「えー!そんなにかかるのでしょうか」という声が聞こえてきそうですが、
――――はい、最低でも3年~5年はかかると思ってください。とハッキリ申し上げています。
時間もかかりますが、人時生産性の改善が進んでいくので数値はそれ以上に大きく変わり続けます。新規取り組み店が増えるのことで、企業としての成長速度がさらに速くなるのです。
業績回復の早い会社がある。その一方で遅い会社がある。そこにある決定的な差は、こうした利益を構築する思考方法を持っている。ということです。
そのために、経営としての、早く儲かるようにするという願望が必要であり、それと同時に早く儲かるようになる仕組み作りが必須となるのです。
さあ、貴社では、売上重視のままで減益体質を繰り返しますか?それとも願望と仕組み作りで大きくブレイクスルーさせますか?