今週の儲かる繁盛店の視点 第324話:「人の多い企業で、人時(にんじ)という言葉を聞いたことがありません。不振理由を人のせいにできなくなるからです」
「先生 巣ごもり需要のおかげで、売上は前年比を連続クリアしています。そろそろ新型コロナ問題が収束した時のことを考えておかなければと思ってまして…」先日、オンライン相談でお問い合わせいただいた、小売りチェーン経営者からのご相談です。
―――― 今、世の中は売上大幅減の業種が、必死に生き残りをかけしのぎを削っています。そろそろでは、遅いです。スピード感をもってやるならお力になります。 とハッキリ申し上げました。
都内のある居酒屋チェーンは、週末の稼ぎ時、広いフロアにお客さんは、私たち含め2組だけです。
それを従業員3人で回しています。我々は1時間で店を後にしましたから、この日の売上は3万円くらいですから、通常売上の10分の1くらいです。
緊急事態宣言時は500店以上が営業できなくなり、即座に人材派遣会社を立ち上げ、すでにスーパーや介護向けの人材派遣に、着手し頑張っておられる居酒屋チェーンです。営業が出来ない店舗の人材を他社に派遣し、収入を得ながら複数の仕事ができる人の多能工化への取り組みです。
口で言うのは簡単ですが、仕事内容も勤務時間も全く違う業種に派遣されるわけで、それも いつまでなのか?戻ってくることはできるのだろうか?こういった、社員のケアを含めながら進めていきます。
主要メンバーが構築していくノウハウを手に入れ、自社のものにしていくということは、自社の最大コストである人件費と対峙する事であり、事業構造改革そのものです。
「一種の内製化?うちはそんなに人がいないからムリ」という声が聞こえてきそうですが
仰る通りで、小売チェーンが苦手とする、仕事をマスターするための教育体制や、何をどうやるといった業務内容の可視化といった壁がたちはだかります。
しかも、そういった仕組みやマニュアル準備の時間がかかるため、遅い企業と早く取り組む企業は、ここでどんどん差が広がることになります。
ところが、この仕組みのメリットは大きく、時代の変化に合わせて、柔軟に変化していくことを可能にします。なによりも、幹部社員の仕事の幅が広がることで、従業員の他社や他部門の見識が深まり、社内のチームワークが良くなるということです。
例えば、こういった状況を小売りチェーン中で置きかえてみると、一人のパートさんが、朝一、精肉で肉を切り、その後レジに入り、午後は経理をやるといった流れで、日に複数の業務をこなせるようなるイメージです。
「そんなの 理想であって、出来るものならすでにやってる」という声も聞こえてきそうですが。
一見、教育問題のように見えますが、そこは氷山の一角であって、水面下に潜んでいてやるべきことは、業務内容を明確にして、組み立てて作る事業モデルだということです。
こういった仕組みの上で、人を育成することで、業務の負担の均等化ができ、効率的に人材を活用することが出来ることから、導入している企業では、無理なく人時売上が向上し続けるのです。
既に新型コロナ問題も半年が経過し、今は、地方の長が「昨日は○○人」「動かないで」「来ないで」と言ってる間は、人の動きを地元に釘づけにしていくことが出来、特需が維持されてることがわかっています。
この先、新型コロナの実態がどういうものであるか解明が進むたびに、そういった力は薄れていきます。
昨年まで味わった資金が底をつく状態に戻る前に、次の手を講じなくては、特需から一気に、奈落の底に落ちた時のダメージは計り知れないということです。
夜の街が諸悪の根源と言われ、何もかも一緒くたにされ、営業規制下、お客さんが来ない、給料も払えない状態が続く中、こうした苦渋の決断をされ頑張っている居酒屋チェーンから、次に取るべき行動を学ぶべきということです。
食品日用品小売りチェーン企業は昨年の売上低迷から、一転し、特需状態が続いています。支出は収入に限りなく近づくという法則があるように、経営も売れれば売れた分余裕資金はまだあると捉え、そういったことを承認し、気づけば人件費が膨張し販管費が上がっていることに中々気づきません。
今は、このコロナが収束した先の少子高齢化に尻込みするのではなく、事業構造を見抜く技術を自社のモノにすることで、大きく成長の一歩を踏み出す足場固めをする時です。がんばりましょう!