今週の儲かる繁盛店の視点 第361話:「なぜ、売れる企画を探すより、失敗と対峙する方が、得られる成果が大きいのか?」
「競合〇〇社が、いい売場つくってる。見て同じようにやってみなさい」って言ってるですが、どうも動きが悪くて…とある企業の社長さんからのご相談です。
――――お言葉ですが、そのやり方、少し、慎重にやられたほうが良いでは?とやんわりとお伝えしました。
他社から学ぶことも大切です 但し、そこには収益構造が絡んできますので、丁寧に進めていきませんと業績が下振れすることがあるからです。
「それはわかる、全部マネしろとは言っていない一部でいいんだ」という声が聞こえてきそうですが、
――――社長のお気持ちはわかります。実はこういった場面に遭遇するたびにある出来事を思いだすからです。
それは、前職時代「昔は、スーパーっていうのはスーッと出て、パッと消えるからスーパーって言うんだと揶揄されたもんだ」と冗談交じりに言ってた先輩のひとことでした。
売上が低迷してくると「競合A社の売場がいいから、その通りマネしろ」と指示が出たかと思えば、今度は「競合I社でこんなことやってるからみんなで見に行ってこい」と指示が出て、本部から行って店のレイアウトを変更したりします。
とにかくやってみて ダメなら、戻せばいいといったやりかたです。この賛否はいろいろあると思いますが、「どこからかスーっと湧いてきた競合店を真似ようとして、パッと売場をかえる」動きに店は疲弊し、その数年後に会社は破たん状態に追い込まれたのは事実だということです。
その後も、改装したばかりの売場を、売れないことを理由に、勝手に売場を動かそうとする習慣から抜け出せず、7年間もの間赤字が続いたことは、拙著「個店力最大化のすすめ方」の中でも書いた通りです。
幸運にも黒字化のきっかけとなったのは、同業他社の良とこ取りと称して売場を変更することを一切止めたことでした。
理由は簡単で、私たちが向き合うのは、競合他社の売場ではなくてお客様だからです。手を差しのべてくれたウォルマートにはそういった仕組みがあったにもかかわらず、西友はそれを活かせてなかったため、顧客優先を掲げながら競合しか見てこなかったのです。
学ぶべきは、お客様の購買行動や心情であり、自分たちの店を使ったときに、どうそれを評価してくれているのか?
それを突き詰めていくと、自分たちの店の人時売上を上げることが、顧客満足度を上げることに直結する答えが見えてきます。そこに気づいたとき、肩の力が抜け徐々に状況は変わり始めました。さらにそこから、人時売上高世界一となるまでには、あまり時間を要しませんでした。
つまり、最初の一歩を表層的なことで終わらせるのではなく、本質を知ることで、一足飛びに業界トップに躍り出ることはできるということです。
限りある時間の中で本質を理解せず、数ある競合店を見て、見えるところに対してああでもないこうでもない、とやってるうちは、余計なことに手間がかかるので、収益は低下します。
何でもそうですが、所詮マネはあくまでもモノマネであって、本物に勝ることはありません。本物とは、自分たちにしか出来ないことを、追従出来ないレベルで成し遂げることであり、だからこそ変化に合わせお客様に寄り添うことが自由自在にできるのです。
この先、少子高齢化人口減は進み、売れる企画を探すのは難しくなります。人時売上高を主体とした収益戦略はより重要視されていきます。
たとえ、競合売場が、インパクトある売場であったとしても、それは、その企業ごとの経営の本質的な取り組みがそこに滲みでるからであり、世に同じ企業が存在しないように、本質が異なれば、出来上がる店や売場が違うのは当然のことです。
それでも、他企業の売場を真似たいのであれば、利益構造の本質である人時生産性から見抜くことが必要であり、それに触れず、見える部分だけで「いい売場を作れば、利益はついてくる」と考えてる限り、社内意識だけでなく利益も変わることはない。とうことです。
さあ、貴社では、まだ、表面部分にこだわり儲からない経営を続けますか?それとも、本質から企業経営の革新に取り組み 大きく結果を変えていかれますか?