今週の儲かる繁盛店の視点 第364話:「なぜ、人に付いた仕事のやり方をするとコストが上がるのか?」
先生、今年は 結構いい人材を採用することができました。
―――― いい人が採用できてよかったですね。ところで、受け入れ側の体制はとれていますか?
「ベテラン社員に 教育するように指示していますが」
―――― それ! 高コストになりますけど大丈夫ですか?
「え?」
人事異動で配属が決まったその日から、人件費は受け入れ側のコストとして発生することになります。
店からは「人がいない、人がいない」と言われ、新規採用や人事異動で、配属が決まると、今度は「まだ慣れてない、まだ育成ができない」といった声が聞こえ、売上もままならいまま、コストだけ上がってしまった。この時期にありがちな、採用と活用のジレンマと申しますか、いろいろなことが次々と押し寄せてくるものです。
ただでさえ、人件費があがってるのに、ヒトの入れ替えで減益する?笑うに笑えない話ですが、企業にとっては深刻な問題です。
冷静に考えてみればわかることですが、ヒトの問題なのか、受け入れ側の問題なのかとう議論で、受け入れる側の仕組みさえ出来ていれば、戦力化することは概ねできるということす。
かつて人口が増え売上を上げることに重点がおかれていた時は、多少残業が増えても問題視されることはありませんでした。
今は人口減でその常識は大きく変わり、店長が人員体制をきっちりコントロールして、残業無しでやるのは当たり前の時代です。
そういう意味では、今までのように時間をかけて教えるやり方から、時間をかけずに分かるレベルになっていることが前提となってきます。今まで相手に変わることを要求してきた受け入れ姿勢を、受け入れ側から変えていくことで掛かる時間を短くしていくということです。
「そうは言っても、店によってやり方や作業指示は、違うもの」という声が聞こえてきそうですが、
店の規模の違いはあれ、同じ企業であれば基本的な作業の流れは、そう違いはありません。作業の流れが書かれたものがあれば、そこから大きくずれたりすることはありません。とはっきりと申し上げています。
そもそも、上手くいかない企業というのは、こうした作業指示書が無かったり、売場責任者が作業に入りこんで特定の人にしかわからない業務が多いため、時間内に終わらせることが出来ないといえます。
そういう意味では特定の人にしかできない仕事が多ければ多いほど、リスクは高く、利益が下がる可能性が高いということです。こういったこと理解しないまま、単にベテランの社員をお手本のようにしてしまうと、その人にしかわからない仕事をまた増やすことになりかねないと言うことです。
販管費の半分以上を人件費が占める小売業の場合、ここをきちんと決めることで、収益構造がかわり、一年のスタート月から収益を上げ、幸先の良いスタートを切ることも決して夢ではないということです。
一方で、既にこのプロジェクトに取り組まれている企業では、店全体の作業内容が一目で分かるように進めています。誰がどの時間に何をすればいいのか?がハッキリ示されているため、個人個人の覚えることが少ないということです。
人間の記憶力というのは、いちど忘れクリアにすることができるから、次のことに集中できるわけですが、覚えることが多ければ多いほど、記憶消去するのに時間がかかります。
つまり、覚える量を減らすことが重要になってくることから、見てわかる作業指示書の運用がきちんと出来ているかどうかが、その大きな分かれ目になるということです。
問題は、それを、店ごとにバラバラにやらせようとすると またそこで、理解できない事や覚えきれないことが出てきて、店舗間格差が発生することから、人時の基本や運用手順を決め、その手順どおりで遂行する体制づくりから着手していくということです。
前出の企業も、最初から全てが出来たわけではありません。最初は、人時の正しい出し方すら、ご存知なかったのですが、プロジェクト体制で、ステップを登っていくことで、店舗にホントに必要なものは何で、何が不要なのかを明らかになり大きく生産性を伸ばしておられます。
店舗業務を軽くし、お客様の心を掴むことにどれぐらい時間を費やすことができるか?これが差別化のポイントとなり、強みとなるからです。
全ては、業務量の総量と、特定の人にしかわからないことを、どこまで減らして軽くすることができるかどうか?にかかっているといえます。
さあ、貴社では、まだ、ベテラン社員にしかできない業務にこだわりつづけますか?それとも、誰でも出来るように業務を簡素化し、収益の倍増化を目指しますか?