今週の儲かる繁盛店の視点 第386話::「なぜ、業務改善は、体系的なものでなければ意味がないのか?」
先生、手間のかかることはどんどん見直せばいいと言ってるんですが、どうも動きが悪くって… とある企業の社長からのご相談です。
よく聞けば、「これをやれ!」と言った時はやるのですが、その後が続かないとのこと。
――――おっしゃる通り「業務改善」の継続は本当に難しいといえます。見かたを変えれば、これが出来れば強力な差別化の武器になる、ということです。
それにしても、なぜ、やると決めたことが、「続かない」「元に戻る」「拡がらない」ということが起きるのでしょうか?
理由はシンプルで、企業の作業効率を上げるやり方よりも、元に戻る力の方が圧倒的に強く働くからです。
会社として非効率な作業を無くそうとすると、従業員は今までやってきたやり方ペースで作業が進められなくなります。
そのため、その作業が非効率かどうかに関係なく、元に戻りたいという人間としての欲求が前面に出てくるからといえます。
しかし、業務改善を始めても、元に戻ってしまったり、他の店に拡げていくことができないようでは、上がり続ける人件費、商品原価を吸収できずに厳しい経営となるのは火を見るより明らかです。
非効率業務を中心に企業収益率をあげていくためには、会社がどのように変わっていくのかを明示し、流れを目で見て誰にでもわかるよう体系化しなくては、その成果を手にすることは出来ないと申し上げています。
例えば、作業指示書を作っていくためには、「店舗業務項目」を書き出し「非効率業務改善」を行ない「レイバースケジュール」に落とし込むことで、お店の作業指示書が出来上がっていくことはイメージ出来ると思います。
しかし、どうやって店舗の作業の流れを捉え、どうやってムダを見いだしていくのか?というプロセスは、数学の応用問題のように、1問~2問解けたからといって、3問目も同じ手法解けるとは限りません。
1000本ノック方式で何十、何百問と解き明かしていく事で、ようやくその導き出し方が頭の中で繋がり、理解できるようになるものだからです。
現実問題として「非効率業務」と聞いただけで、「うーん…」と口籠る社長も多く、ここに一切手を付けずに、作業指示書作りからいきなりスタート、という無謀な企業もあります。
実際どちらの効果が得られるか…?といえば、非効率業務改善の千本ノック方式で社員を鍛え上げた方が、間違いなく結果は変わってくるということです。
なぜ、「非効率業務改善」がそれほど重要なのか?これには大きな理由があります。
人は、非合理なやり方を、無意識と言えるレベルでやりつづけてしまう生きものだからです。
まして一つの企業で非効率なやり方に何十年もやってきた方が、一度や二度の取り組みで思考法や意識が、すぐに変わるということなどないということです。
前職の西友で、ウォルマートと提携後7年間もの間赤字状態から脱却できなかったのは、非効率業務に手を付けずに、売上を上げて生産性を上げようとしていたことが原因でした。
背景には、全社プロジェクトではなく、運営部や人事部任せの研修からやり方を学ぶ方式が主流であったことが挙げられます。
ところがいくらやっても一向に結果が変わってこないことから、CEOを中心とした改革プロジェクトとして進めていくことに方向転換したのです。
当時の研修を振り返ると、即効性のある売上対策型のものが多く、モチベーションアップ的な要素が多かったといえます。
しかし、人時コントロールをメインに人時生産性改善を目指すことに方向変換した途端、そのやり方は一変しました。
言ってしまえば「耳触りのいい売上アップの話をいくら聞いても、生産性改善ができなければ企業存在価値はない」と180度でやることが変わったのです。
誤解を恐れず申し上げれば、モチベーションアップ型研修に金をかけるより、社員に嫌われても全然かまわない、「非効率業務を一件でも多く解決できるかどうか…のほうがよほど重要」だったということです。
無茶苦茶なことを言ってるように聞こえますか?
自社の店の前に立って、お客様に、ニコニコと「いやっしゃいませ~」と愛想をいくら振りまいても、結果的に赤字基調から脱却できなれば意味がない。ということです。
これが、冷徹な現実です。表面的に売れてる店のやり方をやってる企業を真似て、売上アップ策のやり方をどれだけ真似ても、利益率向上につながらない理由がここにあります。
しかし、強引にコストカットだけを進めようとすれば、問題になりますので、その「いいあんばいの状態」をつくりだしていく一つの方法が、非効率業務改善施策への取組みなのです。
そしてもう一つ大切なことは、非効率業務改善でも作業指示書にしても、まずは紙でつくってみる。ということです。
「え、紙ですか?」という声が聞こえてきそうですが…
これも理由は単純です。言葉だけであれば、会議にしろ、店舗のミーティングにしろ、思い出す方法は人の記憶だけに依存したものとなってしまうからです。
もし、そのやり方手順が、紙として手元に残っていれば、思い返して見ることも出来るし、それをベースにマニュアル設定をすることもできます。
個人の記憶に依存した会議の席上だけの業務改善と、日々現場の目で見て思い返すことのできる業務改善とでは、どちらが成果となるかは歴然です。
人時実績や非効率業務改善にしても、作業指示書にしても、紙にこだわる理由はここにあります。手にして感覚的な記憶に残してもらい、書き込むこともできる。
大勢の人がいる店舗では、社員の出社時に目につくとこに掲示してあれば、自部門だけでなく他部門がどうか共有でき、昨日の貢献部門をその場で賞賛することもできるわけです。
大事な資料こそ「いつでも目に見える」が欠かせないのです。これが、重要ツールを紙で用意する最大の理由です。
実際、強い企業というのは、こういった従業員の満足度部分まで踏み込んで考えているから、高い利益率が維持できるのも、また真実であるということです。
企業規模にかかわらず、改善目的を明確に示し、後戻りしない仕組みを作ることは、時が経ち人が替っても、利益変動のリスクを回避できるローコスト運営の王道です。
非効率が繰り返され、多店化展開が進まないのは、こういったプロセスが体系化できていないため、業績回復のチャンスを掴めず悩まれているのです。
さあ、貴社では、まだ、形だけの作業指示書づくりで空回りを続けますか?それとも業革のプロセス遵守し、一定確率で毎年結果を変えていく仕組みで成功を手にしますか?