今週の儲かる繁盛店の視点 第391話:「なぜ、全体計画のない人時生産性計画は失敗するのか?」
「先生、自粛特需の貯金は全て無くなりました。売上は厳しいままです。人時売上回復に、奇策などないこと改めて痛感しました」とセミナーにご参加いただいた社長さんからのご相談です。
話によると、店舗改装やシステムといったとこの更新にお金を投資されたとのこと。
更新といえば聞こえがいいですが、何十年も前から古い機種をだましだまし使っていた、老朽化したものを新しいく変えたというお話です。
本来であれば、4~5年の中で予算設定し更新させていくものですが、カツカツの収益状況だったようで、見送られたままになっていたそうです。
――――全体の生産性はどのくらいあがったのでしょうか?とお聞きすると
「いえいえ、単なる更新ですから」と歯切れがよろしくない。
せっかく お金を掛けるのであれば、全体の数値が上がる投資を考えればと考えるわけですが、どうしても、限られた範囲でとなると、後になって気づくことも多いということです。
人は必ずしも合理的に動く生き物ではないもの、特に、自分のこととなると周りが見えにくくなるものです。前職時代もそういことは本当にたくさんありましたし、独立してからも、「あっ!やってしまった」「もう最悪!」という失態は数え切れないほどあり…思えばその苦い経験おかげで今があるといえます。
チェーン企業のように人の多くの人が関わる場合、こうした細かいことは全て上に伝わってくるわけではないので、放っておくと、社内のいたるところに綻びとなってその隙間からお金はこぼれ落ちていきます。
例えば、商品改廃計画などもその一つです。商品部の仕事といえば、商品仕入れで値段を設定し店舗に供給できてさえいれば、利益はとれていくもの。
だから、少しでも良い条件で仕入れ交渉して、目立つ特設コーナーで売るようにすれば、利益はあがる。と考えられがちです。
しかし、こういった売り方はお客様側の立場からすれば、通路の真ん中に、カートやワゴンに山積みされた商品を見て、正直言って「なぜここに積んであるのか」なんだかわからずその商品価値が伝わっていかないことは多々あります。
これが、クリスマスや年末年始おせち、バレンタインといった社会的に認知された季節商品や旬であれば、ある意味特設コーナーだけでもギリギリセーフです。
全ての商品には、一品一品の商品の陳列場所、いわゆる定番売場とかプロパーといった陳列場所があります。その上で、プラスアルファ―として特設コーナーで販売するというのであれば「新しく入った商品」であることが伝わります。
今どき、定番に入らないから特設コーナーだけで展開するといった、やり方をされる企業は少ないと思いますが、現実的には、売れ残った商品の処分などが通路を占拠している光景は良く見受けます。似たようなことに、日によって、売場がコロコロ変わる生鮮売場とか、社長に言われたから慌てて売場を変えておられる企業も中にはあります。
こういった例外的な業務を軸に運営されたやり方は、たまたま、通りがかったお客様が偶然に手にして売れることはあっても、今後継続的に利益をもたらすようなことにはならない。というのは誰の目にも明らかです。またそういう企業では、「うちは長続きしない」「どうせ元に戻る」という不満や不信意見が多いのも特徴です。
こういった例外的業務を無くすために、人時売上活用の全体計画があってそれにもとづいて、各部が計画を立てていく事になります。調達コストの最も多い商品部で、その要となるのが商品改廃計画です。商品改廃計画とは売れて儲かる商品の陳列スペースを増やし、売れず儲からなない商品の入れ替えを計画的に行なっていくということです。
全国を回って銘品を探したり、競合他社で扱ってる商品を導入することはもちろん大事ですが、そのためにはまず、どの商品を棚から外すか?ということから決めて動くということです。
それをどういったタイミング処分し、入れ替えていくかといった計画が提示され、初めて新商品を入れることができるわけです。
よくあるのが、社長の一声で決まった新商品があって、「何とかしなくては~」といった空気感から、既存商品売場を少しずつ詰めてというやり方があります。
カタチ的には収まっても、これを、やりますと、最大陳列量とロット数のギャップが生じ、品出しなどの店舗作業量は大幅に増えます。
また、入れたからと言って認知されるまでには時間を要することから、商品回転率が下がり、利益低下を引き起こすことになります。
全体計画が無いなかでは、何か新しいことを始めるのは簡単でも、何かをやめることは出来ないということです。
具体的には、全体の商品改廃計画があって、年間、どのくらいのアイテム数を外し、新規に何アイテムを導入していくという計画を、商品部は遅くとも予算策定時までに、店舗運営に情報開示していくということになります。
ところが、現実問題として商品部が提示する棚替え計画が無かったり、あったとしても作業人時が、店舗の必要人時に組み込まれていないことが多く、その為、棚変更を「やらない」「出来ない」「時間が無い」等の言い訳が出て、タイムリーに行われず、売上をとり損ねているということです。
また、売場の棚替えいわゆるフェース変更に欠かせないのは、メーカー新商品です。こう言いますと、
「メーカーはそんな新商品の発売日など言わないし、予測がつかない」という声が聞こえてきそうですが
であれば、こちらから、「来期はこのくらいの定番スペースが空くので…という提案をし、どこよりも御社の商品を売る計画を立てさせていただきます」
と、事前に相談をすれば、協力してくれない仕入先企業などないという事です。
大事なことは、待ち姿勢ではなく、自ら動き、全ての定番売場の販売力を点検していくということです。
定番売場の販売力を引き上げていくためには、品切れの多い商品を特定し、陳列量の見直すことで、これを見直すだけで年間の売上が変わってくることは誰でもお分かりになると思いますが、具体的な方法となると分からない人が多いのも事実です。
反対に、現状の入数でもほとんど売れないといったものはロット数の見直しや、今後の取扱いの有無について検証していかなくてはならないということです。
それは大手だから出来るのであって、うちのような店舗数が少ない企業で、「バイヤーの数はそんなにいない」とか「大型店舗の担当者が全店仕入れ交渉をやっている」そんなことをやらせている時間はない。という声が聞こえてきそうですが、
各社それぞれのお考えがあるので、それをどうこう言うつもりはありません。しかし、そのやり方で、来期をどうやって利益を上げていかれるおつもりでしょうか?とハッキリ申し上げています。
小さな企業であればあるほど、店舗数が少なく、経営資源が少なければ、少ないほど、商品棚割に対し専門特化しなければ、強みを発揮することは不可能です。
だからこそ、主管部門の専門性を謳わなければならないのですが、未だに「店舗に多くの人を配置し、本部は少ない人員といった方法が、有効ではない…」ことに気づかれない企業が多く、ここに、チェーン企業の人時生産性の難しさがあるといえます。
さあ、貴社ではまだ、店舗の人手不足問題を嘆きますか?それとも全体計画に基づく、商品部人員体制と仕組みづくりで、全社人時売上をあげていきますか?