今週の儲かる繁盛店の視点 第407話:「なぜ 、販促強化の売上対策で人時売上は上がらないのか?」
「先生 売上昨比は厳しいです、2カ年比で見ればまだプラスです。今のうちに何とかしなくてはと厳しく言っているのですが…」
とあるチェーンの社長さんからのご相談です。
――――2カ年比だと、営業利益率はどのくらいですか?
「えっ!」と言葉に詰まります
お聞きすると、売上対策としてとった販促強化でコストが膨れ、結果的に営業減益になってしまったとのこと。
多くの企業は、売上が減り始めると、まるで「息が出来なくなった」かのように、パニック状態になり、販促強化に動きます。
かつて人口が増えていた時は、販促強化で何とかなったこともありましたが、それはまだ人件費が安かった頃の話。
人件費の単価の上昇を考えれば、同じ販促強化策を打てば、益々厳しくなるのは明らかです。
経営が厳しくなる企業には共通点があります。それは、売上が悪化したということよりも、儲からないことにお金をかけ続けたことにより、本来必要な成長戦略への投資が出来ず、やがて負のスパイラルに陥っていくということです。
「売上対策をしなくてもいいのか?」という声も聞こえてきそうですが、
そもそも、売上は、チラシだけでは上げることは出来ません。継続的に売上を増やすためには新規顧客を獲得するか、新規商品を導入するための商品改廃を行なうか、いずれかの方法でしか上げることができないからです。
現状何も変わらないところに日替わり価格訴求チラシをいれても、訴求日の売上が増えたように見えるだけで、一週間通してみるとほとんど売上が増えていないことが分かります。
売上が上がる日が入れ替わったことを、売上が上がったと勘違いしているにすぎないことに、偏って人件費をかけることに何の意味もないからです。
大事なことは、単日ではなく週間での儲けを示す人時売上高がどのくらい上げることがが出来たか?であり、それを年間を通じてどう変えていくかというこです。
人時売上高とは、1人当たり時間売上高のことで、売上高÷人時で算出される、店舗収益力を示す全社共通指標と言えます。
セミナーやご相談にお越しになる方に、来年度の人時売上を向上させていくための予算はいくら予定されていますか?と質問してみると、
「えっ、いきなり聞かれても…」といった驚いた表情をされます。
ムダな人時を削っていくための業務改革プランがあり、人時売上高を上げ、利益獲得するための算段はありますか?ということです。
チェーン企業とは、大勢の人の手によって収益を上げるビジネスモデルであることから、あえて、お聞きしているわけですが、
「うちの企業経営はボランティアとしてやってる」というならともかく、真っ当な企業経営には、すべて手間賃がかかることから「営業経費」「販売促進費」「広告宣伝費」といったものを計上するのは、至極当然のことです。
実際、多くのチェーン企業の経営者の方々から「客数アップのための販促強化」とか「新入社員採用のための採用費」「新店のための出店費用は計上しているのですが…」といった、少しバツの悪そうな趣きで答が返ってきます。
私からすれば、人時売上を上げる為の活動経費計上をせず、業務改革計画もなしに、ビジネスを展開するということは、これは、「人時売上がビジネスの生命線ということを、本質的に理解されていない」と申し上げています。
この状態を一言で表せば、「何か収益が上がるいい改善方法はないか?と、口を開けて待ってる状態」ということです。
こうお伝えすると「いや、ムリなコスト削減より、売上カバー策はちゃんとやってる」と、反論が返ってきます。
うかがえば、商品関連販売をやったり、重点商品の販売をやったりして、接客なども定期的に所属団体の研修に参加させている。
などなど、さまざまな活動に経費をかけてることをアピールされます。
たしかに、「商品関連販売」や「重点商品販売」「接客訓練」のようなことは、どれも一見欠かせないように思えます。しかし、これらの活動には大きな問題があります。
それは、「各企画の活動に対して、収支結果報告がない」という点です。
実際、「これらの企画をやったら、来月の人時売上はどれくらいになりそうですか?」と突っ込んで聞いてみると、「それは…、たぶん今月と同じくらい…」と歯切れの悪い言葉が返ってきます。
人時生産性改善では、「取り組んだ分だけ、一定の確率で確実に利益になる」ことがきわめて重要です。
このプロジェクト単位で収支結果を出していくことで、始めて営業利益が変わってくるからです。
言い方をかえれば、各プロジェクトの活動に対して、最終的に6割とか5割の達成率といったカタチで収益が上がっていく導線設計が作られているかどうかが重要なのです。
ところが、このような売上中心の企画の場合、どれぐらいの売上で、そこにどれぐらいの人件費がかかるのか?何となくの予想はあっても、「売上の伸び頼みなので」そこまで作ることが出来ないというのが本当のところだからです。
人時売上活動は行っている…。これは確かに間違いないかもしれませんが、
「取り組んだことに対し一定の確率で利益」にならないものは、結果のでない「ムダな活動」を、知らず知らずのうちに行っているのと同じということです。
このことは、社長ご本人が考えているよりも、はるかに危険な状態に企業を追い込んでいっていることを知らなければなりません。
さあ、貴社ではまだ、結果の見えない売上策に時間をかけ続けますか?それとも、結果の得られる人時売上活動で収益力をアップさせますか?