今週の儲かる繁盛店の視点 第417話:「前提条件が変わっているのに、今までの延長線上でやろうとすることの意味が分かっているのか?」
先生、先代から引き継ぎ、自分の代で不採算店舗を10年かけ整理してきたんですが…
オンラインセミナーに参加された企業の社長さんからのご相談です。
聞くところによれば、このリストラで一時的に収益は改善したものの、再び厳しい状況になってきている。とのこと。
かつては、不採算店閉鎖やリストラも、時間をかけてやってきましたが、今は出来るだけ短期間で終えて、儲かる場所を求め次々と出店攻勢をかけていくのが主流となっています。
語弊を恐れず申し上げれば、不採算店閉鎖やリストラは、次の一手を考えるまでの時間稼ぎでは間に合わないということです。
理由はいくつかありますが、人口が増えていた時のように、赤字店を閉鎖すれば出血が止まり、その後順調に回復していくといったようにはいかないという事です。
赤字店とはいえ、ドル箱店舗の防波堤的役割を担っていたという側面もあり、それが無くなれば、同業他社やドラッグがここぞとばかり一気に出店してくるのは明らかです。
店舗閉鎖やリストラにはコストもかかりますから、期間が延びた分高くつくこも考えておかなくてはなりません。
このようなマイナス点も審議したうえで、進めてこられましたか?ということです。
人は自分のこととなると、不思議なくらい何も見えなくなってしまうものですが、企業経営も同じで、なんでも自社に都合のよいように考えてしまうものです。
例えば、ドル箱店であれば、売場づくり見せ方といった、表面的な演出や陳列を変えるやり方やチラシを価格強化すれば、今までと同じ成果が得られると勝手に思い込んでやってしまったりするという事です。
冷静に考えてみればわかることですが、今まで売れたのは、肥沃なマーケットがあったからであり、新たな競合出店でその前提が変われば、現状の延長線上では、売上維持することは出来なくなります。
かつて、ドル箱店と言われた店も、売上が半分~3分の1になりその見る影もない姿になってしまっているところは数え切れないほどあります。
ドル箱店の売上が減れば、企業経営大きくは傾きます。だからといって、これ以上人を削るのも無理があることから、その人員を活用し少ない人員で運営できる仕組みを作っていくようにしなければならないということです。
正直な話、人手もかからず、短期間に売上がとれる、楽な方法として移動スーパーなどで、「他社に売ってもらう」考え方もあり、前出の企業でも実際に展開されていました。
しかしながら、このやり方は収益性がほとんど無い上、今後、資源コストがあがるほどリスクになるだけに「直営で売れるようにする」ことが自らのビジネスの絶対条件となります。
直営で人時売上を上げることが出来て、新規顧客開拓が進めば、自分のビジネスを真にコントロールできるからです。
販促強化や見せ方を変える手法や他社で売ってもらうことは「過去の環境で通用したこと」であり、「今後、本業の立て直し」にはならないということです。
こういったことは、弊社にご相談にお越しになられた方々には、お伝えしていることなのですが、「メインではないが、それも外すことができないなから…」などと言ってると、本当にやらなければならない「本業の立て直し」ができなくなってしまうということです。
「だったら、本業を立て直すためにはどうすればいいのか?」という声が聞こえてきそうですが、
それはズバリ「人時」であり「人時売上が毎年一定の確率で改善する活動」こそが経営の課題であるということです。
人時売上改善活動の特徴は、人件費を人時に置きかえ、店舗業務にどれぐらいのコストがかかっているかを明らかにしていくという独自の手法にあります。
この仕組みにより、利益に結びつかない業務を止め、少ない人時で回すことを可能にしていくわけですが、そこで生まれたコストを活かし、自社のサービスや商品販売力を高めていくことができるという、大きなメリットがあります。
さらに、これまで成否に関係なく前年比並みという各主管部門の固定化された活動経費を、店舗人時売上を向上させる使い方に移行できる、というメリットもあります。
これを進めていくためには、社内常識という立ちはだかる壁を崩していくことが必要なため、社長主宰による業務改革プロジェクトを立ち上げ、主管部門を動かすことになります。
「社長指示のもとで主管部門は動いているのと、どこが違うのか?」という声が聞こえてきそうですが、
売上高から、人時売上を基準に、収益構造を変えていくための導線計画計に基づき、実務として動かしていくことになります。
つまり、売上を上げる為に主管部がやってきた形式的なカイゼンから、店舗人時売上を上げるため、社長主宰の業務改革プロジェクトが計画立案から成果を導き出す全ての活動を行なっていくようにするということです。
このことは「誰でも、何度でも、再現することが可能」ということを意味しています。もちろん、簡単ことではないことは言うまでもありません。
しかし、社長の指名した業務改革チームメンバー自らが調査を行い、プロジェクト会議で説明し、作業人時を減らし店からも感謝されると、社内に様々な変化をもたらします。
実際に、お手伝いさせていただいた企業の中には、20代の副店長クラスがプロジェクトメンバーとして、店舗に張り付き非効率業務をいくつも見つけだし短期間で、主管部門に改善要請を出し、人時売上を改善させています。
また、閑職に追いやられ疲弊していた50代後半の社員が一発奮起しレイバースケジュールを使いこなし、10人の部下を従え、LSP導入普及のため各店を巡回し直接指導にあたっています。
あるスーパーマーケット企業では、これまで店長は男性があたりまえの風潮から、レイバースケジュールを駆使する女性従業員を店長に抜擢するといった企業も出てきています。
環境を与えられ自分でやり抜くことを経験した従業員は本当に強くなります。最初はヨチヨチ歩きでも、自分の足で立ち上がり、そして力強くしっかり歩けるようになるからです。
そうした中で実務経験を積むことで、それが自信に繋がり、困難な課題とぶつかった時も、経営陣を前に、「(人時売上をあげるため)私はこういう方法で進めています」と言えるような人間に成長していく場面を幾度も見てきているからです。
こうした変化により、多くの企業がその数年後、自然体で2~3割以上の人時数を削減しても回せるようになり、その後も、新しい提案しながら活き活きと働くようになっています。
さあ、貴社ではまだ、前提条件が変わっても、現状の延長上のやり方で苦労し続けますか?それとも、収益構造を変えるプロジェクトで、5年10年と大きく飛躍する企業を実現させますか? 次にこの成功を手にするのは社長であるあなたの番です。