今週の儲かる繁盛店の視点 第428話:「なぜ、売上低下=今のやり方が通じない現実から目を背けるのか?通じないことを続ける先に待ち受ける危機とは?」
先生 店舗コンディションを上げるってどういうことでしょうか? とある企業の社長さんからのご相談です。
聞くところによると、拙著をお読みいただき、「店舗コンディションを引き上げる」ことを、自社でもやりたいと思ったものの、どこから手を付ければいいのかわからない。とのこと。
それだけ、真剣にやってみたいという経営者がおられるというのは、著者冥利に尽きるわけですが、セミナーやご相談にお見えになる方の中には、本を読み付箋をつけた本を持参されたり、A4数ページに渡る質問用紙を作って積極的質問される社長さんもおられます。
店舗コンディションとは、企業の収益力を最大に引き上げていくために何が必要かを項目に分け数値化していくことです。お客様の目から見た店舗運営に対する評価実績と、経営視点から見た人時売上の実績、従業員の貢献意欲の3つで構成され、各々目標値を達成させていく事で企業収益力を毎年上げていくものです。
とこう申し上げますと
「うちでは ちょと心配…」という声が聞こえてきそうですが、
確かに、今まで 売上と粗利・昨比といったことを中心にやってこられた企業から見れば、次々新しい言葉が出てくるので「成果を得ることが出来るのだろうか?」とおっしゃる社長さんもおられます。
興味深いのは、店舗数が少なく、スタッフもいない、人時等の数値も揃ってない企業ほど、予想以上の利益を越えていく企業が多いということです。人は追い込まれると想像以上の力を発揮できるもので、好むと好まざるにかかわらず、やるしかない状況に社長ご自身が身を置くことで、それが結果に結びつく事例が圧倒的に大半を占めてるということです。
一方、「労働生産性を使ってます」とか、「売場別損益を使ってます」「人時も出してます」といった事をするスタッフが揃っていて毎月会議で報告をやってる企業もありますが、人も物も揃っている企業ほど、批評と、目の前の対策ばかりで、将来像に向けた具体策は出てくることはなく長続きしません。
先代から続く成果の出ないやり方で苦悩するより 2代目3代目社長が身を投じてこれぞと思ったやり方の方が、楽に業績を上げているということです。
実際どのように進めればいいのか、少し申し上げますと、実態から今の状況がどのくらいかを知り、将来的にどこまでもっていきたいか?を考えることから始まります。
例えば、地域一番の社員給与水準、新規事業投資、集客力の高い店舗づくり、商品開発、情報システム投資等…数え切れないほど出てくことかと思いますが、そういったことを想像していくことになります。
「来年のことも分からないのに 将来のことなんて…」という声が聞こえてきそうですが
――――来年のことは見えなくても、将来のことなら自由に想像することが出来ます。とハッキリ申し上げています。
実は、店舗コンディションにはこの考え方こそが重要で、日頃現実に縛られてた環境におかれていますと、本来あるべき理想の店舗状態をイメージすることができなくなってしまうものだからです。
なんでもそうですが、「売上の3%アップは難しくても 2倍で…」と言われたら考え方は全く変わってきますし、これはコスト削減についても同じです。
制約条件を一度解除して考えることで、人は初めて新たな考えを受け入れることが出来るものだからです。
言い方をかえますと、どこにひっかかって考えを進めることが出来ないのか?その制約条件を特定することができれば、経営ビジョンは簡単に設定することが出来るということです。
経営ビジョンとは目標数値のことで 中期経営計画等のことを指しますが、そこが決まればそこから逆算して、年度の目標値を決めていくことが出来る大事な指標です。
「それが出来ないから苦労してる」という声が聞こえてきそうですが、
チェーン企業の多くが、人口増の時に設定した前年比を基準に予算をたてていくという手法をとっています。しかし、人口減に転じて10数年以上経過した今、前年値では全く参考にならない為、将来目標から逆算し年度予算を立てていかなくてはならないというこです。
そのためには、目標となる人時売上を決めることが出来なければ、そこから先に進むことが出来ないということは容易に想像がつきます。
自社の掲げた将来目標から、現状との差異を算出し穴埋めしていくためのツールで、改善施策を組み立てていく訳です。
弊社が推奨している「企業の人時売上を高めるツール」いくつかありますが、ここで言う3つだけは、絶対欠かすことのできないツールと思ってください。
①「人時売上実績表」②「非効率業務一覧」③「作業指示書(レイバースケジュールプログラム)」
となります。
最初の人時売上実績表ですが、これは簡単に言えば、「私は、自分の担当売場を、このくらいの人時数で運営をしています」という いわゆる担当部門の売上と人時の情報です。
一般的には、「売上」はどこでも共有されていますが、それに対して、かかっている人時については、まず、共有しているところはありません。
「人員は、売上に合わせ増減させているはず、売上概算があるから同じことでは…」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、本当にそうなのだろうか?ということです。
大事なことは、そういった情報を再整備し「店舗で人時売上を引き上げていく、つくりになっていますか?」ということです。
あくまでも、人時売上のツールとして用意されるわけですから、店長が皆に、きちんと説明できるようになっていなければ全く意味がありません。
実際、「人時実績」をつくってはみたもののどうすればいいのか、とよくご質問を受けるので、大枠を申し上げると次のようなものが挙げられます。
「人時売上管理と運用実務の目的・方針」
「総人時の基準設定」
「総人時と売上の関係性」
「人時運用を行うためのワークルールの設定」・・・
などなど、必要な要素は結構多くあります。そうは言っても、今まで、売上だけを見てきたことから、人時も一緒にとなると、想像以上に大変です。
現場の意見を活かし、生産性を2倍3倍に引き上げていく、ためにはこういった項目とひつひとつむきかっていかなくてはならなということです。
②「非効率業務一覧」は、「店舗で行われている業務で、量の多いものや手間がかかること」はどのようなやり方で行われているのか?ということを拾い上げてくことです。
よく、業務改善と聞くと、店舗に行って「何か困ってることありませんか?」的な聞き方で、改善要望を聞き出そうとする人がおられます。
「カイゼン=困ってることを聞き出す」という、昔ながらの仕事のやり方が頭を離れずにいる方の典型例です。
お気持ちはわからなくもないのですが、残念ながら、このようなやり方で現場の改善が全社改善にむすびつくようなことはまずありません。
インターネットやSNSで情報が世に溢れている今は、やみくもに聞き回れば、その裏で、不平不満を煽ったり、取組み施策の足を引っ張ろうとする人が現われ、改革活動に悪影響を及ぼすことになりかねないからです。
「具体的にどの部分で成果を上げる」といった戦略を持たずして困ったことを聞き回る。ということは、武器を持たずして戦場に足を踏み入れるのと同じで危険な行為、と申し上げています。
実際、何か困ったことありますか系の人の場合、会社の方針や考えについて、表向きは賛成しても、自分の考えをもち、成果の見込めるようなやり方的な提案はしません。
理由は簡単で、自ら改善を言い出すことは、自分の裁量権や自己流のやり方が奪われることから、要職に就かれている人ほど現状維持でことを荒立てない方が…と考えたくなるものだからです。
このような誰もが避けて通りたくなる荒道を誰でも、通れるようにするためには、道を一気に平らにしていく、ブルドーザーのような重機が必要になります。
その重機の役割を担うのがこの「非効率業務改善」と申し上げています。
一方、経営からすれば、「人時をやるにしても、何をどう進めていけばいいのか?」そこがハッキリしていなければ、指示すら出すことができません。
ここでは先を見据え「人時についての具体的取り組み」や「標準的な人時数の設定」はどうあるべきか、これがないと目標設定ができないわけで、緻密な計算やロジックを組み立てることも必要となります。
要するに、どういった考えや方針に基づき取り組みを実施していくのか、最初の取り組みは何か月で、会議体の頻度や回数はどれくらいなのか、進めていく実施内容はどうなのか…といったことが、はっきり表示されているかどうかということです。
何も小難しい話をしようとしているわけではありません。ビジネスをするにあたって「当たり前のことをしましょう」と申し上げているだけです。
もし、あなたが、家を買うと決めそこで数千万円かかるとしたら、月々のローン支払料金だけ提示され、「とにかくいい物件ですから住んでみてください」的な売り方をされたら、どう思いますか?ということです。
建物の構造や使い勝手、周囲にスーパーや学校あるか、通勤時間といった周辺環境を調べた上で価格に見合っているかどうか?を考えてから購入するかどうかを決めるわけです。
今後成長企業として頭角を現すためには、常識的に考え、プロジェクトとしてまともなやり方になっているか、という話です。日本の人時生産性が、欧米諸国に比べ低いのは、こうした手順を飛ばしてしまう企業が多く、人時生産性の改善が進まないのです。日本の小売業界の人時生産性へ取り組みが、先進国の同業と比較して遅れているのはこうした理由からです。
業界の遅れを取り戻し、前人未到の生産性を実現するためには、企業規模に関係なく、基本的な実施内容や、投資金額、投資回収期間はどれくらい…といったことが手順どおりに行なわれるかどうかで、すべてが決まると言えるからです。
さあ、貴社ではまだ、目先の数値維持のために苦悩を続けることに時間をかけ続けますか?それとも 将来の成長発展のために創造的なことに時間をかけ大きく飛躍しますか? つぎに、その実績を手にするのは貴方の番です。