今週の儲かる繁盛店の視点 第462話:「減収減益より怖い、増収減益を改善していく仕組みをもっていない企業に行きつく先は?」
先週は、ランチ時、半袖姿の方を見かけるくらい暖かい日が続きました。今年は桜の開花予想が例年になく早く、このコラムをお読みいただく頃には、桜も開花しているかもしれません。
待望のマスク規制が緩和になり、脱マスク消費の化粧品・エステ・ホワイトニング・タブレット菓子といったことが売れる!とTVで話題になってますが、反対にマスクの売り上げは下がり、ドラッグストアの稼ぎ頭にもなった抗体検査キットは、通販で大幅値下げになっています。
「何かが売れれば、何かが売れなくなる」流行に翻弄された売上至上主義は本当に危ういことをコロナ禍で知ることが出来たといえます。
また、売上だけに依存して利益が減ると、「価格転嫁」出来なくて…という言い訳がでてくるもので、値上げで売上が上がったのか?自力で上がったものなのかどうかも区別がつかなくなります。
言わずもがな、メーカー値上げを、そのまま上乗せして商売が成り立つほど、ビジネスは甘くなく、その先には増収減益⇒減収減益の構図が浮んできます。
減収減益と聞くと「これは、まずい」となって、真剣に対策をという動きになるわけですが、「増収減益」と聞くと、とりあえず「売れてる」ので、まだ大丈夫といった妙な安堵感が蔓延したりします。
販促部門は、プロモーションのおかげで売上が伸びたと主張するでしょうし、人事部は、定時採用は来年以降もあるものと考えます。店舗は人が抜けたら、同じ数だけ欠員補充…といった、売れるのなら経費が膨らむのはやむなし。といった空気になるのは火を見るより明らかです。
先日も「売上がとれれば大丈夫と思ったのですが、利益が取れなくて…」とセミナーに参加されたある企業の社長さんからのご相談がありました。
少し前であれば、スーパーマーケットで年商15億売る店を出せば、いけるといわれていました。ところが今は、20億の店もどうなるかわからない。というのが正直なとこだということです。
と申しますのは、15億で売上対比3%の利益をだしてきた平均的な店でも、水光熱費と人件費の上昇で、すでに利益1%未満の店が多く、ドル箱店だけでは全体を支えられないくらい厳しい状況になってきています。
なぜ、厳しい状況になったのか?それはコスト上昇が原因なのですが、頑張って調べたところで人件費がいくら上がったのか?というのがやっとというのが実情です。
問題を特定することが出来ても、その対処法が分からなければ人件費は増え続けます。また非効率業務が放置されると現場は疲弊し、離職、採用困難という問題に発展しそうになってからでは手遅れになりかねません。
これまで、こうしたことに悩まれる企業をサポートしてきましたが、減益を繰り返す企業には、ある共通点があります。
それは、売り上げ拡大や、業務効率の改善、ネット販促の強化といった、本当に実現できるのだろうか?というような大目標を掲げているということです。
――――実際に具体的にどのように進めていかれるのでしょうか?とお聞きすると、
「え、それは…」と口こもられます。
ようは、話題になってるITやネットのようなことやって売上を伸ばそうとしているものの、全てがぼんやりとした目標になっていて、それをどう進めていくのかということが決まっていないということです。
一方で、着実に成果を上げていく企業というのは、目の前の問題をクリアしていくために目標が細かく設定されています。現実的にどのようなステップで進めていくのか?
こうしたステップの設計を決め実行していくのが、業務改革チームの役割になります。
これを進める際に、注意しなければならないことがあります。それは、一つひとつのステップの高さを低くすることです。
簡単な話、プロジェクトメンバーが無理なく上がってこれるステップを用意するということです。
実際に、店舗の業務改革を進めていく上で、業務が煩雑あったり、量が多かったり、といった現場のヒアリングは欠かすことは出来ません。
その時間が積もり積もって人件費が膨れていることがわかれば、どこにメスをいれればいいのかわかり、その分回復も早くなります。
ところが、どんな小さなことも、会社の中のルールを変えるというのは容易なことではないということです。まして、そういったことに限って、創業時より行われていることだったり、社長の一言で決まったことだったり、といった聖域業務が多いもので、ここで暗礁に乗り上げます。
こうしたときどうするかといえば、これを、「意見を聞く」「その意見をまとめる」「その意見をもって主管部もとの交渉」といった、3段階に区分けします。
そして、毎月1段ずつ上がれるようにすることが出来れば、3か月後には、現場の問題点が会議の遡上に上がり、役員会承認が下りて、4か月後には、業務量が減って人時数も変わってくることが見えてきます。
このように、4カ月で人時削減をする準備が出来れば、残り8カ月の販管比率を引き下げることが出来、来期はフル稼働で、現状より低い経費で店舗運営ができるようになる。ということです。
大事なことは、そこに描かれている一つひとつの階段は、極めて低く設計していく。ということです。
例えば、非効率業務の主管部との交渉は、「要望を紙と口頭で伝えるだけ」で、ムリに押し通そうとしたり、期限を切ったりしない。
このステップでは、非効率な業務の収集とりまとめのみに集中する。逆に主管部門からいますぐ、「改善してみたい」といわれても、決して一段飛ばしで、ステップを進めようとはしないということです。
そうすることによって4か月先に、着実なローコストオペレーション体制が出来上がっていくからです。
断っておきますが、大きな目標を掲げることがダメということではありません。
減益が2期3期連続している企業というのは、話題や流行にのった目を引くような目標を掲げたものの、実務を遂行する上での目標が曖昧なため、自らの首を絞め悪化を招いているということです。
これに気づかず進めれば、再来年には間違いなくどこかの企業の傘下に身売りか、自社の名前はもうなくなっているかもしれない状況に、なっていてもしかたないということです。
目標設定はその入り口部分に過ぎませんが、その仕組みを構築し、これを生かすも殺すも、今の経営者の行動ひとつにかかってくるということです。
さあ、次に、実現可能なステップを設計し、減益から連続増益の道を切り開くのはあなたの番です。