今週の儲かる繁盛店の視点 第472話:「ワンマン経営でやってきたことを変えていくのに欠かせないこととは?」
先週は、真夏日や蒸し暑い日が続きました。行く先々で、人が混み合っている中を通ると、もわっと暑さを感じます。
梅雨から夏にかけ暑くなるとどうしても、集中力や思考力が下がってくることから、気候のいい今のうちに、難しい問題は決着をつけておきたいものです。
そうはいっても、様々な問題が複雑に絡んだものや、過去、経営者が決めてきたことを変えていくというのは容易なことではありません。
前例のない原材料費高騰と人件費の上昇が続く中、過去のやり方を今すぐにでも変えていかないと、即減益に直結しまいます。
先日も、
「先生、今まで私が全部決めてやってきました、しかし、ここにきて、その問題点に気づきました」
と少し前のセミナーに参加された企業の社長さんからのご相談です。
お話をお聞きすると、既存業務であれば社内調整してまとめる人間がたくさんいるが、人時売上といった新たな取り組みとなると、自ら意見を言おうとしなくなる。とのこと。
――――他には、どういったプロジェクトがあるのですか?とお聞きすると
「生産性改善、物流効率、商品開発と・・・」といくつものことが同時に走らせておられるとのこと。
業務改革を進めていく上で、いろいろとプロジェクトを立ち上げることは大切です、ここで大事なのは、全てが一貫性をもって行われているかどうか?ということです。
というのは、何か新しいことを始める際、バラバラに動くと、どうしても聞こえの良い「売上」に目が行ってしまうものだからです。
「売上を上げることの何が悪いのか?」という声が聞こえてきそうですが
売上を上げるためのマニュアルを作って生産性を改善する
売上を上げるための物流効率改善
売上を上げるための販促強化 等々…
どれも一見、不自然なことはないように聞こえますが、人時売上改善を進める上で、売上の話だけであれば、今まで営業活動と何ら変わらない。ということです。
そんなことない、という声が聞こえてきそうですが。
―――――では、直近の人時売上はどのくらい上がってますか?とお聞きすると、
「えっ?」と言葉に詰まります。
一年近くやっているのに、人時売上結果が変わってこないプロジェクトは、何もしていないのと同じです。とはっきり申し上げています。
人時売上を上げてくということは、机上でつくったデータを目標にしたり、机上で考えた業務をマニュアル作ることではありません。
現場の問題を拾い集め、問題提起をして問題点を特定し解決していくことです。そして、それらにかかる投資回収はどのくらいで、いつから回収可能なのか?といったことを経営判断出来るよう方向を示すことが役割だからです。
本来、社内に、そういったことを日常的にやっている先輩社員がたくさんいれば、業務改革のやり方手順の相談をしたりすることは出来ます。
ところが、社長が一手にワンマンでやってこられた企業では、社長と幹部の間に知らず知らずに距離が出来てしまい、相談しにくい状況になっていませんか?ということです。
「そんなことはない、うちはオープンだし相談されれば指導はする・・・」という声が聞こえてきます。
しかし、同じことをやるにしても、社長ご自身がやるのと、部下に教えてうやってもらうのは似ているようで大きく違うということす。
例えば、同じ山でも、上空からヘリで一望できるとこからは簡単に進む方向を指し示すことはできます。
しかし、陸路を進んでいく場合、行く手に何があるかは、そこにたどり着くまでわからないものです。
経営も同じで、俯瞰した立場から見える問題点や景色と、部門長や業務改革のリーダーといった社員から見える景色は全く違います。
言わずもがな、教える側は、指導を受ける側にたって悩みを聞くことで、はじめて問題点がわかり的確なアドバイスをすることが出来ます。
現実問題として社長が全ての現場に入って…というのは出来ませんので、問題解決が出来るリーダーを一人作ることから始めていくことになります。
それを徐々に増やしていくことで、半数の店舗でそういったことができるようになると、経験上、そこから全社の数値が変わっていくことが分かっています。
こうした問題解決に長けている企業は、動きが速いことから結果も早く出すことが出来ます。何か壁にぶつかって悩んだ時、解決方法を相談したりできる人材がたくさんいるからです。
お手伝いさせていただいているC社でも、かつては、相談先は社長か直属上司しかなかったわけですが、今では、部門の枠を超え、誰もが、相談できる人を社内で何人もっています。
人は、相談できる人が一人しかないと、どうしても、相手の機嫌を伺ったりしてしまうもの。また、怒られたり…一度嫌な思いをすると、足が遠のいてしまいいたるところで業務が遅延していきます。まさにワンマン社長が率いる企業の落とし穴といえます。
自社を題材に問題解決が進められることが出来る企業では、こういった業革リーダーの数が圧倒的に多いため、相談できる人材が数多くいます。
そのため、社員が問題を抱え込むことが、少ないことから動きが速いのです。
人時売上を上げていくための、業務改革は決して簡単ではありません。今までやってきたことを変えるというのは、社内の同調圧力との戦いの連続だからです。
その相談先が社長一人であれば、当然、業務改革プロジェクトの速度はあがりません。
さあ、貴社ではまだ、社長直轄、バラバラプロジェクトで空回りし続けますか?それとも、業革リーダー多産型の人時売上プロジェクト一本化で、大きく飛躍しますか?