今週の儲かる繁盛店の視点 第474話:「なぜ、売上と人時売上を同じような伸び率で考えてはならないのか?その見極めが出来ない企業の行く末は?」
早いもので今週はもう6月、一年の折り返しの月で、来年の企画を立てるタイミングといえます。
「やっとコロナが解禁になったばかりなのに、もう来年の話?」という声が聞こえてきそうですが、
帝国データバンクによると、主要食品メーカーの6月の値上げは、昨年同月の1.5倍で、2023年通年では1.2倍の3万品目を突破する見通しです。
こうした値上げが、小売り各社の客数減や一客単価減をカバーした形になっていてるため、半ば放っておいても売上が上がる状況が続いています。
しかし、給与水準はそこまで上がっていないことから、欧米諸国のように売上減速に赤信号が灯るは時間の問題です。
注意しなくてはならないのは、売上が上がると、人時売上も上がってくることがあるため、人時生産性が上がったかのように見えてしまう。ということです。
「先生、値上げで売上が上がると人時売上も上がってしまうんですが…」と個別相談でのある企業の社長さんからのご相談です。
お話をお聞きすると、2年前から業績評価に人時売上を取り入れているものの、メーカー値上げによって売上がアップすると、人時売上もその分上昇してしまうので、それはどのように評価すればいいのか?とのこと。
確かに、値上げはどの商品がいつからどのくらい値上がるのか?ということは、予算設定時にはわからないことから、そういったことは起こります。
これまで、悪くなることはあっても、良くなることはあまりないので、今回はそれは、それで評価すればいいことだと考えます。
しかし、実際は、賃上げをしたばかりの人件費と電気代はそれ以上に上がっていて、人時売上が少し上向いた程度で、業績賞与を大盤振る舞い出来るほど余裕があるわけでない。というのが現実です。
現実問題として深く考えず、売上と同じ1~3%程度で…と、ついつい軽い気持ちで人時売上を設定してしまうと後でそういったことになるというのはよくある話です。そういう意味から、弊社では人時売上改善に取り組む場合、年間10%以上改善予算に設定してください。と、はっきり申し上げています。
こういいますと、
皆さん 「えー!」と腰ぬかしそうになってびっくりされるんですが、
簡単な話、メーカー値上による、売上伸びが3%で人時数改善が0%だとすると、人時売上は103%となりこれは、ABC評価でいえば「Bマイナス」という評価になります。
「え?103%なのになぜ?」という声が聞こえてきそうですが、
少し考えていただければわかると思いますが、あらゆるものが値上げになり、生活者節約意識が高まりから、買い上げ点数や客数は大きく減っています。
品出しやレジにかかる人時も減っているわけで、その分勤務時間や残業を減らす工夫は店長レベルでも十分できるはずだからです。
コントロールすることのできない「売上」ばかりに注目するのではなく、店長として改善することができる「人時」について、何か行動しましたか?ということを問うているからです。
目の前の人時生産性を上げるチャンスを見過ごし、いつも通りの仕事のやり方をしている店長さんに高い評価を付ける心配は不要ということです。
ただし、ことは、簡単なことではないことも申し上げておきます。
本来は、経営としてそういった前提のもと、予算設定をしておかなくてはならないということです。
人時売上高というのは努力目標ではなく予算です。期中に変更することはでませんし、期中で変更する?となれば、現場の士気に大きく影響してきます。
また、年度予算にする際には、人時売上改善を達成していく方法が必ず提示されていることが前提条件になります。
ゴールへの攻略法がないRPGゲームが売れることがないように、ゴールへの手順が提示されなければ、真剣に人時売上に取り組もうとする社員の士気は上がりません。
人時売上が大事…といって、それを業績目標にセットするのは簡単でも、それを攻略する仕組みとセットで提示されなければ、人時売上に対するマイナス面ばかりが誇張され何も進まないのも、これまた現実だからです。
人口が減る中、売上の伸びは1%~3%がやっとでも、長年やり続けてきた形骸化された業務を見直すことが出来れば、10%~20%、場合によっては30%~40%といった夢のような2桁改善も十分可能な範疇だからです。
実際に、お手伝いさせていただいてる企業では、年率人時売上2桁以上改善している店を増やしており、半数の店でそれが出来るようになると、気づけば地域で人時売上ナンバーワン企業になっていた。というのはよくあることです。
さあ、貴社では、まだ、売上と同じレベルの1~3%の目標を掲げ予算未達を繰り返しますか?それとも、予算と攻略法セットで提示し、社員の士気を向上させ大幅予算達成を実現させますか?