今週の儲かる繁盛店の視点 第488話:「長きに渡り続けてきた商売がダメになっていく理由」
先週は、雨のお陰で地面が冷え少し涼しくなりましたが、依然厳しい残暑が続いています。
大手中古車販売会社と損保大手のもたれあい問題や、某大手アイドル事務所の性加害問題とメディアの忖度問題で、ファミリー企業を取り巻く問題が明るみになりました。経営者の中には対岸の火事とは思えないと考えた人も多かったのではないでしょうか?
都合の良くないことは表に出さなくても…といったことも、今は、SNSによって瞬く間に世界中に拡散し、過去のことも隠すことが出来ないある意味良い時代になった。という象徴的な出来事といえるでしょう。
これまでセミナー等でお会いした企業でも、表向きは頑張っていることをアピールされても、実際にお話をお聴きしてみると、え?まだ、そんなことをやっていて大丈夫なのだろうか?ことを多々耳にすることがあります。
自分だけは大丈夫?と思いこみ健康診断の結果を軽視するようなもので、聞こえのいいことにしか目を向けていないと気づいたときは手遅れになる。ということです。
先日も…
「先生、品切れ点検ってどうやればいいのでしょうか?」と少し前にセミナーに参加された企業の社長さんからのご相談です。
――――品切れ点検とは、決められた売場に商品がない状態をチェックしていく作業のことです。
これを修正していくことによって、お客様がいつでも欲しいものを買うことが出来るように、店舗運営力を引き上げていくことです。
「なんだ、そんなこと」という声が聞こえてきそうですが…
その先には、お客様からの問い合わせを減らし、業務量の削減も目的になることから人時売上面でも重要な取り組みの一つとなります。
そうは言っても、日持ちするグロサリーなどの品切れ点検は出来ても、刺身の盛り合わせや惣菜はそうはいきません。朝から夜まで売場に並べ、売れ残ってしまえば全てロスに直結してしまうからです。
そのため、時間帯別に最低必要な商品量で売り場を作りロスを抑える「品揃え基準」といったものがあります。
早い話、お客さんが少ない時間帯は無理に商品を作るのをやめて、売れそうなものだけに絞るというものです。
しかし、お客さんからしてみると、営業時間内に来ているのに、「欲しい時に必要な商品を買うことが出来ない店って何?」と、なるわけで当然、売上は落ちていきます。
人口が増え、何をやっても売れていた時代であればまだしも、今は、少子高齢化、労働人口が減っていることから、「売り逃し」を減らし「少ない人員」で売上を少しでも獲得していかなくてはならないからです。
こうした「自社基準」を見直していかなくては、ならないことは分かっていても、いざ、過去からのやり方を変えるとなると難しいものです。
前出の企業も、そういったことがあり、なかでも「品切れ」についてどこから手を付ければいいか悩まれていたとのこと。
例えば、毎日商品を売りきることを前提とした生鮮売場は、朝は、商品が一個も並んでいないゼロ状態から売場が作られていきます。
品ぞろえ基準の売場の完成形は売場チーフしか分かっていないため、完了したかどうかは店長もチェックできないという状況になっていました。
そのため、お客様からは、商品はいつ売り場に並ぶのか?わからず、客数は毎年減り続けているのは明らかでした。
断っておきますが、品揃え基準はダメだというわけではありません。
机上で作った、品揃え基準の通りにやることだけしか考えていない「顧客不在」の店舗運営になっていないか?と問うていただきたいのです。
各社お考えがあるのでそれをどうこう言うつもりはありません。
大事なことは、
「わが社の店舗は、品ぞろえ基準がありますからちゃんとしたお店です」とお客様にアピールする企業への評価と、
「品切れ点検は実施しておりますが、お気づきの点がありましたら売場係員までお尋ねください」とアピールするのでは、どちらがお客様から高い支持を受けることが出来るかは火を見るよりも明らかということです。
実際こういったことに気づき、全売り場で品切れ点検を完全実施したことで、数か月後に午前中の売上が大きく伸び、お客様の問い合わせが減ることで人時数が大きく改善された企業があります。
今までガランとしていた朝一の生鮮売場は隙間なく、商品が陳列されるようになったのは言うまでもありません。
さあ、貴社では、まだ、顧客不在の社内基準を改めず、収益力と信頼を落とし続けますか?それとも、誰が見ても、分かりやすい店舗運営の仕組みをつくることで大きく飛躍しますか?