今週の儲かる繁盛店の視点 第499話:「人件費をうまく使いこなす企業と使いこなせない企業の違い」
「先生 他の企業では人は集められているのでしょうか?」数年前にプロジェクトをスタートさせたとある企業の社長さんからのご相談です。
お話をお聴きすると 各店で欠員が発生していて、その穴埋めをしようとしてもなかなか集まらないとのこと。
――――募集をかけても全く反応がないのでしょうか?
いや、応募はあるんですが、条件が合わなくて採用できないのです
――――例えば、どういうことがありますか?
募集している時間帯にピタリとはまる人がなかなかいないんです。
――――具体的に教えていただけますか?
ウチはこれまで、週30時間以上勤務の人ばかりでやってきた経緯があります。
少数先鋭といえば聞こえはいいんですが、皆さん50歳代後半で、もうそろそろ定年を迎える人ばかりです。
できれば、週30時間の若い人を採用してその人たちに仕事を教えながら引き継いでいってもらいたいのです。
ところが、週30時間って人はまず応募がありません、たまたま来たとしても、何らかの理由で転職を繰り返している人だったりして、
直ぐに辞めてしまうので、今のベテランパートさんの代わりに…となると難しいのが現状です。
少し前までは、長時間働いて稼ぎたいという人も結構いたんですが、今は契約通りで、出勤日や時間の変更が出来ない人が殆どです。
週最低でも20時間は働いてもらいたいんですが、短い時間で3日間だけとか、曜日によって働ける時間帯が違う人とか、という人はいるのですが、それだと、中々仕事が覚えられませんし、管理するのも難しいのでお断りしてるんです。
そういった状況ため、荷物が遅延したり、急にレジが混んだりすると、品出しが間に合わないこともあって、売り逃しも多いと思うんです。
結局、社員やベテランメンバーが残業してやることになり、人件費が下がっていかないのです。
――――なるほど、そういった短い時間でも、店舗の労働力として活用できるようにするには何があればできますか?
うーん、例えば、中元歳暮といった期間限定や、品出しとかで誰でもできるようなことは、できるとおもいます。
店として、本当に必要な時間帯に作業を明らかにして、来てもらう人を探すといったふうなことができればいいんですが、そんなことは現実的には難しいと思います。
――――現状の人手不足の部門で、誰がどうやってるっていうのを書き出してみるのはいかがですか?
「ただでさえ人がいないので、そんなの、調べることできないし、だれがやればいいのでしょうか?」
――――困っている店舗に限ってで良いので、例えば一週間だけ、調査メンバーが張り付いて事実を調べ、現状の仕事の流れを見えるようにするのはある程度できるとは思うんですが、そういったことは出来そうでしょうか?
「店舗を限定すれば出来ると思います…」
これは、プロジェクトがスタートして、数カ月程たったころのミーティングでの会話だったと記憶してますが、その場で合意を得ることが出来たので、プロジェクト事務局メンバーで調査をやってみることになりました。
その一カ月後、該当売場の調査結果が、プロジェクト事務局より報告がありました。
最初は忙しい売場に入って、調査することに抵抗を感じていた事務局メンバーの口から、開口一番「やってみて、すごく良かった」という言葉が出てきたのです。
実際、最初に調査に入ったとき、「作業の邪魔」といった感じで店の人から煙たがられていたそうです。しかし、調査を毎日続けその終り頃になると、「何を調べているのですか?」とか「調査結果をフィードバックして欲しい」といった売場の人から声をかけられるようになったとのこと。
さらに、調査売場以外の人からも、「ウチの売り場はいつやってくるの?」とか、「こういうこと調べるのは本当に大切」といった声もあり、こういった変化にプロジェクト調査メンバー自身が驚いたそうです。
たかが、店舗作業の調査ですが、実際に現場に入り込み、売上の9割を占める、店舗人件費がどのように使われているかがわかれば、どこに、問題があるのか特定することはできるだけでなく、こうした大きな変化を与えることが出来るということです。
さらに、そういったお店の人たちが、今、経営に求めているリソースを手に入れることができたということです。
その後、社長の号令の元、店の他の売場についても調べることになり、この店を実験店に設定ました。
開始1年後、売上対比14%もあった人件費率は、2割減の11%台に下がり、翌年は一桁台を目指していこうという動きに変わっていったのです。
詳しくは、セミナーでお伝えしていますが、人件費削減と聞くと、ネガティブがイメージが先行しますが、この企業のように、人件費の使われ方を知り共有したことで、
「無駄なことはやめる」「本当に必要なとこに使う」という意識が定着したことが自信となって前に進むことができたといえるでしょう。
さあ、貴社では、まだ、人件費を腫れものに触れるように今の状態を続けますか?
それとも、今すぐ、行動することで、成果を手にするチャンスを掴みますか?